ピー・エヌ | ナノ
仙道くんとオムニバス
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ー 仙道くんとOB会 ー


「「「仙道(さん)の彼女……!!」」」

「は、はじめまして、名前です……お邪魔させていただきます」


数日前。「バスケ部のOB会があるから一緒に行こうよ」と、ちょっとコンビニ行こうぐらいの軽さで誘われた私。初めは遠慮していたけれど、ニコニコ笑う彰くんにあれよあれよという間に連れてこられてしまった。


「どうも、池上です」
「俺、越野です。仙道と同い年っす!」
「ワイは相田彦一いいますっ!仙道さんのいっこ下です!」


次々に続く自己紹介に微笑みながら、よろしくお願いしますと会釈をした。


「先輩の店なんだ。ほんと美味いっすよ」
「よせよ、仙道……」


仙道くんに教えられて、すでに並んでいる料理を作ったという魚住くんを見た。ベテラン板前さんのような風格が滲み出ていて、まさか彼が年下だとは思わなかったけれど、照れた顔はなんだか可愛かった。


「ん〜〜、美味しいっ、しあわせ……」


(((……ウマそうに食べてて癒される)))


私の食べる姿を見つめていた周りの子達には気付かずに、絶妙な味を堪能しつつ尊敬の眼差しを魚住くんに送った。


「みんな名前さんのこと見すぎ」
「お前変わったな。昔から細身の美人とばかり付き合ってただろ?」
「けど仙道が名前さんを好きになったの、なんか分かるわ……触り心地良さそう」
「ホンマ仙道さん羨ましいっすわぁ!」


魚住くんがどんどん出してくれる料理に夢中で会話を聞いてなかった私は、彰くんにチョップされて涙目で頭を抱える池上くんと越野くんと相田くんを、不思議に思いながら見ていた。






ー 仙道くんと筋トレ ー


ある程度ダイエットに成功したものの、近頃はまたお腹がたるんできていた。彰くんは今のままの方が触れていて癒されるからと笑うけど、私はダメだと思った。


「決めた。毎日腹筋する」


彰くんは大学を卒業してジムのバイトを終えた。そのまま私も通うのをやめてしまったから、自力でなんとかするしかない。


「……じゃあ俺、手伝おうかな」
「いいの?ありがとう!」


痩せなくてもいいと口癖のように言ってくる彰くんだけど、私がやると決めたことはいつも応援してくれた。足押さえとくよ、と私の両膝を掴む彰くん。


「い、ち……にっ、…さ…んっ……ふっ」
「…………」


必死で腹筋をしていたら、途中で彰くんは顔を伏せてしまった。気にせずそのまま続ける私。


「なな、…んっ、はち……っ……ん」
「……名前さんなんかエロい」
「っ、ええー?!」


何かと思ったら、私の声が気になっていたらしい。

「変な気分になってきた」と熱い眼差しで見てくる彰くんに「真面目に手伝ってください」と呆れた視線を返した。






ー 仙道くんと公園デート ー


「わあ、双子の兄弟だ……かわいい」


たまには公園でゆっくりデートしようと、レジャーシートに二人並んで座っていた。近くで遊んでいた家族連れを眺めていると、放り出していた右手をぎゅう、と繋がれる。


「名前さん子供すき?」


隣からの質問に笑って頷いた。


「何人欲しいとか、あるの?」
「そうだなぁ……やっぱり二人は欲しい、かな」
「へえ……じゃ、頑張らないとだね」
「……え?」


そう言って背中からぐるりとお腹に手を回される。


「可愛いだろうな」
「彰くん?」
「俺に似てデカくなるのかな」
「……」
「女の子だったら、名前さんに似て欲しい」


耳元でクスクスと笑う彰くんは、まだ結婚もしてないのにもうその気でいるらしい。でも、私はそんな彼が心底好きだと思った。






ー 仙道くんとウエディング ー


「男紹介して」が口癖の同期が彰くんを目の前にして発狂した。今日は私と彰くんの結婚式だった。


「ねえどういうこと旦那なにあれイケメンすぎじゃない?イケメンすぎだよね?え?年下?どこで捕まえたの?」


凄まじい詰め寄り方に私は苦笑い。今日くらいは勘弁してくださいと友人をなんとか落ち着かせる。というか、全部彰くんにも聞こえてるよ。


「えっと……名前さんのお友達ですよね?」
「ええそうです!」
「好みかは分かんないすけど、俺の先輩とか友達なら紹介できますよ」
「よろしくお願いします!!」


彰くんの言葉にすかさずパチンと両手を合わせた友人。大好きな友達なんだけど、この肉食には毎度困ったものだと肩を竦めた。


「……彰くん、」
「大丈夫だよ。池上さんとか越野とか、みんなフリーだし。名前さんの友達なら信用できるし」
「そっか……ありがとう」
「越野なんか押されたら多分すぐ落ちるぜ」
「あはは」


彰くんの友人席を眺めて目をキラキラさせている彼女にも、はやく幸せが訪れますようにと心から願った。



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