夏の日和と人ごころ | ナノ
彼女は友達が少ない
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夏の暑さはとうに過ぎ去り、季節はすっかり秋になっていた。相変わらず俺はバスケの事ばかりを考えていたし、名字はといえば、転入当初と変わらずにクラスでは"物静かな女"でいた。

……俺と木暮の前以外では。


「なんか、退屈だな」
「……退屈?」


うーん、と伸びをしてから口に手を添えて欠伸をした名字。それを見た俺も思わず欠伸をしそうになったが、それはなんとか耐えた。

次の授業が終われば部活の時間だからな、今から気を引き締めなければならない。


「赤木君は放課後部活だし……木暮君も」
「そういや名字、俺たちの他に友達いないのか」
「…………」


黙る名字を見て一拍置いてからマズイこと言ったか?と考え直すが、いや俺たちはこういう話でも気兼ねなく話せる仲のはずだと自分に言い聞かせて、じっと返答を待った。


「……ねえ、赤木君って他の女の子にもそんな事言ってるの?」


ちょっと怒った雰囲気を纏う彼女は、俺を見上げてそう言った。
よく美人が怒ると怖いと聞くがあながち間違いではないらしい、と俺は呑気なことを考えながら、否定の意味をこめて頭を振る。それが賢明だよとため息をつく彼女には、とりあえず頷いて返した。そうしないとまたあの迫力満点の目で見られるだろうからな。


「……なんでなんだろうね。私、昔から友達って少ないんだ」


そう言って伏し目がちに話す名字。


「ほう……?」
「ちょっと、聞いといてその反応?」
「いや……意外だと思ったんだ」


確かに彼女は俺以外のクラスメイトには一線をひいてる感じはあったし近寄り難い雰囲気がない事もないが、それが彼女の素じゃないのは分かっていた。むしろ、わざとそうして周囲の人間を遠ざけてるような気さえしていた。
現に俺や木暮には本当に気さくに接していたし、人見知りってワケでもないだろうに。じゃあ、敢えて友達を作らないのには理由があるのか。そして、なぜ俺には気を許しているのか。

彼女が転校してきて数ヶ月が経つが、俺はずっとその小さな疑問を抱いていた。


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