夏の日和と人ごころ | ナノ
美人と変わり者
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名前の入部は先輩たちにも歓迎され、湘北バスケ部には今まで無かった華が添えられた。その事で一層士気の高まったチームを見て、安西先生もゆっくりと頷きながら笑みをこぼしていた。

他の部活の奴らは皆口を揃えて「羨ましい」と言い、以前よりも名前は注目されることが増えていった。優越感が無かったといえば嘘になるがそれよりも今は目の前の新入生たちだ、と頭を軽く振った。



「名前、これで全員か?」
「うん。入部届けを出してくれた子たちはね」
「新入部員が15人……集まった方だよな」


ずらりと並ぶ一年生たちは、それぞれが色んな面持ちをしていた。緊張していたり、あるいはやる気に満ちていたり。そんな中、特に声を出して元気そうだったのがマネージャー希望の女生徒だ。


「……可愛い子だね」
「まあ、そうだな」
「剛憲のタイプ?」


先輩たちが1年生に自己紹介として出身校やらポジションを言わせている端で、ぼそりと呟いた名前。真っ直ぐに女生徒を見つめている表情は感情が読み辛く、その真意がイマイチ分からなかった。

とりあえず素直に可愛いと認めたが、タイプかと聞かれると首をひねるものがある。「そういうのじゃねえ」と短く答えれば、「そっか」と一言返ってきただけでそれ以上何も言うことは無かった。



「果たして何人残るかな……?」


木暮が1年を見渡して言った。どうだろう、と俺も考えてみるがこればっかりは予想も出来ない。根性のある奴らである事を願うばかりだ。


「5人残りゃあいい方じゃないすか」


突然聞こえた声の主は、木暮を挟んだ向こうでしゃがんでいた男。なんで1年がここにいるんだ。自己紹介はどうした。


「何だお前は?」
「いずれ神奈川No. 1ガードと呼ばせてみせる。今はただのグッドプレイヤーすけどね」


は?と目を点にした木暮と俺は同じ事を思っていたに違いない。なんか変な奴が入部してきた、と。

その小さな男は生意気そうな顔で俺らを見上げていたが、俺の横にいた名前に目を止めた途端に素早く立ち上がり、彼女の両手を掴んだ。


「宮城リョータっす。あなたのお名前は!?」
「えっと……名字」
「名字さん!俺が湘北を神奈川No. 1にしてみせますから!!」
「……は?」


前のめりの宮城に対して引き気味の名前。その近すぎる距離に俺が思わず咳払いをすると同じタイミングで先ほどの女生徒を視界に捉えた宮城が、今度はそっちの方へと駆けていった。その身のこなしには呆れよりも感心が上回る。


「……変な子だけど」
「……なかなかのスピードだ」
「……逸材かもしれんな」


俺たち三人は揃って小さく頷きあった。


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