花形家の酔っぱらい
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「お姉さまのお帰りですよ〜〜」
階下から聞こえる姉の声に、参考書を読んでいた俺は「やれやれまたか」と腰を上げた。会社の付き合いとやらで飲んだ帰りはいつもこうだ。
「まったく・・・世話のかかる姉さまだな」
「透くぅんただいま〜!大好き〜〜」
「はいはい。俺もだよ」
普段はしっかりした姉が酒が入ると途端にワガママな子供のように甘えてくるのは、いつも俺を戸惑わせた。このギャップというやつが世間の男には堪らないんだぜ、とは同じ部活の親友の言葉だが、身内としては勘弁してくれというのが本音だ。
「酔っ払いは早く寝てくれ」
「え〜〜、一緒に寝てくれないとやだ!」
駄々をこねる彼女を半ば無理やり担ぎ上げ(横抱きだと暴れられて落とすから)、すばやくベッドまで運んでやる。そっと下ろす頃には小さく寝息が聞こえ、その安心しきった顔を見ていると、弟ながらなんとも言えない気持ちになった。
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頼むからその顔を他所で見せてくれるなよ