魚住家の食卓
( 22/35 )
「純、また腕あげたんじゃない?このだし巻き美味しい」
「・・・そうか」
「もうどこへでもお嫁に出せるわね」
年の離れた俺の姉貴は見た目こそ器量よく、寄ってくる男は数知れずだが、その可憐な外見に反して性格は自由奔放。口を開けば大抵の人間は驚く。そして皆が思う、黙っていれば完璧な女性なのにと。
「・・・弟を嫁に出す前に、まずは自分が嫁に行くことを考えなさいな」
俺たちと同じく食卓を囲っていた母親の一言がピシャリと空気を裂いた。
「あなたもいい年なんだから、お料理くらい勉強なさい」
「うんうん。また今度ね」
妙齢の彼女は周囲の期待に反して男の影を見せず、興味すらも無さげな様子。それを心配する両親、特に母親はトクベツ姉貴に厳しかった。しかしその性格ゆえ、何を言われてものらりくらりとかわしてしまう辺りは後輩の仙道と似ているかもしれないな、とひとり考えながら自分で作った味噌汁を啜る。
「それじゃ御馳走様。仕事行ってきまーす」
「・・・気をつけてな、姉貴」
米粒ひとつ残さず綺麗に平らげられた器たちを見ると、自然と口元が緩んだ。
*
姉の良さを分からない男になんて当分嫁にはやりたくない