二番煎じ | ナノ
「よく一緒にいるじゃん」


その日のお昼休み、突然彼氏に呼び出されたかと思えば、荒々しく腕を掴まれて人気のないどこかの教室に連れてこられていた。


「名前・・・お前、仙道に気があんの?」


開口一番、酷く不機嫌そうな顔をして私を見下ろしながら、てんで的外れな事を宣う彼氏。


「気があるってなに?どうして急にそんなこと・・・」
「よく一緒にいるじゃん」
「普通の友達だよ。好きとかじゃない」


確かに、最近は仙道くんと関わることが多かったと思う。彼が少なからず私に好意的なのも分かってる。でも、私はやましい事なんて一度だってしていない。それに、ちゃんと彼氏のことを好きだと思っていたいのに。


「・・・離してっ」


怒りに任せて強く掴まれたままの腕を、小さく振り払う。いつもより少し低い声が出た。


「お前が休みの日にあいつといたのを見たって聞いた」
「偶然会ったの!」
「最近、俺よりあいつと話してるだろ!昨日も廊下で一緒にいた・・・っ!」
「ノート運ぶのを手伝ってくれただけ!どうして疑うの!?」
「お前がこそこそ他の男と会うからじゃねえの?」

語気を強める私と同じように、彼も怒りを表していく。
だんだんと血が上りだした頭の中では今まで彼に言われて我慢していたことや、他の女の子と親しげにしていた光景とかが走馬灯のように浮かんでは消えていき、最後には何故かこの言い争いの原因になった仙道くんの顔が浮かんだ。

名前ちゃん、といつも毒気のない笑顔で接してくれる仙道くんが今の私たちの姿を見たらどうするのかな。しょうがないと言って仲裁でもしてくれるんだろうか。


「チッ・・・あーもう、めんどくせー」


しばらく無言だった空間で、彼の舌打ちはよく響いた。口から出たその言葉も。


「もう好きでも何でもねえよ」
「は・・・?」
「お前みたいな可愛くない女、願い下げだわ」


(可愛く、ない・・・めんどくさい・・・?)


途端に、さーっと頭の中が冴えてくる。というより、急に体温が下がった気がした。願い下げということは。つまりもう私は要らないってこと?別れる、ってこと?

他の男の子と話していたってだけで?


「俺、もっと一途で尽くすやつが好きだから。お前とは違って」


ピシャリと扉の閉じられた教室に、ひとり佇む。


「・・・振られ、ちゃった」


私は自分のことをあまり物事に動じないタイプだと思っていた。だから、とめどなく溢れてくる涙に、自分自身が一番驚いていた。


(・・・私、悲しいの?)


彼の勘違いで一方的に振られたことに怒りを感じることは無くて。ただただ頬を流れるこの熱い液体が、どうすれば止まるのかと言うことだけを考えていた。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴っても、私はそこから動けないままでいた。


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