二番煎じ | ナノ
「はやく戻らなきゃ・・・」


今日は朝からとことんツイてなかった。家を出てすぐの所で水溜りを踏んでしまったのを皮切りに、教科書を忘れるやら分からない問題で先生に当てられるやら。極め付けはお弁当を持ってくるのを忘れたことだ。玄関までは手に持っていた筈なのに。

自分の間抜けさにつくづく呆れながら、私はパンを買いに購買まで来ていた。



「メロンパン残ってて良かったー」


その帰り道、買ったばかりのパンと飲み物を抱えながら歩いていると、通りかかった廊下の窓の外から一際明るくはしゃぐ声が聞こえてきた。なんとなく目をやれば、校舎に囲われた中庭で数人の男女が楽しそうにお昼ご飯を食べている。
天気も良いし、ああやって外でお昼を食べるのもいいかもしれないなあ、なんて考えていたら、そのうちの一人に目が止まった。


「はい、あーん」
「くれんの?」


そこには私の彼氏と、その彼の口元にオカズを運ぶ知らない女の子の姿があった。


「おいおい・・・お前、彼女いんのにそんなイチャついてて良いわけ?」
「別にいいんだよ。あいつ、何にも言わねーから」
「そうだよ堅いこと言わずにさぁ!はい、もうひとくち〜!」
「あーズルい!私のも食べて?」
「次は俺にくれよー」


女の子は彼氏のことを好きなのか、分かりやすいほどに密着していて。それに彼も、満更でもないような顔をしていた。
周りで口笛を吹いたりして囃し立てる人たちも、口で言うほど咎めている訳でもなく。

それほど近くもない距離なのにどうして会話の中身が全部分かってしまうんだろうと不思議に思う。そして、彼の言う通り、私は特に何も言うことは無かった。

彼がどんな友達とご飯を食べてたって、他の女の子と親しげにしてたって、陰で私のことをどんな風に言ってたって・・・私と彼が付き合っていることに変わりはない。少なくとも、私が好きでいればいいんだ。大丈夫。ちゃんと、出来てる。


「はやく戻らなきゃ・・・」


教室では友人が先にお弁当を食べている頃だろう。
早足でその場から離れると、何事も無かったように教室に向かった。


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