二番煎じ | ナノ
「ごめん、そんなに怒らないで」


「おい名前、昨日待っとけって言ったのに」
「あれ・・・そうだった?」
「忘れるとかありえねぇだろ」
「ごめん、そんなに怒らないで」


朝登校して自分の席に着くと、すかさず私に近付いてきた彼。
付き合って数ヶ月のこの彼氏は、サッカー部でレギュラーのそれなりに人気のあるイケメン、らしかった。らしいっていうのは、私はあまりイケメンだとか人気者だとかそういう人に興味がなく、付き合ったあとで周りの女の子から羨ましがられて初めて知ったからだった。


「今日は部活終わるの待ってるよ」
「あー、今日はいい。部活の奴らと寄り道するし」
「・・・そう」
「お前もうちょっと尽くすとか可愛いことできないのかよ」
「そうだね。気をつけるね」


可愛くないとか、愛想がないとか、そういうのはよく言われてた。この男は特に、何か言わないと気が済まないのか私には割と言いたい放題で。クラスの子いわく、そういう俺様なところが良かったりするんだとか。
もともとあまり怒ったりしない私だけど、その言い草にまったく腹が立たないワケじゃない。じゃあ言わせてもらうけど、いつも部活が終わるのを待ってろと言っておいてそれを忘れてるのはアンタでしょうなんて。心では思ってもやっぱり口にすることはなかった。

予鈴のチャイムで教室を出て行った彼氏の後ろ姿は先日見た隣のクラスの彼よりも暗く狭く見えて、そんな背中からすぐに視線を逸らした。
初めて出来た彼氏に最初は浮かれて、少しすると嫌なところがたくさん見えてきて、そうして今は、どこか疎ましく思っている私がいた。

それでも、彼のことが好きなんだ、と何度も何度も頭の中で繰り返した。


PREVNEXT



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -