二番煎じ | ナノ
「はいはいご馳走様!」


「仙道くんと・・・付き合うことに、なった」
「え、本当!?」
「うん・・・昨日から」
「おめでとうっ!もちろん詳しく聞かせてくれるよね・・・!?」


いつも心配してくれていた親友には、朝一番でこの事を伝えた。まるで自分のことのように喜んでくれる姿にうっかり泣いてしまいそうになったのは私だけの秘密。

あの女の子に呼び出された事とか元彼にやり直そうと言われていた事を話すと鬼の形相をしていた彼女だけれど、仙道くんが助けてくれたと言うと一転してニコニコ顔を浮かべた。


「良かったよね。仙道もやっと報われてさ」
「・・・やっと?」
「あんなに一途なんだもん。私はずっと仙道を応援してたよ?なのに名前ときたら変に律儀というか・・・あの馬鹿男以外は考えようとしないし」
「む・・・だって、その時は付き合ってたから・・・」


視線をそらして唇を尖らせる。私だって仙道くんが好いてくれていたことには薄々気が付いていたけれど。あの時はどうしようも無かったし。


「そこが名前ちゃんの良いとこだけどな。彼氏以外には目もくれないとこ」
「あっ・・・」
「はいはいご馳走様!」


とつぜん背後から伸びてきた手に抱きすくめられると、もう一方の手は頭の上に置かれた。さらにその上には、顎が乗っかっている。

ひゃあ、と小さく女子の悲鳴が聞こえた。ただでさえ彼は人気があって注目されやすいというのに、ここが廊下ということもあってかなりの視線を集めていた。


「ちょっ、と・・・仙道くん!」

「見せつけちゃって、名前の敵増やしてどうするのよ」
「手は出させないよ」
「絶対だからね!?」


私を他所に、親友と仙道くんだけで話が進んでいく。ざわざわと騒がしくなった周りの人たちと、大事な目の前の二人を交互に見て、小さなため息を一つ。

私のことを案じてくれるのは嬉しいけれど、誰かこの体勢をどうにかしてくれないかと願わずにはいられなかった。


(・・・仙道くんは、思っていたより大胆だ)







「やっとくっ付いたんだな」


次の委員会で顔を合わせて早々、愉快そうに笑いながら池上先輩は私の頭を撫でた。


「先輩の学年でも知られちゃってるんですね」
「そりゃあ・・・なあ?仙道だし」
「・・・仕方ないですよね」


諦めたように肩をすくめた私を、先輩は可哀想なものを見る目で見下ろしていた。


「あー、とにかく!お前が元気になって良かった。俺としては・・・それが一番嬉しい」
「池上先輩・・・」
「ああ見えてやる時はやる男だからな、仙道は。安心していいと思うぞ?」
「・・・はい。でも、また何かあったら先輩には頼っちゃうかも・・・です」


先輩の優しさを知っている私は、いつまで経ってもこの人に甘えてしまう自分に心の中で苦笑した。そうさせる年上の包容力が、先輩にはあった。もちろん、それは色恋の類いではなく。


「当たり前だろ。もし仙道がお前を困らせたら・・・その時は、俺が殴ってやるさ」
「先輩頼もしい・・・!」


きっと今の光景を見たら仙道くんが妬いてしまうなと思いながら、それでも、委員会の間ずっと池上先輩と楽しく話をした。


(・・・私の知らない仙道くんをたくさん教えて貰った)



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