二番煎じ | ナノ
「すぐに分かるから」


「そういえば、さ」
「うん?」


放課後の帰り道を、友人と並んで歩いていた。おもむろに口を開いたもののいつもはっきりと話す彼女がその先を言い辛そうにしていて、珍しいと思った。少し黙った後、私に目を合わさず下を向いたまま続ける。


「あいつ、よく一緒にいたあの子と・・・付き合ってるんだね」


あいつ、つまり私の元彼と別れたことは、この親友にだけはすぐに伝えていた。噂なんかで知って欲しくなかったし、彼女なら欲しい言葉を言ってくれる気がしたから。
期待どおりに「あんな奴のことなんか今すぐ忘れな」と一刀両断してくれたお陰で、随分と気持ちが楽になった。私の愛想は悪いままだし、クラスメイトにも腫れものに触るように接されているけれど。実はだんだんと心も落ち着いて、今ではどうしてあの元彼が好きだったのか、分からなくなっていた。


「そうらしいね。私も、一緒にいるの見たよ」
「・・・もうなんとも思わない?」


少し遠慮がちに聞いてきた親友に、迷わず大きく頷いてみせた。だって本当のことだから。
私のその反応にホッとした様子の彼女は次の瞬間には微笑んでくれていて、なんだかこっちまで嬉しく思った。



「それで、名前。仙道とはどうなったの?」
「え・・・どうもない、けど」
「別れてから何も無し?あんなに押せ押せだったのに」
「その事なんだけど、実はさ・・・」


私は気遣ってくれた彼を突き放したこと、八つ当たりしてしまったことを包み隠さず彼女に話した。きっと呆れられるだろうと思っていたけど、彼女の反応はそうでは無くて。


「つまり仙道はさ、名前を待ってるんだろうね」
「・・・」


はたしてそうなのだろうか。
あんな態度をとっておいてまだ自分のことを好いていてくれてるだなんて、そんな都合のいい話ある訳が無い。


「すぐに分かるから」


納得のいかない表情をする私に気が付いた友人は、私の肩にポンと手を乗せてそう言い放つ。
その自信はどこから来ているのかと聞きたくなった気持ちを抑えて、また一歩前に足を踏み出した。


仙道くんが元彼の新しい彼女と一緒にいるところを見たのは、その数日後のことだった。




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