二番煎じ | ナノ
「なにが?」


最近の私は、少し取っ付きにくい存在らしい。確実に以前より愛想が悪くなり、遠巻きにされているのが嫌でも分かっていた。
そうなったのはもちろんあの彼氏との別れがきっかけだと思う。高校生の付き合いなんてたかが知れてるとは思いつつも、落ち込んでしまうのはどうしようもないじゃないか。


「・・・名前ちゃん、ちょっといい?」


頬杖をついてぼうっとしていた私にクラスメートの女の子が話しかけてきた。後ろにはあまり見かけない子が二人。朝のホームルームまで時間がないというのに他所のクラスからわざわざ来て、いったい私に何の用だろう。
前の私だったらきっと、当たり障りのない笑顔で返事をした筈だ。でも今はそれすら億劫に思ってしまう。結果、かなり素っ気ない返事になってしまったものの、だからと言って取り繕う気も起きなかった。


「あのね、いま噂になってて」
「なにが?」


そういえば近頃は、親友以外の人とまともに会話することが無かったかもしれない。仙道くんとも、話していない。あの日あの公園の前で置き去りにしたまま。不思議なことに学校ですれ違うことすら無くなっていた。
以前は毎日のように挨拶をしたり、教科書や辞書を貸したり。そうやって接するのが当たり前のように思えていたのに。


「・・・くん、彼女ができたって」


考え事をしていた私の意識が、その言葉で現実に戻された。どき、と軋む鼓動を隠すように平静を装う。
本当なのかなぁ?と首を傾げたクラスメイト。不安そうな、それでいて遠慮しているような微妙な表情だ。


「さあ・・・私に聞かれても困るよ」


なるべく抑揚のない声で返したつもりだったけど、相手の子たちにはやはり不機嫌そうに見えてしまったらしい。少し慌てた様子で「変な事聞いてごめんね」と捲したてると、蜘蛛の子を散らすように私の席から離れていった。


(それを、どうして私に聞くの)


結局、何をそんなに気にしているのか。何をそんなに知りたがるのか。噂なんてくだらないもののために、一喜一憂するなんて。

たかだか高校生の私が言うのはちょっと違うのかもしれないけれど。誰が好きだの誰と付き合うだの。恋愛が絡むと人間関係はつくづく面倒だなぁ、と私は盛大にため息を吐いた。



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