※カオス



2010年12月31日
今年最後の日である今日、俺は母方の祖父母の家で毎年恒例の大晦日を有意義に過ごしていた
そう、とても有意義に
傍若無人なデーモンこと腐れ縁である男鹿はもちろんここにはいない
今年もまた落ち着いて年を越せる、そう思っていた
あいつが来るまでは、




「古市殿。男鹿殿がお呼びですぞ」

トランクス姿のでかいおっさんなんてこの季節どこにもいるまい
パカ、とその身体が二つに割れる前に方向転換をして猛ダッシュで逃げる
それはもう今年最高の速さで
しかしそのでかいおっさんこと次元転送悪魔アランドロンはそれを上回る速度で追ってくる
てか浮いてる様にも見えるんだけど悪魔コノヤロー

「うわあああああッ!」

とかなんとか言ってる間にあっさりと吸い込まれてしまった俺って一体…



「おー古市くんようやく来たか」

すぽっと吐き出された先は紛れもなく俺の部屋のフローリングだった
グッバイ平和な大晦日
てかあれなんでだろう、俺の部屋なのに見知った顔がたくさん見えるんだけど何これ幻覚?

「あ、古市君あけおめー」
「アホだろ夏目まだ年明けてねーよ」
「だめだなー神崎君は。今の時代大晦日だって元旦と一緒なんだよ。ほら、夜の11時59分にあけおめメールくれる人とかいるし」
「それはただ単に0時ぴったりだとすげー混むからだろーが!」
「おいそこのアホ共、馬鹿やってねーで手伝え」
「あ゙ぁ?んだとこの腐れリーゼント」
「うわ姫川センパイこれケン○ッキーのお年玉バーレルじゃないっすか!しかもこの量オニぱねぇ!」
「由加落ち着いて、ほらお皿運ぶの手伝って」
「他にもすげーご馳走だな。バイト入れないでいて良かったぜ」
「東条さんどんだけ食料難なんすか…」
「てかなんでチキンなんだよ」
「男鹿ちゃん、沖縄は元旦でもフライドチキン食べるんだよ」
「だからここは沖縄じゃねーだろーが夏目えええ」


えーと……何これ
何なのこの状況
え、俺の部屋なのに俺アウトオブ眼中なうじゃん
てかそれ以前になんでこの人たち人の部屋でくつろいじゃってんの!?


「あ、古市君お邪魔してます」
「あの、邦枝先輩。この状況は一体…」
「男鹿とヒルダさんが年越しパーティーを開くから来てって言われたのよ」

ちょっと待て、俺は激しく聞いてないぞ
人のベッドの上に堂々座っている男鹿の元へ近付いて耳打ちをする

「お前なに勝手にパーティーなんか開いちゃってんの!しかも人ん家でッ」
「お前が一人でまったり帰省なんかして年越そうとしたから、それはいかん、格差社会だとアランドロンのおっさんとヒルダに手伝って貰った」
「いや今回格差社会関係ないからね。どこの家もそりゃ帰省するからね」

結局のところこいつは一人でつまんなかったんだろう
だからってここまでするか普通
いやするか、デーモンだし魔王の親だもんな
こいつに常識を求めた俺が馬鹿だった

「フン、なにをそんなにがっかりする必要があるのだ。どこの世界でもフライドチキンはおめでたい時に食べるのだろう」
「別にフライドチキンにがっかりしてた訳じゃないですから。てか魔界にもあるんですね」

ヒルダさんは相変わらず俺の椅子で優雅に足を組みながらベル坊にミルクを上げている
アランドロンはなぜかしらないが『MerryX'mas』のプレートが乗ったケーキを切っている
いやこれ確実にクリスマスの余り物だよね

「いやーバイト先で余り過ぎたから助かったぜ」

お前かああああッ!!

もうなんでもありだなほんと
だって姫川先輩ピザ追加注文しちゃってるし
夏目さんポテチパーティーカットしてるし
てかもう大晦日のかけら微塵もないな
蕎麦どころか和食にもなってねーよ
てか思いっきりクリスマスじゃねーかこれ


「お、古市ガキ使始まったぞほら」
「今回はスパイかー。なんか年々クオリティ低くなってきてるよね」
「馬鹿野郎夏目コノヤロー。うちは毎年年越しはガキ使なんだぞもはや信者だぞ、ガキ使なめんじゃねー」
「やくざ一家でガキ使ガチ見とかシュールだな、画が」
「あ、もう12時過ぎてるわ」
「ガキ使ってテレビの中で唯一カウントダウンしないよな」
「くそ、あけおめメール送れん。0時ぴったりに送りたかったのにすまんなかおる」
「隣にいるのにメールわざわざ送る必要ないよ虎」
「人間界では年越しに尻を叩くのが主流なのか?」
「いやそう言うわけじゃ…」
「ああもううるせーなてめーら。とにかくグラス持ちやがれ。行くぞ」



「「「「「「あけましておめでとー」」」」」」



もう帰りたい
ここ俺ん家だけど


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