※悲恋



探していたのは一体なんだろう


「俺、男鹿の事が好きなんです。それでもいいですか?」

好き、と言われた頭が瞬時に思ったのは一番場違いな言葉だった
驚きとか疑問とかそんなんじゃなくて、今この人の目の前にいても思考はあいつの事ばっかりで

「うん、いいよ。知ってたし」

それでも俺を欲する夏目さんの思考は俺でも分からなかった
からかっているのかもしれない
一番近くにいながら肝心な部分を惨めに隠して情けなく笑っている姿が、端から見てて滑稽なのかもしれない
でもだからって仕方ないじゃないか
俺が男鹿を好きでも男鹿が俺を好きになるなんてことは、絶対にあるわけないんだから
根拠なんてないけど確信はある
だって全部俺がつくったんだから

身体を開くのに抵抗は無かった
慣れていた訳じゃない、むしろ初めてだった
たぶん心が空っぽだから、痛いとか嫌だとか感じないのかもしれない
俺ってどこまでも救い様がないやつだと自分でも思う

「夏目さんは俺のこころは欲しいとは思わないんですか」

欲しいと言われてもきっと無理だけど
こんな天の邪鬼なやつ、いっそ嫌いになっちゃえばいいんだ
そしたら夏目さんだって、

「欲しくないって言えば嘘になるけど、古市君の偽りの気持ちも俺は好きだから」

嗚呼やっぱり分からない
そんなのただ悲しいだけじゃないか

「そんなの夏目さんが幸せになれません」

それをつくっているのは自分だと言うのに、少し好かれているからって偉そうに言う俺はやっぱり最低だ
こんな俺に愛される資格なんてない
夏目さんにも、そして男鹿にも

「もし古市君が俺の立場で相手が男鹿ちゃんだったら、どうする?」

そう言われたらもう何も返せなかった
そんなの同じに決まってる
例え偽物だって分かってても傍にいさせてくれるなら、それに醜くすがるだろう
全部全部分かってるのになんでこの人はこんなにも…

「泣かないで古市君、」

そう優しく言われても泣かずにはいられなかった
都合良く髪を撫でてくれるその手に甘えてしまいそうな自分がいる
夏目さんに触れられながら思うのはいつも男鹿だと言うのに
人を好きになるのは残酷な程に幸せだ
それでもいいと思える人間の性もまた

「それにね、偽りの気持ちを本当に変える事だって出来るんだよ」

その言葉は俺に対してなのか男鹿対してなのかもわからなかった
俺はこの人を幸せにしてあげられる事ができるのかな


落としたのはこころでした



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