これの続き
4巻ネタバレ注意






東邦神姫なんてものは建前だけでそんな大それた看板を背負って行けるほど俺は強くないってことなんざとっくの昔から分かってた
けどそんな俺の後ろをついてくる物好きな輩はいるわけで俺は一種の見栄を張っているに過ぎないのかもしれない
現に今でも

『意地は通してなんぼだろーが』

見合わないデケー看板の為に強くなろうと必死になる姿は一言で言えば惨めだと思う
しかしそれも所詮は意地の一言で片付けられるから都合がいいのも事実で

滅多にない静寂に包まれた病室でふと思った
陣野と相沢は驚異的な回復力で早々に退院して行きやがった
きっとほっとけば何やらかすか分からない大将を気遣ってなのだろうと内心思う
城山は夏目と一緒にヨーグルッチ散策中だ

隣で寝てるクソフランスパン野郎に前に言った言葉を思い出す
せこいとか卑怯とか言う言葉がぴったりだと思ってたこいつはしかし根は俺と同じ喧嘩馬鹿だって事が分かったから今考えると複雑な心境だ
仕方無いとはいえ背中合わせで戦ったあの時確かに感じた熱はこいつの奥底に眠っていたものなんだと思う
最も揚げ足取りが十八番のインテリヤンキーの表層はこれからも崩さないだろうが

「あんま熱い視線送るなよはじめちゃん。ここ病院だぞ」

性懲りもない言葉を吐く姫川に思いっきり死ねと吐き捨ててやった
寝るときまでグラサンかけてんじゃねーよクソ野郎

「…見直したか?」
「あ゙ぁ?」
「貴重だぞ。天下の姫川様がそこらへんの馬鹿みたいに戦略も練らずに喧嘩するの」
「…テメーが言ってんじゃ世話ねーな」

大体その馬鹿とお前も同じことやってんじゃねーかよと言ったら好きでやったんじゃねーよと返された
やっぱりこいつ死ぬほどムカつく

「でもたまにはいいかもしんねーな。こういうのも」
「……そーかよ」

ジジィみたいにしみじみそう呟きやがるから吐き出そうとしていた暴言の数々が一気に引っ込んだ
お前なんか一生ベッドの上で暮らしてろ

「まぁ俺ら弱ぇーからこれからもこんな無茶ばっかしそうだな」
「複数形つかうな単体にしろ単体に」
「弱いだろお前。少なくとも俺よりかは」
「死んどくか?」

死ぬほどムカつくのは変わらないがどこか皮が剥けたこいつは前より少しだけすっきりして見えた
仕方ねぇからヘタレの称号は剥奪してやる事にする

見合わない看板の為に俺たちはこれからも這えずり回るだろうがそれも悪くねぇと思う自分がいた事に今更気付く
めんどくせーから全部認めて鼻で笑い飛ばす事にした



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