※ぬるいですが生々しい表現が多いのでR17でお願いします。






「お前、俺抱いてるとき誰と重ねてんの。あの取り巻きの女?それともどっかの令嬢?」


まるで独占欲が垣間見える言葉とは裏腹に、神崎は至極楽しそうに俺に股がったまま笑った。本当に興味本意だけの言葉。こいつはセックスに理由なんて求めていないのだ。どうせこの問いも、いつものように俺をからかう材料の一つに過ぎない。

そんな問いに真面目に答える事ほど馬鹿らしいものはない。言葉の代わりに今まで柔らかいベッドの上に預けたままだった腰を突き上げた。目論み通り神崎はその答えより与えられた快楽にすぐに食い付いて、掠れた喘ぎを洩らす。なんだっていいのだ、こいつは。ただ体の良い後腐れの無いセフレがいれば。




***




賑わうネオン街を抜けたところにある落ち着いた雰囲気の建物が並ぶ表通り。その一角に佇む周辺で一番高いマンションの最上階は、俺と神崎の逢瀬の場だ。それ以上もそれ以下もない。柔らかいベッドの上で吐き出すものはあっても、生まれるものなど何もない。


「お前、香水くせぇ。先に風呂入って来いよ」


我が物顔で黒革のソファにどかっと座る神崎は少し酒臭かった。目線をガラスのテーブルの上に移せば数本すでに空けられた高価なワインやシャンパン。


「うるせぇよ気にするな。それよか早くやりてぇ」


自分に纏わりつく不快な香水の匂いから逃げるように、神崎の血色悪い首筋に噛み付いた。酒の匂いが強くなる。


「お前さ、やらしてくれる女が何人もいる癖になんでわざわざ俺を抱くんだよ」


神崎は笑った。それはいつも学校で俺に向ける口角だけを上げた嫌味全開の笑みではなく、年相応の屈託のない笑顔。
自分の事を棚に上げて何を言うんだこいつは。それで俺が「あぁそうだな。お前みてーな薄汚い男喰いは金輪際抱かねぇよ」とでも言えば、男無しでは生きていけないこいつが一番困ると言うのに。
神崎は頭も悪ければ馬鹿だ。だけどその馬鹿に嫌味の一つも満足に返せないのは何故なんだろうか。


「いいだろ別に。ただ男は締まりがいいって聞いてたから興味があっただけだ。その相手がたまたまお前だった、それだけだ。理由なんてどうでもいいだろ」


最高級のシルクのシーツはいつまでたっても人肌の温もりに染まってはくれないのだ。




***




「竜也坊っちゃま。香水をお持ちしました」


恭しい態度で蓮井から手渡された女物の香水の数々。どれもこれも値は張るのに甘ったるくて吐き気を催す香りばかりだ。これを好んでつける女の心境は恐らく一生理解することはない。


「ああ。いつも悪いな」
「いえ」


物心ついた時からすでに傍にいた執事。いくら御曹司だからって一回りも年下な子供の世話を四六時中するなんて、俺からしてみれば論外なのに、蓮井はいつも従順だ。
俺が右と言ったらわざと左と言う神崎とは違う。蓮井やメイドたちはひねくれの「ひ」の字もないほど俺に対して真っ直ぐだ。それがこそばゆく、しかしどこかつまらなく感じていたのは事実だ。だからと言って、俺がわざわざ女物の香水を自分にぶちまけて、神崎を抱く理由にはならない。言うことを聞かない動物ほど愛着が湧くとは聞くが、神崎はそんな生易しいものじゃない。そもそもこの関係は排他的でしかないのだ。


「蓮井」
「はい」
「俺が好きか」
「えぇ、それはもう心の底から竜也様をお慕いしております」
「……こんな俺でもか」


優等生の様な回答の後に続けたのは、自らの傷口を抉る言葉。優しい面持ちとは裏腹にどこか人間みを感じない蓮井の表情が僅かに変わった。いつものような「蓮井」ではなく、本当の、一人の人間としての「蓮井」を俺は初めて見た。


「私は、竜也様が抱かせろと仰るのなら喜んでこの身を捧げますし、竜也様が抱けと仰るのならば精一杯奉仕させて頂きます」


蓮井の検討違いな、恐らくエリート執事としては失格だろう直接的な言い回しに、思わず笑みが溢れた。


「さすが俺の執事だ」




***




上を見上げれば、今夜もあのマンションの最上階の電気が灯っている。肌寒い風がビルの隙間を縫って、俺の身体から漂う甘ったるい匂いを夜空にぶち撒けた。


「お前、最低だな」


いつかベッドの上でそう言って笑った神崎の顔がいつまでたっても忘れられない。間違ってると気付いた時にはもう、後戻りしようとしても辿って来た道は自らが作った嘘で塗り固められて戻る事すら出来ないのだ。
俺に残された選択肢は、神崎という何も生み出さない道しかない。




11'1011


プラットニックラブなんだと言い張る。何も考えずに書きました。石は投げないで下さい。蓮井さん増えろ蓮井さん。


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