付き合っている、と言っても連続ドラマのような甘い関係ではない。更にいえば物心ついた時から一緒にいた仲であるから、俺たちの間に新たな繋がりが出来たとしても、あまり意識した事はなかった。二人でいるときは。

変わった事といえば、本来男女間での行為を、身体の一部を代替して行っている時に感じる背徳感だとか、ただ手を繋ぐという行動に生娘のように反応してしまうとか、そんな男としてはどうかと思う部分で。男鹿と付き合いだしてから俺は病気になったみたいだ。文字通り腐るほど見てきた鋭い三白眼や、何気にすぅっと通った鼻筋、俺とは違う部類のイケメンであろうその横顔を見た時に、得体の知れない高揚感に苛まれる。ほら、ぜってー病気だ。この俺が男鹿の事をかっこいいだなんて見惚れる日が来るなんて、誰が予測できるか。

二人でいるときはまだ良かった。人前で普通に生活してる中だと、恋人同士という意識が薄れるから。だけど家に帰って自分の部屋の扉を閉じた瞬間、ついさっき家の前で別れた男鹿の顔が浮かんでくる。今になって特に深い意味のなかった男鹿の行動まで鮮明に思い出して、頬が熱くなる。ベッドの上で枕抱いてゴロゴロしたくなるほどの羞恥心だ。まるで初めて恋をした少女のような俺の思考に、もう何度深いため息をついただろう。俺は心まで乙女になってしまったのだろうか。

男同士という羞恥心はとうの前に捨てたけど、やっぱり男としてのプライドというのだろうか、そんなのがいつまでたっても心の底に潜んでいる。それが新たに生まれた乙女心というものと、さしずめ戦っている最中と言うところだろうか。なんだかこんなこと冷静に分析してる自分が怖い。自信を持て古市貴之。

すんごい恥ずかしいことを言うと、『恋は一人、愛は二人』と言う具合に、俺は一人になると再び男鹿に恋してるみたいだ。あぁもう羞恥心で焼け死にそう。なんだか分からないけど、二人でいるときよりも一人でいる時の方が男鹿に焦がれてしまう。もちろん二人でいる時だってたくさん幸せを感じるけど。あぁもうこんなこと言わせるな。

でももうここまでぶっちゃけちゃったからもう腹くくってやる。笑ったりなんかしてみろ、たぶんなんか恐ろしいことが起こるかもしれないぞ。

俺は、お前のことを―――





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タイトルとモチーフは『愛の哲学(小論)』から。




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