「うわっ!ちょっと待て!たんま!」
「ふふふ。待つわけがないだろう、古市くん」
「うわー!ダメだって!無理無理無理!あーーー!!!」

俺の空しい叫び声が狭い室内でこだまする。実際にはこんなところでこだまはしないが、俺の脳内では確実にこだましている。今日こそは勝てると思ったのだが。

「…また負けた…」
「男鹿様に勝とうなんて百万年早いのだよ、古市くん」
「その気持ち悪い喋り方やめろよな…。つーかお前この格ゲーどんだけやりこんでんだよ…」
「負け牛の遠巻きはやめたまえよ」
「“負け犬の遠吠え”な、それを言うなら。それだと牛が襲って来そうで怖いわ」
「もう一回やろうぜ、古市」
「おい。俺のつっこみは無視か」

男鹿は俺を無視したまま、コントローラを操作して対戦ゲームを選択する。俺はというと、正直、いくらやってもこいつには勝てないのでこのゲームには飽きていた。違うゲームやろうぜ、と言ってもいいのだが、男鹿が楽しそうだから、まぁいいかと俺は思う。

「仕方ねぇから、ちょっとハンデやる」
「はぁ?別にいらねぇし!」
「俺がつまんねぇんだよ。ありがたーく男鹿様の厚意を受け取りなさい」
「うわぁーすっげぇ腹立つな」
「ありがとうと言いなさい」
「そのお前のキャラが腹立つわ」

TV画面がゲームの開始を告げる。男鹿が操作するマッチョの男が俺の操作する可愛い女の子を激しく攻撃してくる。それを俺は必死でガードして防御する。そんな画面を見ながら、思考が内側に入ってくる。

俺と男鹿はこんな風に戦ったりはしない。時々男鹿に投げ飛ばされたり俺が蹴飛ばしたりはするけど、真剣に暴力での喧嘩をしたことは無い。俺が弱いことは周知の事実であるし、男鹿が強いことも周知の事実である。でもそれだけが理由では無いと思う。
男鹿はよく喧嘩をする。喧嘩を売られるから買うということが多いが、それを断らないというのも事実。俺は時々、男鹿にとっての喧嘩は他人とのコミュニケーションの一種なんじゃないかと思う。なんて不器用なんだろうとは正直思う。でもそんな男鹿も、俺とはそんなもの必要としない。付き合いが長いから、と言ってしまえば、そう。でもそれだけじゃないって思いたい自分がいる。

「…あれ?」
「おっ!」
「ちょっと待て!」
「待ちません!」

頭が働いている途中でも手は止まることなく順調に動いていてくれたらしい。画面の中の可愛い女の子がむさいマッチョの男を必殺技でぶっ飛ばした。そこには、K.Oの文字。

「おっしゃ!やっと勝てた!」
「…ハンデやったからだろ」
「勝ちは勝ちだろーが」
「古市に負けるとかありえねぇんだけど」
「ざまぁみろ」
「もう一回するぞ!」
「やりませーん!」

勝ち逃げです。コントローラーを投げ出して俺はベッドにダイブする。たまには俺にもいい思いをさせてほしい。

「おい。俺のベッドだぞ」
「いいだろー別に。男鹿のものは俺のもの」
「ジャイアンか」
「お前に言われたくねぇけどな」
「俺は心優しいのび太くんだろ」
「アホなところは似てるけどな」
「誰がアホだ」
「お前だよ」
「アホっていう方がアホなんだぞ」
「うっせぇー…」

枕に顔をうずめると、嗅ぎ慣れた匂いがした。

「目使い過ぎた…。ねみぃー…」
「寝るのかよ、古市」
「んー…」
「寝んなよ。つまんねぇだろうが」

お前は俺がいないと遊ぶことも出来ないのか、と思う。しかし、そんなこと今に始まったことでは無いなとも思う。むかしから、こいつはこうだ。

「ふーるーいーちーくん」

俺の名前を呼びながら、男鹿が俺の腹や腕をつんつん押す。

「…うっせぇなぁ。お前も寝りゃぁいいじゃん」

俺は少し起き上がってベッドの壁の方による。そして、ぱふぱふと隣りを叩く。

「それもそうか」
「だろ?」

ベッドが少し揺れて深く沈んだ。何故か安心する。

目を閉じると眠気がふわふわと俺を誘う。遠くで男鹿の声が聞こえる気もする。

「…うん…」

適当に返事をする。男鹿はきっと怒るより呆れているだろう。


ずっと俺たちはこのままなんだろうな、と思う。むかしから変わらない。

俺がいて、お前がいて。

なんて居心地がいいんだろう、と。




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澪帆さん、100000打おめでとうございます。私が、くっついてるのかくっついてないのかわからないおがふるが好きなものですから、こんな感じの作品になりました。もしかしたら他の参加者様のものからは浮いてるかもしれませんが、こんなおがふるもアリだよね?ってな感じでよろしくお願いします(笑)私自身おがふるを書くのが初めてでしたのでとても緊張していたのですがやはり難しかったです、おがふる。なのでやはり読み専でいたいと思います(笑)
他の方の作品はまだ読んでいないので、今からわくわくしながら読みたいと思います。
この企画に参加させて頂きましてありがとうございました。とても楽しかったです。



(管理人コメント)


睦月さん、お祝いのお言葉と素敵小説、本当に有難うございます^^
私も友達以上恋人未満なおがふるが理想なので、禿げ萌えさせて頂きました。
浮いてるよりむしろ光ってますよ(笑)
皆さん輝いてて眩しい管理人です。
残念ながらカテゴリ追加には至らなかったみたいですが、そんな中貴重な睦月さんのおがふるを頂けて感涙しております。
こちらこそ本当に有難うございました!
これからもどうかよろしくお願い致します。






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