あんまんから立ち上る湯気が視界を遮る
コンビニで一緒に買ったココアを片手に持ちながら熱いそれをほおばった
柔らかい触感と広がる温かな甘味
ココアを一口飲めば二重の甘さと温かさが胃にすとんと落ちて、そこから身体全体に向かってぬくもりが広がって行く

ほっとしているのも束の間、横で同じようにあんまんを持った男鹿の手が伸びてくる
あっと言う間に手の中のココアを奪われてごくごくと飲まれてしまった


「おい、お前それ俺が買ったやつだろーが」
「いいだろココアくらいケチケチすんな」
「するわ!お前いっつも人のジュース飲む癖に自分の買わないじゃねーか」


男鹿はいつもいつも俺の買ったジュースを俺以上に飲んでいた
そんなに喉が渇いてるなら自分も買えばいいのにと思う
あまりにも被害を受けるので最近はわざと男鹿の嫌いなコーヒーを買っていたのだが、今日はなぜか男鹿の好きなココアを買ってしまった
すでにあんまんを買っているのになぜまた甘いココアを買ってしまったのか、理由はとても言えないが


「でも今日は俺のために買ってくれたんだろ」
「はぁ?」
「俺に飲まれないようにいつもコーヒーだったのに、今日はあえてココアにしたんだからそう言う事なんだろ」


半ば断定的に言われてぐっと奥歯を噛み締める
知るかよそんなこと
ただ無意識にココアの缶みてたらお前好きだよなって思って、なぜか買っちまったんだよ


「自惚れんなアホ」
「バレバレなんだよ意地っぱり」


むかついたからココアをひったくって一気に飲み干した
口内がむせかえるほどの甘味で包まれたが、そんなの気にしない
でも不思議といつも飲んでいるココアよりも、湯気が立ち上るあんまんよりも、このありふれた缶の味が美味しく感じられて思わず声に出していた


「あ、美味い…」
「は?さっきも飲んでただろお前」


確かにさっきも一口飲んだが、それ以上に美味しく感じたのだ
それはつまり男鹿が飲んだ後だったからって事なのか?
いやいやないだろそれは馬鹿馬鹿しい


「お前の有り余る血糖値が注ぎ込まれたのかもな」
「ぶっ飛ばすぞ古市」


あ、でも少しだけ分かったかもしれない
あの時男鹿が守ったのは、こんな些細でも俺たちに取って大切なこの味だったんだ
そしてたぶん、俺が目指したのはきっと二人で辿るこの道の先に広がっている

じゃあ今度はそれを二人で迎えに行こうか




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