――神宮宅二階
「…何してンだよォ」
「んー…おかし、たべてる…」
「……そりゃ見りゃわかるだろォ」
大きなため息を吐いた貴壱の足の間には、たくさんのお菓子が山になった一抱えもある缶を抱えた二が座っていた。
二は足を投げ出して座る貴壱の胸に背中を預けるようにして、チョコレートで手を汚しながらもリラックスした様子を浮かべている。
「匂いが甘ェ」
「だって…ちょこ、だもんー…」
「ンで俺の傍で食ってんだっつのォ」
「きーちくんが、さむそう、だったから」
「はァ?」
背中を預けたままでのんびりと口にする二へと怪訝そうな表情を浮かべつつ、貴壱は一度携帯を見た。何か操作をしようと親指を動かすもすぐに止めて二の頭に肘を置く。
それを気にする事なくチョコを食べ進めていた二は灰色の左目で貴壱を見上げた。
「さむそう、だった、よー…」
理解出来ない、といったように眉を寄せながらチョコで汚れた手を取った。
「…なぁにー…?」
「ベタベタじゃねェかァ」
触った瞬間に眉を寄せた貴壱の顔を見ながら瞬きを繰り返し、二は体を捻って貴壱と向かいあった。
掴まれている手に顔を近付けてチョコを舐めとり首を傾げる。食べる?と言わんばかりの表情に、貴壱は眉を寄せたままで手を離した。
「兄貴が下にいるから手ェ、洗えよォ」
「んー…めんどくさいー…」
「行ってこいっつのォ」
「やだー……」
「ガキかお前はァ、つか…冬眠してるんじゃなかったのかァ?」
「…ちょっと、めがさめたからー…。あと…きーちくんが、さむそうって…れーとくんが、いってたからー…」
呟きながらゆっくりと二は立ち上がり、汚れていない手でドアをあけて階段を降りていった。
「…………意味わかんねェ」
残された貴壱の呟きを拾う者はいなかった。
110213