「きーちクーン、テスト範囲どこからだっけー」

放課後。そんな事をたっかい声で言いながら廊下の向こうからセーラー服が近付いてきた。一応校内じゃ不良とかそんな分類に入ってる俺に呑気に話し掛けてくる女は大体コイツかコイツの妹か、あとはどっかの物好きだけだ。
教室の一番後ろのドア側、廊下の窓に机をくっつけ身を乗り出すようにして一つ上のチビと話していた俺に向かってぶんぶん手を振って近付いて来るもんだから周りの奴等が思いっきり変な物を見るような目を向けている。
後数メートルといった所で、何故かソイツは足を絡ませたのか全力で転んだ。
馬鹿だ。

「あいったー…!もー!なんで何もないのにーぃ!」
「そりゃお前が馬鹿だからだ」
「あ、ひーちゃん居たの」
「ンだとコルァ!誰が小さすぎて見えなかっただテメェ!!」
「事実だけどちるさんそこまで言ってないもーん」

俺からすればどっちも小さいがお互い身長は気になっているのだろう、なんにせよ放っておいたら延々と続きそうなその言い合いは俺の拳で終わりを遂げた。

「〜…っ普通女の子に手なんてあげないよーぅ!」
「お前は女子じゃねェ」
「縮んだらどうすんだよ!」
「そんな事知るかァ」

気分的にはチワワとポメラニアンにサンドイッチされて吠えられている感じだ。
どうどうと宥めて携帯を取り出す。なんで俺がテスト範囲なんてものを知ってると思ったんだコイツ。
俺は興味もないから覚えてなんかいない。なんでそれを理解しないのかとため息を吐き出しながら俺はとある奴にメールを出した。



Time 2011/**/** 18:13
To  三橋
Sub Non title

次の期末の範囲教えろ

-----END-----



これでよし。
スライドさせて携帯を閉じ未だに唸り声を上げて睨み合っている二人に目をやった。やっぱりチワワとポメラニアンだ。

気が付くと教室にはもう誰もいなかった。基本的に真面目な奴ばかりが揃っている俺のクラスは下校時刻ギリギリまで残っているような奴ばかりがほとんどいない。という訳で二人を中へ呼ぶ、大人しく着いてくる辺りやっぱり犬だな。
携帯を机の上に放置して返信を待つ間やる事がない、チビを構う事にした。

「おい小さいのォ、テメェ弟はどうしたんだよォ?」
「あ?…あぁ、三ならデート」
「……あァ、なるほどォ」
「なっちゃんと?ねぇなっちゃんと?」

脳裏に無口な二人組を思い描いていると突然ポメラニアンが割って入ってきた。どうもコイツはこういう恋愛関係のワードに敏感というか、とにかく気になるらしい。それが男同士だと尚更食い付いてくる。良くわからねェが『萌え』らしい。
目を輝かせているソイツを余所にチビがため息を吐くのを聞く、携帯が机の上で震えた。



Time 2011/**/** 18:16
From 三橋
Sub Re;

数学**ページから**ページ
現国**ページから**ページ
英語**ページから**ページ

後は選択だからそれぞれで調べて下さいね

-----END-----




「……おい、テスト範囲」
「わ、ありがとー!」

一応ダメ元で聞いてみたら期待の半分程が返ってきた。こういう時に教師の一人とメールしてると役に立つ、目の前で嬉々として範囲を書き写しているポメラニアンにとってもそうだろう。案外数学の範囲が広かったから多分完徹しなけりゃ覚えられないだろうな、ポメラニアンは脳ミソハムスターサイズだろうし。
しげしげとその様子を眺めているチビは三年といってももう就職が決まっている(というか就職している)からテストに対して特別危機感を抱いていないのだろう。なんか大人しく並んでいる様子は姉弟のようにも見える。

「お前はいいのかよ神宮弟」
「俺は勉強なんかしなくても出来るんですゥ」
「うわ嫌な余ゆ「書き終わったー!」
「残りは自力で聞いてこいよォ」
「はーい!それじゃ、ちるさんこれからちーちゃん達とアイス食べに行くから。じゃーね!」

がたん、と大きな音をたてて来た時と同じように慌ただしく去っていくその背中は見る間に小さくなっていった。なんだったんだ本当に。
教室に残されたのは俺とチビの二人だけ、机の真ん中には画面の暗くなった携帯一つ。

「……帰るか、神宮弟」
「……おォ、なんか疲れたしなァ」
「俺も甘い物食べたい」
「うちに来りゃ兄貴が用意してるだろォ」
「じゃあ二も連れていく」
「ん、行くぞォ」



110204

尻切れトンボ!

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -