「ッあ、ひぃ…っ、いた、い…ッ!」
「痛いのが、っ、いいんだろ…」

がつがつと腰を掴んで突き上げてくるその人の顔は歪んでいた。声も、まるで一枚ガラスを挟んだかのように遠くに聞こえる。今この場で確かなのは腰を掴む体温と目が眩む程の快感と、それから抑えきれない渇きだけだ。その人が突き上げる度に首輪の鈴と乳首のピアスについた鈴がチリチリと賑やかな音をたてた。何週間前だろうか、このピアスを開けられたのは。少しだけ飛びかけた意識も、前立腺を押し潰すようなその人の動きですぐに散った。その人の肩に手を置いて身体を支えながら自分でも腰を揺らすと、その人を受け入れている内壁が浅ましく蠢いているのが感じられた。今はこの人のペットなんだ。頭の隅にそんな言葉が過った。

「…ッぁん、らし、たぃ…」
「…、何度目、だ」

そんな事覚えている訳がない、いつもの人達はこんなに長く自分の身体を蹂躙しない。抜かずに何度その人に貫かれたかなんて数えるのも億劫になる程には抱かれた。おかげで張り詰めた自身からは透明な液体が申し訳程度に溢れるくらいにまでなってしまった。確かに射精感はあるのに出てくるのはそれだけで、ドライオーガズムまがいの絶頂をさっきから繰り返しているのだ。もう大して若くないように見えるその人はまだまだ現役とも言えるだろう凶器を何度も中に突き入れた。

「ら、め…、も、イってる、からぁ…!」
「…仕様のない、ペットだ…っ」
「や、ぁあッ!ごめ、なさ…っンン!」

微かな呟きとため息、それと同時に胸のピアスを引っ張られた。千切れそうな程に乳首が伸び、その鋭い痛みに思わず涙が零れた。けれど、明らかな快感を纏ったその痛みはどこまでも甘く腰に響き、もう出るものがなくなったそこを震わせて達した。それに少し遅れて、中に熱い物が吐き出された。熱い、苦しい、気持ち良い、痛い。何もかもがごちゃ混ぜになったような思考を持て余し、その人の胸に甘えるように擦り寄った。

それから少し記憶が飛んでいる。次に目を開けた瞬間、視界に広がったのはその人が『飼って』いる『ペット』の顔だった。やけに暖かくて柔らかい物が触れているなと思ったのだが、それはどうやら彼の舌だったらしい。ぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めてくる彼を制して上体を起こし、自分の身体を見下ろした。綺麗になっている。後ろに不快感もないのは、どうやら事後処理までしてもらったからだろう。いくらなんでも、ペットに手をかけすぎだ。自分のような、行きずりのペットに対しては。そんな事を考えていたのを知ってか知らずか―十中八九知らない―、いきなり起こした上体を押し倒された。視界いっぱいに広がる彼の顔に思わず笑ってしまった。

「心配、しなくていいよ…取ったり、しないから……ね?」
「う゛ー…」

果たして自分の言葉は通用しているのだろうか。みぃはペットだから、そう紡ごうとした唇は中途半端に止まった。『そんなんで生きてて楽しいか?』少し前に言われた言葉が頭の中をぐるぐると回る。死んじゃうよりマシだもの、確かにあの時自分はそう答えたはずなのに何故か今になってやけに引っ掛かった。それをどうにかしたくて目の前の彼の首へと腕を回した。そのまま強く強く抱き締めると、彼の頬が擦り寄せられた。人肌が心地良い。渇きは酷くなっていたが、彼に抱きついたまま、眠る事にした。


110221

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