今日は、機嫌がいい。何気なくそんなことを思う。お湯の温度も完璧だし、茶葉だって一番いいのだ。それに蒸らす時間だってきっちりとした。スコーンが少し焼けすぎたがまぁそこはお店で買ってきたやつもあるしそちらを出せばいい。
そんな風に準備して自分の家のテラスで薔薇のほうを見ながら待っている彼女をちらりと見た後、紅茶やら何やらを乗っけてテラスに出て紅茶を目の前に置いて自分も当ての正面に座る。
「ありがとうございます」
そういって、俺が入れた紅茶を手に取り一口飲んだ。
目の前で俺の入れた紅茶美味しそうに飲む彼女はつい数ヶ月前にであったばかりの子だ。彼女にとってはもしかしたらだいぶ前に感じているのだろうかと思いながら、自分も入れた紅茶に口を付ける。
「久しぶりにアーサーさんの紅茶を飲みましたがやっぱり美味しいですね」
久しぶりと言われて少しドキッとする。自分にとっては確かに何日か開いたなとは思ったが久しぶりと言えるほど間が空いていた様には思えずやはり自分は人間じゃないんだななどと思うが彼女にそれを言う訳にも行かず少し間が開いてから返事する。
「あぁ紅茶をお、美味しく入れるのはし、し、紳士として当たり前だからな」
なぜこんな言葉もちゃんと言えないのだろうかと思い少し恥ずかしくなるが彼女は嬉しそうにくすくすと笑っている。
何がそんなにも楽しいのだろうかと思い彼女のほうを不思議そうに見るがこちらの視線に気づいたのか笑うのを止め少し恥ずかしそうになりながらこちらに向かって言う。
「すみません。かわいらしいなと思って」
男に向かってそれを言うのかと少し落ち込むがそういえば彼女は日本人の女性で、日本では女性はたとえごつい男性の行動がかわいかったら見た目がどんなのであれかわいいという物です。
と大本というか日本自身が力説していた事を思い出し日本と言う国はやっぱりいつまでたっても理解したようで理解できて無い事を再確認したが今喋っているのは日本ではなく間を空けるのは失礼だという事を思い急いで返事する。
「か、かわいいっていうなばかぁ!」
そう言うと少し微笑みながら「そうですね」といった。分かっているのだろうかと思ったがこれは日本が俺を見る時と同じ目である事思い出し俺を子供扱いしているのだろうかと考えるがきっとそうなのだろうと思う。
「子供扱いするんじゃねぇよ!」
思わずそういってそっぽ向くと、彼女は又くすくす笑う。
「子供扱いしているつもりは無いんですけどね」
そういってまた紅茶を飲み落ち着く姿を見て自分も少し落ち着く。そして実は俺お前と同い年じゃなくてずーっと長く生きてるだぜと。そんでもって国なんだぞといったらどうなるんだろうか。そんな事を考えて自分の考えをまた打ち消して自分も同じ様に紅茶を飲む。
俺は国だ。イギリス人じゃなくて、イギリスという国家だ。そんなモノが存在するなんて知らないだろうし、存在してるのを知っていたとしても自分がそうだなんて気がつかないだろう。
ここでばらしたらどうなんだろうなんて考えて、その考えを打ち消す。それをした所でどうなるのだろうか。彼女が俺らと同じ時間軸に耐えられる訳もない。しかも、あって数ヶ月の人間にそんなこと言われたら距離置こうと思うだろう。
じゃあ、それをできない様にしたら? そんな風に思ってしまう。閉じ込めたら確かに分からないかもしれない、長い時間が経ってることにも気がつかないし、いいんじゃないか何て思って、彼女に対してこんな事思う何て疲れてるんじゃないかなんて思い何度目になるかは分からないが、その考えを打ち消した。
「……アーサーさん?」
そう声をかけられて少し驚く。その姿を見て彼女は何か思ったのだろう「最近忙しかったんですか? とてもお疲れに見えますけど」そういって心配そうに眉を寄せた。
「少し、忙しかったかもしれないな」
「大丈夫ですか? もし、本当にお疲れなら私帰りますよ?」
多分、いつもならいや大丈夫だなんて言うだろう。でも多分これ以上一緒に居たら何を考えるだろうか。もしかしたら行動を起こしちゃうんじゃないだろうか。そう考えると我ながら恐ろしく相手もそう提案しているし帰ってもらうかと思う。
「そう、だな。……また、後日誘うからすまないが今日は……」
「いえいえ。疲れている時は無理しないほうがいいですし」
そういって席を立つ彼女を見てやっぱり好きだななんて思った後自分も立ち上がり玄関まで見送る。玄関でじゃあ、帰りますねなんて言ってるのを見て今しかないぞと、そういうような声が聞こえてきた気がした。
「アーサーさん、大丈夫ですか?」
知らないうちにぼーっとしていたらしく心配そうに顔を覗き込んだ彼女に何でもないと、そういってさっきの考えとも別れる様に手を振って分かれた。