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 あんたの拒絶が、くだらない倫理感に基づくものなんてのはお見通し。ホントに分かり易いヒトだと思うけれど、何をそんなに怖がっているのかは分からない。あんたが望むのなら、俺は自分で己の呼吸を止める事すら出来るのに。“技師”と呼ばれる分かり易い晴れがましさも、安定した今の立ち位置も、簡単に手放せるのに。

「カカシさんは生きてください。この里には貴方が必要だから」

 生死の境界を彷いながら、いつも脳裏を過ぎるのはあんたの同じ台詞。どこまで先生に囚われてるんだろうね。ホントは“里”に必要とされるより、“彼”一人に必要とされたいのに。頭の固い彼は、決してその言葉を口にしない。
 その臆病さすら愛おしくて、結局必死になるしかなくて。

 だってここで気を抜いたら、二度とあの曖昧な笑顔が見れなくなる。不器用な指先から確かに伝わる愛情を、二度と感じる事が出来なくなる。俺の一挙一動に敏感に反応しているくせに、頑なさを装って唇を噛み締める可愛い表情が見れなくなる。
 そんなの、堪えられそうにないから。笑顔で残酷なこともする。多少の無茶をして、倒れたって構わない。

「何でもっと加減しないの…カカシさん、バカなんですか!?」

 咎めるあんたの声と、心配そうに顔を覗き込む瞳。そっと頬を辿る指先の熱が、言葉には出来ない胸の内を伝えて。俺の心は、やっと満たされる――



最後は憎らしいくらいにやわらかい笑顔で

とどのつまり、俺の生きてる理由の全ては――彼。


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2008.06.29 mims
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