思い出すのはいつも同じ、何気ないワンシーン。
「ったく、またっすか?」
「まあ…そう言うな」
唇の間に挟まれた煙草は、やけに小さく見えて。今にも落ちそうな灰が、何故か切なかった。
「今回だけっすよ」
「あぁ、」
およそ感情の篭らない相槌を打ちながら視線をさ迷わせる男を、この先もきっと許してしまう事は分かっていて。
「ちゃんと聞いてんすか?」
「聞いてるきいてる…」
はぁー……しょーがねぇ人だ。本当はため息を吐くことすら、愉しんでいた。
出来る事なら、大きな子供みたいなこの男を、いつまでも。いつまでも、許し続けていたかった――
きれいなエンディングなどどこにも無いのにね きっとこのまま大人になって。違った世界に息衝いて。お互いのことを次第に忘れて。さようならも無しに溶けて。- - - - - -
2008.10.02 mims
アスマ追悼SS