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 始末が悪い。

 幾ら悔いても責めてもどうにもならないことだと分かっていて。なのに溢れる感情の奔流を持て余す。流される。馬鹿だ、あんたは馬鹿だ。そんなこと、誰も望んじゃいねぇのに。バカ…だ。

 身体中の血液が一気に温度を下げて、したへ下へと降りていく。全身に浮かぶ粟立ちは、鋭い刃物で喉元を刔られるよりずっと鮮明な寒気を齎す。ふるえが消えない。見えない何かに四六時中首を絞められるように、呼吸すら上手く出来なくて。認められない、認めたくない。

 失われた時が、まるでしあわせな悪い夢のように繰り返し訪れて。足元にしのび寄るひややかな闇に、今夜もまた飲み込まれる。

「お前もまだまだだな…」

 低い声はいまも鼓膜に絡みついて、俺からやすらぎを奪っていく。最期の、余りにも穏やかな顔が、俺を動けなくする。

 絶えることを肌でリアルに感じたら、心が全ての機能を止めそうになった。奥歯が折れるほど噛み締めて、握り締めた拳には爪が喰い込む。バカだよ…。

 見上げた空は深く蒼に沈んで、宇宙まで突き抜けそうな闇。
 ただ、此処に居て欲しかった。それだけ。それだけで……ほかにはなにも。

 ひりひりする塊が、まだ胸に――



道でもそれでもまだ
涙すら拭えなくて。抱きしめることもできなくて。
ただ
生きていてほしかった。


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2008.10.03 mims
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