けほけほと咳込んだ姿には、なんの意図も計算もないはずだ。くすぶりに纏いつかれた五体の、単純な反応。分かってんのに、こうも胸がざらつくのだから、どうしようもねえ。
「アンタ、やっぱ吸い過ぎじゃねえの」
「悪いな」
吐き出した煙が空気中を流れる。呼吸といっしょに、お前の内側に入り込む。俺たちは手の届く距離にいるから。
染み込んだ気体は、じわりと粘膜を痛めつける。網膜も、喉の奥も。それで涙目のお前の出来上がり。そして俺は煽られる。
だいたいいつもそうなんだ。お前の身体の素直な反応は、毎回俺の胸を切なく絞りあげる。癖が悪い。
シーツの海に縫い付けたら、誘うようにもれる声も。瞳を合わせれば、上気する皮膚も。重い身体を預けた瞬間、不自然に浮き出す腰骨も。そして、いまも。
「ったく。わりぃなんて思ってねえクセに」
相変わらずの涙目を見下ろして、苦笑がもれる。
「なに笑ってんだよ」
「……シカマル」
低く呼べば、肩がゆれる。ほら、また煽られている俺。
上目遣いに欲情を刺激されました。そう伝えたら、コイツはどうすんだろう。それがどんな反応でも、ずくずくと俺を疼かせるに決まってるけど。
例外なくおれたちは他人寄生虫なのだ 依存なんて単純な言葉じゃ、とても伝えきれない- - - - - - - - - -
2009.05.10 mims