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「暑苦しいな、ったく」

 やめろっつうの。苦虫を噛み潰したみたいなシカマルの顔。余計に歪めたくなるのは、僅かに嬉しそうな色が滲むのに気付いているから。
 素直じゃないガキは嫌いだが、こういう場面ではまた別の話だ。あまり簡単に靡かないほうが煽られる。

「肌を触れ合わせて師弟の絆を深めようとしてるだけだろうが」
「んなのいらねーっつうの」

 何なんだよ急に。語気は荒いのに、声が上擦っている。眉間に寄る皺は、機嫌の悪い時のそれと微妙に違う。そんな顔を見せられたら、調子に乗りたくもなるじゃねえか。

「オトコ同士のスキンシップってやつ」
「だったら、なんでそんなエロいさわりかたすんだ」

 するり。結い紐をほどいて、髪の中に指を差し込む。頭だとか顔に触れられるのって、不思議と心が緩むモンだから。
 う、あ。ちいさく漏れる声は少しだけ甘みをおびはじめる。もっと、か。

「別に普通だろ」
「どこが」
「エロいさわりかたなんて思っちゃうシカマルくんのほうが厭らしいこと考えてるんじゃないかとセンセイは思います」
「はあ?んだよ、それ」
 とぼけんな。

 とぼけちゃ悪いか。大人ってのはそういう狡さがねえと生きて行けねえんだよ。
 するり。首筋に、てのひらを滑らせる。淡いタッチで浅くなる呼吸。こうやって少しずつ硬い殻を剥がしていく感覚が好きだ、抵抗されるほどに堕ちたあとが楽しみになる。
 もしかしてこいつが抵抗するのはそこまで分かってのことだろうか。だとしたら、相当に喰えないガキだ。それでも最終的には喰っちまうんだけど。躍らされてんのは俺のほうかも。

「もっとヤらしいことされたいんなら、素直になれよ」
「ちげぇって、バカ」

 やめろと主張する声は、もう、かすれている。おくれ毛に絡ませた指先が熱を持つ。

「バカって言うヤツのほうがもっとバカだとセンセイは思います」
「……アスマ」
「ん」
「それ、今日のネタ?」
「………」





 じゃれあい

 どうでもいいから、さっさと抱かせろ。




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2009.06.18 mims
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