蜜より甘いくちびる

「いらっしゃいませ」



あなたから発せられるその声は



くちびるに触れる全てのものを甘く感じさせる



「いつもの?」



「はい」





初めてこのカフェを訪れてすぐに、私はあなたに恋をした



沢山のお客さんが、イケメン揃いのギャルソンを目当てに通う中



混み合う時間を避け、あなたがカウンターに居る時に



必ず同じメニューをオーダーする



繰り返し、繰り返し・・・





顔を覚えてもらって 名前を知ってもらって



段々と親しくなって



それでも所詮、常連客の一人



私なんて、その程度の認識しかされてない



そう思って諦めていた





「好きなの?」



「えっ?」





トクンッ・・・・・





問いかけられた言葉はあまりにも突然すぎて、心臓が破裂しそうになった



「必ずハニーカプチーノをオーダーするから、好きなのかなって」



あ、ハチミツ・・・?



期待した分、落ち込みは激しく



跳ね上がった心拍数に煽られて、無意識に口から出た言葉



「好きなのは・・・ハチミツじゃない、です」



「ふぅん・・・じゃあ、何が好き?」





あなた、と答える間もなく





数センチの距離に





蜜より甘い、あなたのくちびる・・・


fin
2008.04.12 amaki
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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