Sweet Berry

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出かけるまでは確実にそこにあったモノが消えていた。



そこに居たのはだた一人だったんだから、犯人は言わずもがな…。







天然テクニシャン


*Sweet Berry*


―犬塚キバ―





「どぉして食べちゃったの!?」


「だって冷蔵庫に入ってたから」


「入ってたからって―!!」



凄く凄く、すっご―く楽しみにしてたのに!!



「食べるなって言わなかったじゃんかよ」



ええ、そりゃ言いませんでしたけど!!



食べていいとも言ってないよね!?



恨めしげにじと―っと睨みつけても、あたしが怒ってる理由が分からないのか頭をぽりぽり掻いてる。



「はぁ………」



テーブルの上のお皿に乗せられた小さなケーキに視線を移すと、無意識に溜め息が零れた。







暖かくなって来たとは言え、まだまだ寒さの残るこの時期に態々並んでまで手に入れた、限定品。



木の葉でも指折りのお菓子屋さんがこしらえた、年に一度の特別なケーキなのに。



「う―…」


「2個食いたかったんなら、また買ってくりゃいいし…」


「売ってないもん」


「へ?」


「来年まで、もう作られないの」


「そ、そうなの…?」



たかがケーキなのに年一回!?って顔してるキバ。



男の人には理解出来ないんだろうなぁ…。



それでも特別な物だったらしいってことは感じたみたいで、ちょっと焦ったように宥めてきた。



「い、1個残してたんだから、いいだろ―?」



確かに2個買ってきたうち、食べられたのは1個だけ。



あたしの分は残してくれたんだってのは、ちゃんと分かってる。



でも…



でもね!?





「そ―ゆ―問題じゃないもん…」


「じゃ、ど―ゆ―問題?」


「…………」


「限定品っつったって、1個は食べれんだろ?」


「そうだけど…」



ハッキリ言わず、ぐずぐずした態度に段々と苛立ってきたのか、語尾が荒くなってきた。



「他にどんな問題あんだよ!?」


「……一緒に」


「は!?」



ここでちゃんと言わないと、しなくていい喧嘩をする破目になりそう…。



そう思って、勢いをつけて正直な気持ちを吐き出した。





「キバと、一緒に、食べたかったの!!」





「へぁ?」





予想もしなかったことらしく、キバは間の抜けた声をあげる。



「だからっ!!限定品だし、初物のイチゴだし!!絶対美味しいって分かってたけど…二人で食べたら、もっと美味しいだろうって思ったから!!」



〜〜〜〜っ分かってよ、それくらいっっっ!!



頬が熱い…きっと真っ赤っかだろうなぁ…。



そんなことを考えるくらい、まだ余裕があるのかと思っていたんだけれど。





「ぷ…っ」


「!!!!」


「くっ…は、ははははっ!!」



笑いだしてしまったキバの声に、やっぱり言うんじゃなかったと後悔した。



もう、ヤダ…。



恥ずかしすぎて、目まで潤んできちゃった。



「くっくっくっ…そっか―、ゴメンな?」


「う…も、いい…」



顔を背けてポツリと呟いたら、そのまま抱きしめられて。



「なまえの顔、イチゴより赤いぜ?」


「そ、そんなワケないでしょ!!」



そこまで赤くなってたら、脳みそ沸騰しちゃってるってば!!



「だって、ほら…」



もう恥ずかしいやら揄うキバに頭にくるやら、半分パニくってるあたしの顔の横に、すっと何かが寄せられた。



「なまえのが、赤い」



横目でちらりと見ると、指に挟まれた……イチゴ?



と、何を思ったのか、それをキバはぱくりと口に入れてしまった。







「あぁっ!!あたしのイチっ……!!」







抗議の言葉は全部言う事が出来ず、あたしの口は甘酸っぱいイチゴと、それから…







甘い、甘い唇に占領された。







天然テクニシャン


(やっぱ二人で食う方が美味いな)







揉め事も、容易になし崩しにしてしまうアナタ







End.

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【天テク:Sweet Berry】
犬塚キバ


来年のケーキはキバに並んで貰おう(笑)


2009.2.19 by amaki

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