見据えた視線、奥に秘める

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現世に生きる人間との関わりが増えた尸魂界。

それに伴って様々な風習が流入するようになった。



九番隊の檜佐木副隊長は楽器。


四番隊では現世の“こんびにえんすすとあ”というものを建設する予定があるとのこと。


朽木家に嫁いで、お付き合いするようになった上級貴族の奥様たちの間でも現世ブームが起こっていて、お茶会の話題にのぼる事も度々。


死神代行と親しい義妹のルキアが、色々現世の行事を話し聞かせてくれるので助かっている。
(朽木家当主の妻、世の事を知るのも務め。)


先日行われた“ばれんたいん”もその一つ。




“本命チョコ”は、手作りした物を白哉様へ差し上げた。甘すぎる物をあまり好まれないから『要らぬ』と言われたらどうしようかと思っていたけれど、受け取ってくださり安堵した。




“義理チョコ”には感謝の念を込めると聞いたのでルキア手作りし、連名でお世話になっている護廷隊の各隊長、副隊長様方へ。



“友チョコ”をお付き合いしている奥様方へ。作るより流行の現世物が喜ばれるだろうという理由で、ルキアが現世で見繕ってくれた。





白哉様や周囲に内緒にして、ルキアと2人で準備するのは簡単ではなかったけれど、現世に生きる女の子の気持ちが味わえた気がする。
(あんなににドキドキするなんて久しぶりだった。)




そんな2月14日も過ぎ、“ばれんたいん”の余韻も消えた今日この頃、


「朽木隊長夫人、こんにちは。」





六番隊舎の廊下を歩いていると、阿散井副隊長に呼び止められた。



「こんにちは。白哉様は今、お手空きでしょうか?」



「あ、はい、中に。」

先日はチョコレートありがとうございました。




頭の色とその刺青からは想像できない程礼儀正しい阿散井副隊長は、私に深くお辞儀をしてくださる。




「いえ、お口に合いましたか?」



「えっと・・・その、実は・・・」

ここだけの話ですよ?





阿散井副隊長が遠慮しがちに、白哉様が差し上げたチョコレートを奪い取ったと教えてくださった。
(ルキアも私も白哉様には別にチョコを渡したというのに、どうしてだろう。)


「俺だけじゃねぇっすよ、吉良と檜佐木先輩からも取り上げてました。」



「あら・・・なんだか申し訳ない事をしてしまって。」

皆様にもすみませんでしたとお伝え願えますか?




隊首室の前でヒソヒソと話していると、その戸が開いて



「何をしておるのだ。」


白哉様の凛とした声が耳に届いてきた。



「あ、隊長、今ご案内しようとしていたんですが。」


「そうか、礼を言う。」




表情を変えることなく淡々と言葉を紡ぐ白哉様に一礼して、阿散井副隊長は私が歩いて来た方へ去って行かれた。




もっときちんと謝りたかったのに。


「入らぬのか。」


「お邪魔ではないですか?」


「心配には及ばぬ。」



阿散井副隊長たちからチョコを取り上げた。理由はきっと、あんな駄作を人様に渡すなんて何事か。ということだろう。




六番隊舎で白哉様が執務をなさる様子を眺める平穏な時間。


なのに今日はそれが堪らなく苦しい。
(ご立腹ではないかと顔色を見れば見る程、そう見えてくるのだから。)



「白哉、様?」



筆を進めている白哉様を見据えて、声を掛けてみると



「何だ」



流れるような筆の動きが止まり、目線が机越しにぶつかる。




「隊長、副隊長各位様へ宛てたチョコを回収された・・・というのは本当でございますか。」



張り詰めていた空気がさらに張られたかの様に、白哉様の眉間に皺が出来る。



「阿散井か・・・。」




小さく漏れるため息。




「私の作った物など、人様へお渡し出来る代物ではないと・・・いう事でございますね。」

申し訳ありませんでした。以後、気をつけます。




俯き、膝の上で拳を握り締めるともう一度小さなため息の音が聞え、



「何を勘違いしているのだ。」

しかし、話しておこうと思っていた。丁度いい。




少しの動揺も怒りも、優しさも感じ取れない声色が降ってきた。



白哉様が机の引き出しから、阿散井副隊長へ向けた包み紙に包まるチョコを取り出してこちらへやって来た。



「この様な物、翌年からは配らなくてよい。」


ズキン。



「は・・・い、不快な思いをさせてしまい、申し訳・・」



「そうではない。」









私だけに贈ればいいと言っている。




「解ったか。」



「は、い。」




(白哉様、他の方々からも回収されたのですか?)


(いや、していない。)


(ではどうして、)




(奴らが、頬を赤くして喜んでおったからだ。)




その理由では不十分か?





END.

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見据えた視線、奥に秘める(思い)
朽木 白哉


敬語、その他あの喋り方が解らないのでぐだぐだ感はありますが。


普段愛の言葉なんて吐かないのに、ちょっとズレたところで恥ずかし気もなく言いそう。


2009.02.18 megumi

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