小さな背中にグッバイ

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―・・カシャン


窓の向こうで音がした。


携帯の液晶に浮かぶ時間は
もうとっくに丑三つ時。


明かりを落とした部屋で考える。


不審者かもしれない、だけどもしかしたら


暫く悩んだ挙句、確認することに決めて
カーテンを少し開け家の前を見ると



街灯に浮かぶ、オレンジ色。




一護!!




―・・・カラカラカラ



急いで窓を開けてから


「一護・・・?」



変な髪形してないか確認しなかったのを



「お、おう。起きてたか?」


後悔した。



「うん・・ちょっと待ってて。」
今、そっち行くから。



「あぁ。」



家族を起さない様に階段を駆け下りる。



少し急いでいるのは、
いつもと違う雰囲気を纏っている一護が
どこかに消えてしまいそうな気がして怖いから。



―・・カチャリ



「悪ィな・・」


「ううん、平気だよ・・。どうしたの?」



よかった、消えてない。



ちょっと困った顔をして頭を掻く一護に
少しだけ、違和感を感じた。






「ん・・顔が見たくなっちまってよ。」


「そうなんだ・・。」


それだけなら、いいのだけど。


まだ何かあるんでしょ・・?


「上がる?」


この違和感は何?


「いや・・俺、これから用があって」
暫く戻って来れねんだ。だから、


ちょっとだけ、な。




一護の腕が伸びて来てあたしを捕まえる。




こんなに近くに居て、体温を感じるのに
どこかへ消えてしまうの?


「一護・・」


「悪い、もうちょっと。」


いつもより積極的な一護の行動。



さらに強められた腕の力。
近付く距離。



「待っててくれな・・」
帰って来たら一番に会いに来る。


どこに行くのか
何をするのか
いつ頃戻るのか


聞きたい事は山ほどある。


だけど一護の目が
“心配すんな”と言っているから


「うん・・待ってるから。」
無事に帰って来てね。




何も聞かないことにした。



「おぅ。」



微笑む一護の顔を脳裏に焼き付ける。

どうか、この笑顔にまた
会えますように。


「一護・・好きだよ。」



「俺も。」




ふわりと唇同士がぶつかり
一護の香りが鼻腔に広がる。


この匂いも焼き付けよう。



「じゃあな・・」





天然テクニシャン
―小さな背中にグッバイ―
黒崎 一護



荷物も持たずに遠ざかる一護の
小さくなっていく背中にエールを送るしか
あたしには出来ないけど


ずっと待ってるからね。



END.

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小さな背中にグッバイ
黒崎 一護


一護の意志の強さ。
知らず知らずのうちに
周囲の人にも影響を与える。


2009.01.26 megumi


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Title*ララドール
(Thanks very much)
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