小悪魔に仕留められる

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今日も無事、1日が終ろうとしている。


時刻はPM11:35
これくらいの時間はさすがに電車も空いて来ていて
酒臭い人が寝ていたり、ボクみたいな残業帰りのサラリーマン。

これから出勤であろう女性がぽつぽつと、乗車している。


テクニャン
―小悪魔に仕留められる―
テンゾウ

「テンゾウ先輩?」


二人席に座って、窓から流れる景色を眺めていると


「やぁ、どうしたんだい?」
こんな時間まで。


「気になりますか?」



会社の後輩、そして密かに想いを寄せる
1人の女性に声を掛けられた。



「気になるもなにも・・」
飲み会かなにかかい?



会社に居るときは一つしか開いていないブラウスのボタンが
二個開いているから、もしかしたら男と会ってたのかもしれない・・・。



「やだ、あたしだって仕事で残る事ありますよ。」

ボクが鞄を退けると、無駄のない身のこなしで横に腰かける。



「あれ・・ブースに残ってたかい?」


「いえ、会議室でやってたので・・」

君が、纏められていた長い髪を解くと
ふんわりと優しい香りが鼻腔を擽る。



「そうだったのか。」


「はい。」


電車が停車駅に着くと、
駅前の一層煌びやかな電飾に群がっていたであろう
酔っ払った学生たちが一斉に流れ込んで来て
急に車内の騒がしさが増した。


横に座る君も、同じ考えなのだろうか。

学生たちをじっと見ている。



「ね、先輩?」


「なんだい?」


「いいですね、ああゆうの。」


「もう社会人のボクたちには出来ないからね。」
あんなバカ騒ぎ。



学生たちを見ていた君が、ボクの耳元に手を添えて
所謂“コソコソ話”をしてきた。



「違いますよ。あの子たち、ドアのとこの・・・」
好き同士だと思いませんか?



彼女の香りをすぐ近くに感じながら、チラッと目線を向ける。


確かに。

互いに意識し合っている様に見える。



「いいですよね・・青春って感じ。」


目を細めながら口元を緩める君の姿に
ボクの口元も緩んだ。



「君だって彼氏、居るんだろ?」



若干セクハラになってしまわないか気になったが、
君があまりにも魅力的な表情をするから
聞かずにはいられなかった。



「そう見えます?」


「あぁ。」




赤すぎない、よく似合う色の口紅と
程よい光沢のグロスを纏った
形の良い唇が、ボクの心音を高まらせる。


「そうですか・・」


少し俯く君、サラりと長い髪が垂れて顔に掛かる
それだけの事もだだただ君の魅力を引き立てる要因。



「あ、ボク不味い事聞いたかな?」


明確な返事をしない君。
フォローを入れるふりをして答えを導き出そうと試みたけど
不意に上げられた君の目にしっかりボクの心は捕らえて
そんな考えはどこかに飛んで、消えてしまった。




「好きな人は居ますよ。」
近くに。


「それって・・」

“どうゆう意味だい?”そう口にしようとしたら
ニコッと笑って君は立ち上がった。


「ごめんなさい、あたしココなんで・・。」


電車はいつの間にか彼女の降りる駅に到着。

アナウンスが流れて、ドアが開くと
先程から騒がしくしていた学生たちが降りて行く。
(オレンジ頭の初々しいカップルは、まだ乗ってるようだけど。)


それに続いて君がホームに足をつけたハイヒールの音。





『ドアが閉まります、駆け込み乗車はご遠慮ください。』

そんなアナウンスが聞えた時にはもう、ボクは君を追って
ホームへ駆け下りていた。



「先輩・・駆け込み下車もダメですよ?」


クスクス笑う君には、ボクが降りる事が解っていたのだろうか。


「君に・・あんな事言われたら気になるでしょ」


「テンゾウ先輩・・それって、貴方があたしに興味を持ってくれてるって事ですよ、ね?」


まいったな・・君には、全てお見通しなのかい?




END.

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天然テクニシャン
―子悪魔に仕留められる―
テンゾウ

2009.01.18 megumi

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