お酒が引き金になる彼

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夕刻・・瀞霊廷の外れ、豊かな自然が残る地区に構えた家にもうすぐ貴方が帰って来る。




夕食の支度をしながら、そんな事を頭の片隅で考えていると感じなれた霊圧が近付いて来た。



天然テクニシャン
―お酒が引き金になる彼―

射場 鉄左衛門



噂をすれば、なんとかって言うのはこういう事ね。


クスっと笑みを零して玄関へ行けば、丁度軽快な音を奏でながら玄関の戸が開く。



「帰ったぞ。」



「おかえりなさい。」
お疲れ様でした。



「おぅ・・」



「お風呂になさいます?」


いつも、まず帰って来たら貴方は入浴するからもうお湯は沸かしてあります。


「そうじゃのう・・」
風呂行ってくるわ。




サングラスと斬魄刀を私に手渡して脱衣所へ向かう貴方の背中を見送る。


いつも、お疲れ様です。





浴室から聞えてくる、お湯を被る音。

脱衣所に着流しを持って行き、声をかける。


「貴方?湯加減どうかしら・・」


「あぁ、丁度エエわ。」


「よかった。」
お背中流しましょうか?



「いや、もう湯に入るけぇ・・」


「解りました。」
じゃあ夕食の準備しておきますね。
着流しも置いておきましたよ。


「頼むわ。」





炊事場に戻って夕食の準備と平行して日本酒の燗を始める。


すると暫くして着流しの前を開いた状態の彼が脱衣所から出て来た。



「お先やったな。」


「今すぐ、燗酒お持ちしますね。」


今日は寒い日だから50度前後まで温めて用意した肴と共に居間へ運んだ。



「どうぞ。」


「あぁ。」


お酌をすると、クイッと一気に飲む貴方。
その飲みっぷりも貴方の魅力の一つ。



「お前も、たまにはどうや?」



私に、御猪口を差し出してくれる


「でも、まだ夕食の支度が途中で・・」



「そんなもん、何時でも気にせん。」



「じゃあ・・」


貴方の手、徳利からさらさらと滑らかに御猪口に入る燗酒。


まるでそれは、貴方が私に投げかける言葉の様。



捉え処なくただ流れていくようだけれど本当はとても優しいの。



「頂きます。」


そっと口をつけてみると、体が温まる温度。




「いつも、感謝しとる。」



「何にです?」
私、何もしてないですよ?




「ワシと同じで、お前も護廷隊。」
大変やろう?仕事と家事の両立っちゅうのは。


ほらね。


「いえ、私は妻としても護廷隊員としても未熟で・・」
貴方にも、隊員の方にもご迷惑ばかり・・


「いや、お前はホンマ、よぉやってくれとるけ。」
いつも有難いと思っとるんや。



優しい。



「貴方こそ、最近忙しいのでしょう?」



御猪口の口を拭き、ありがとうございます。と言って手渡してまたお酌をする。



「ワシは副隊長やさかいのぉ、」
こんなもんや。



「そうだ、また狛村隊長を我が家にお招きくださいな。」
お二人共、お疲れでしょうし腕を振るってお食事用意させて頂くわ。


だから、私は少しでも貴方のお力になりたいの。


「ホンマ、お前と一緒になって良かったわ。」


「また、そんなにお褒めになられても・・」
何も出ませんよ?


「ワシは本気でゆうとるんじゃ・・」
お前は器量も気立てもエエ。
最高や。




そんなに誉めるのは違反ですよ?

でも、貴方は嘘を吐く様な人じゃない。

それが解っているから、嬉しくて。

もっと誉めてもらいたくて。


貴方のお力になれる様に、と頑張れるの。



「私も、あなたと一緒になれて」
幸せです・・。



貴方は私を【最高の妻】に仕立て上げる

天然テクニシャン。



END

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天然テクニシャン
―お酒が引き金になる彼―
射場 鉄左衛門

お酒は人を素直にする効果も、あるんじゃないかと思います。


2009.01.12 megumi


*燗酒(かんざけ)…日本酒を何らかの手段であたためたもの
*肴(さかな)…酒を飲む際に添えて共に楽しむ対象

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