◎押してだめなら、

NARUTOの奈良シカマルさんがもし瀞霊廷で死神稼業をしていたらきっとボケキャラ檜佐木さん専門のよいツッコミポジションになるんじゃないの?という妄想から生まれたミックスジャンル夢です。苦手なかたはご注意ください。
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 昼下がりの瀞霊廷には、穏やかな空気が流れている。書類を抱えたまま九番隊舎に向かう途中で、目的の人物を見つけた奈良はホッとため息をついた。

「檜佐木さん、何してるんすか」
「………」

 やたらに真剣な横顔。この角度からでも細い眼が血走って見えるのは、気のせいだろうか。

「檜佐木副隊長」
「……」

 デカイ身体を木陰に隠して、霊圧まで抑えてるってのは、なんでだ。別に旅禍が侵入したっつう話もねえし、どうせ何か後ろめたいことでもしてんだろ。
 つうか、これ以上でけえ声出さねえと聞こえねぇのかよ、めんどくせー。

「檜佐木センパイ」
「…」

 相変わらずセンパイの目は一方向を見つめたまま、動かない。いったい何をそんなに真剣に見てんだか、と木陰から顔を覗かせれば、乱菊さんと談笑しているなまえの姿。
 ああ、そういうことな。確かにあのふたりは護廷十三隊の2トップって奴だから(主に、上半身のライン的な意味で)。相変わらず、檜佐木さんも分かり易い人っつうか、何つうか。
 あれだろ、ちょっと暑くなってきたし、微妙に開き加減の死霸装の合わせ目でも見てんだろ。ったく。まあ、俺もまったく興味ねえ訳じゃねぇけど。

「ドエロ先輩!」

 んな顔でのぞき見ばっかしてるから、卑猥な入墨だなんだって言われんじゃねえの?とは、一応センパイだから言わないでおくか。
 でも微かに漏れ感じる霊圧が、なんとなくピンク色に見えるのは、俺の考え過ぎじゃねえと思う。

「奈良、か」

 振り返った檜佐木さんの顔は、予想通りにだらしなく緩んでいた。やたらぎらぎらした眼に、のぼせたみたいに上気した頬。涎だけじゃなくて、鼻血まで流しそうって、いったいその頭ん中ではどんな妄想が渦巻いてんだよ。
 はぁー……。
 それにしても、いままで散々呼んでも反応しなかったクセに"ドエロ先輩"で反応するなんて、あんたソレで良い訳?一応は、瀞霊廷一の歩く猥褻男(ひでェけど、事実だ)って影で呼ばれてる自覚があるっつうことか。

「何してるんすか」

 何見てるんすか。って聞くべきだったかも。しゃがんで俯いた女ふたりの動きに沿って、センパイの視線も泳いでいる。要は、胸の谷間に釘付けってことだろ。

「俺、いまちょっと忙しいんだけど」
「だから、なんで?」

 何が忙しいんだか。涎垂らしそうな顔して。こっちは真面目に仕事してんだけど。あんたのハンコ貰って、さっさと自分の隊舎に帰りてえんすけど。俺もセンパイと同じ副隊長だし、そんなに暇じゃねえんだよな(つうか、なんでこの人はこんなトコで油売ってられんだ?)。
 それにしても、勿体ねえよな。黙ってりゃイケメンだし、仮にも世間的にはエリートっつう位置にいんのに。実態はただのヘンタイなんだもんなあ。

「観察だよ、カ・ン・サ・ツ」
「はあ」
「俺の趣味なの。なまえちゃん(と乱菊さん)の観察」

 へぇー。えらく高尚な趣味をお持ちで。なまえが最近ヘンな視線感じるっつってたのって、もしかしてセンパイのせい?いや、この様子じゃ間違いねえな。

「狙ってんすか」
「ああ…なまえちゃんって、可愛くねぇ?」
「まあ」
「乳もデカいし」
「……ノーコメントっす」
「乱菊さんには前に"修兵の変態ストーカー!死ね"って、灰猫喰らったんだよなあ」

 そりゃあそうだろ、んな厭らしい眼で見てんじゃなあ。俺だって斬魄刀抜きそうだし。相手をなまえに変えたって、変態ストーカーであることに変わりはねえし。つうか"乳"って言うなっての。

「それでなまえ?」
「そ。彼女になら、冴えてる俺の作戦がきっと通用すると思うんだよな」

 いや、冴えてるやつはこんな欲望剥き出しの覗き見なんてしねえだろ。いまのあんた、作戦の一環としてここにいるっつうより、明らかに煩悩垂れ流しじゃねえの。

「ちなみに、どんな作戦っすか」

 問い掛けた俺に向かって、得意げな笑顔。あー…コレってもしかしたら、聞かなきゃよかったっつうヤツかも。
 自分の浅はかさに頭を抱えそうになった直後、自信たっぷりで吐き出された一言に、盛大なため息が漏れた。



押してだめなら押し倒す!



「センパイには無理なんじゃねえっすか」
「なんで」
「あいつ、大前田のことを気に入ってるらしいっすから」
「え゙ェェェ――!!!!それマジかよ、奈良ッ!?」
「ええ」

 まあ…その前に、なまえは俺のモンなんすけどね。 こっそりほくそ笑みながら、シカマルは心の中だけで呟いた――

2009.06.09
奈良くん死神設定捏造。お誕生日のアサちゃんへ
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