3日後に会いましょう

 毎晩、君と同じ匂いの燻りに包まれる。
 額を突き合わせるのはたった一瞬、その数秒を朝から待ち侘びて。
 思う存分に味わおうと構えているのに、あっという間に曖昧な時は過ぎ去る。

 薄い唇をやわらかく歪め、小首を傾げる君は妙に色っぽくて、その姿を永遠に凍結してしまいたい。
 ふーっ、と細く吐き出される煙をかき集めて、そこに含まれる水蒸気も香りの成分も何もかも自分の物に出来たら。


「カンクロウさん、火 消えてますよ?」
「あ……」
「どうぞ」

 口に銜えたままの煙草を俺の方へすいっと近付ける君からは、眩暈のしそうな不思議な空気が溢れていて。
 酩酊に似た気分を感じながら、微かに震える指先で煙草を支えると、軽く首をかしげて顔を近付けた。


「ありがとうじゃん」
「いえ、私こそいつもありがとうございます」
「何が?」
「煙草も、それからあのケーキも…」

 別に大したことねーじゃん?と、言葉を続けた俺を見上げて、大きく瞳を見開いた君は、とても綺麗で。


「でも、あれって ひとつだけ特別仕様、なんですよね?」

 嬉しそうに頬を染めるその表情に、胸の奥が震えた。


(誰だよ…ばらしたの、)


「あの、我愛羅さんに お聞きして」
「……っ」


 照れくささと、緊張とが交錯した微妙な空気の中、2人で同時に煙草を揉み消して、藍色に染まる夜空を見上げた。



「私 自惚れても良いんですか?」
「えっ……?」


 言葉の意味を理解できずに、肩の下に並んだ綺麗な表情を見下ろすと、俺の肩に手を掛けて、少し背伸びした君。


 そっと耳元に顔を近付けて、消えそうな声で囁いた――




(カンクロウさん、次のお休みはいつですか?)
(3日後、だけど……?)
(じゃあ…その日の時間、私に下さいね)
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