Time Limit
まだ書類の整理が終わらないと言って、気になる女は細々と会社に一人残った
タクシー待ちで、道路からビルを見上げると、一角からぽつんと明かりが漏れていて
なんだか胸の奥がきゅっとなり、思わず笑みが零れた
――自分の誕生日だって忘れてんな、あいつ‥
[Time Limit]
17時を過ぎてから、人が散り散りに会社を出て行った
19時を回ったときにはもう私と奈良くんしかいなくて、二人で少し話をしながら作業を続けた
「なまえ、オレぁ帰るぜ?」
「んー‥もうちょっと、」
「手伝おうか?」
「ううん、あとすぐだから」
「そ、」
奈良くんはそう言うと、ネクタイを緩めながら私のデスクに手を置いた
パソコンを覗き込む奈良くんとの距離が近くて、綺麗な横顔に息を飲む
苦味のある煙草の匂いと、爽やかな香水の香り
私を取り巻く空気の密度が濃くなったみたいに、心地のいい眩暈がしそうだった
「だいぶ残ってんじゃねぇの?」
「あ、でも打ち込むだけだし。奈良くんまで遅くなったら悪いから」
「‥ま、なまえがそこまで言うんならお言葉に甘えますか」
「ふふっ、どうぞどうぞ」
視線を上げると、すごく穏やかに笑う奈良くんと目が合った
鋭い眼光を優しく緩め、軽くつり上がった口元が近い
はだけたシャツから覗く鎖骨がパソコンの明かりに照らされて、青白く浮き出ていた
――やだ、私ったら‥何考えてるのよ‥
「さ、てと、作業に戻りますか」
顔が赤くなるのが分かり、見られないうちにとパソコンへ目を移した
すると、くくっと喉で笑う奈良くんの声が聞こえて、私の体温はまた上昇する
「頑張りすぎんなよ、じゃあな」
奈良くんは、ぽんぽんと私の頭を静かに撫でると、柔らかい笑みのまま自分のデスクに戻った
荒れ狂うように乱れた胸は、資料に意識を向けても正常に働かなくて
それどころか思い返せば返すほど、瞼に焼き付いた情景がどんどん浮き彫りになる
ディスプレイに映った顔は、情けないほど赤く染まり、まるで交わったあとみたいな‥
「んじゃあな、お疲れさん」
「お疲れさまぁ」
奈良くんの広い背中を見送ると、仄かな淋しさが胸を擽った
静寂の戻ったオフィスは切なくなるほど広く感じ、私は頬を摩りながらデスクに向き直る
落ち着いてゆく熱に幸せを覚え、何かを忘れている気がすることだって、どうでもよくなった
「もうひと頑張りっ、と」
キーボードを叩く音だけが、甘い名残を残すオフィスに溶けていった
★
夕方まで降っていた雨も上がり、邪魔になった傘でオレはガキのように水溜まりをつついた
波紋の渡るそこに映るのは、締まりのないオレの顔
態となまえに近付いたときの、あいつの赤い顔や甘い香りが脳にこびりついて
気を緩ませれば、鼻歌さえ歌ってしまいそうになるくらい蕩けていた
調度よくやって来た流しのタクシーに手を挙げ、ドアが開くと素早く乗り込む
時計に目を移せば、ギリギリ間に合うかどうか‥
「お客さん、どちらまで?」
「ちょっと行ったところに##NAME3##って名前のケーキ屋があるんで、そこまで」
「はいよ、洒落た名前だね。彼女にプレゼントか何か?」
バックミラーで目が合った運転手は、見透かすようにニヤニヤしていて
少し気恥ずかしいものを感じつつ、まぁ、と返事をするのがやっとだった
あそこの店にはキバの彼女の##NAME2##ちゃんがいるから、無理を言えばなんとかなるだろう、なんて
だらしなく緩んだ想いは、走り去る街灯と目まぐるしく重なり、導くように流れた
Time Limit(甘い時間に二人が溶けるまで、あともう少し)
end
mims様!お誕生日おめでとうございます!!(^^)/
押し付けプレゼントを書いてみちゃいました(*^_^*)
妄想だけで書き上げた夢ですので気に入っていただけましたらお持ち帰りください!(汗)
これからももっと頑張ってまいりますので、出来のわるい妹をよろしくお願いします!
お持ち帰り&ダメ出しは、mims様のみOKです☆
ここまでお付き合いくださいましたなまえ様、ありがとうございました♪
仁さまより頂いたお誕生日祝い夢でした!!
素敵なサプライズギフトをほんっとにありがとう☆
ドキドキして嬉しくて涙出るかと思った。社会人パロ設定、本気でヤバいです…これでますます私は現代パロから逃れられなくなっちゃいそうだー(笑)
毎度のことながら文才にやられまくってぬけがら。
2008.06.03 mims