魔法の言葉


静かな教室の中、聞こえるのはチョークが黒板を走る音と、ノートをとる音だけ。



妙に眠気を誘うその音に抵抗しながら、私は斜め前の席を見つめた。



そこには、気持ち良さそうに惰眠を貪る想い人の姿。



シカマルったら、また寝てるし…



これだけ寝ててよくテストで点数取れるよね。



不思議な事に、授業中寝ていることが多いこの男に、なぜかテストで勝てた事がない。



友達のノートを借りてる様子はないし、やっぱり塾とか行ってるのかな?



…って、あのめんどくさがりが行くわけないか…



テストも近いというのに、気持ち良さそうに眠るシカマルを見ていると、私まで眠くなってきた。



教卓では、先生が何やら説明しているけど、今の私には子守唄にしか聞こえない。



この科目、苦手だから起きとかないと…



そう思うのに、瞼はどんどん重くなってくる。



まだ授業は30分もある。



…ちょっと目をつむるだけだったら…



下りてくる瞼に逆らわず、ほんの少しだけのつもりで目を閉じた。



先生の声が遠い。



あ〜…目、開けなくちゃ…


そう思った瞬間、鳴り響いたチャイムの音。



………えっ!?



ふと目を開けてみると、思い思いに休み時間を過ごすクラスメイトの姿。





「よく寝てたな。授業ならとっくに終わったぜ?」

「…マジで…?」



ニヤッと笑うシカマルの言葉に、一気に血の気が引く。



ほんのちょっとのつもりが、30分丸々眠ってしまったらしい。



もちろん、手元のノートはほぼ白いまま…



…ヤバイ…



…非っ常にヤバイ…



この教科は今日がテスト前最後の授業。



ただでさえ理解出来ていないところが多いのに、これ以上わからないところを増やしたら…



今回のテスト…赤点かなぁ…



「あ〜ぁ」



盛大に溜め息をついても、時間が戻るわけではない。



…こうなったら、いのかサクラにノート借りよう…



机に突っ伏して、赤点を逃れる為の悪あがきの算段をつけていた私の頭にパシリと何かが当たった。



「…?」



私の頭の上にはノート。



そしてそのノートを持っているのは…



「なによ、シカマル」

「どうせノートとりそこなったんだろ?」

「…だからなによ?」

「相変わらずニブイなお前。貸してやるっつってんだよ」




………は?



目の前に立ってる男は、今何て言った!?



「…あんた寝てたじゃん」

「お前が寝たのと入れ代わりで起きたからな」



改めて差し出されたノートを受け取って中を見ると、私が寝ていた部分が書かれていた。



ご丁寧に解説付きで…



「で、いらねーのか?」

「…お借りします」



今の私にとって、これ以上ありがたいものはないかもしれない。



もう一眠りするか、と席へ戻るシカマルの背中を見送って、再びノートへ視線を戻す。



よく見るとまだ新しい…



何の気無しにパラパラとページをめくっていると、ふとあることに気がついた。



このノート、今回のテスト範囲だけしか書いてない。



それに、ものすごく綺麗にわかりやすく纏めてある。



私のわからないところを見透かしているみたいに、解説も的確だし…



普段寝てばかりのシカマルがここまでマメだったなんて…



自然と口許に笑みが浮かぶ。



じゃあ、このノートは有り難く借りるとして、そろそろ次の授業の準備でもしようかな。





借りたノートを鞄にしまおうとした瞬間、ページの間からはらりと紙が落ちた。



なんだろう…?



拾い上げたその紙に書かれていた言葉…



『テスト終わるまで持ってろ。頑張れよ』



「っ!?」



ちょっ…何コレ…?



思わずシカマルを見れば、既に気持ち良さそうに夢の世界。



あいつ…もしかして、私がこの教科苦手だって事、知ってたの?



一気に心拍数が上がり、僅かに熱を持った頬に手を当てた。



落ち着け!



落ち着け、私!!



いのやサクラと勉強会やった事はあるし、シカマルといのは幼なじみだから、その繋がりで偶然知っただけかもしれないしっ!!



いのったら、喋りだすと止まらないもんね!?



必死に深呼吸して気持ちを落ち着けると、もう一度紙面の文字を目で追った。



『頑張れよ』



こんな短い一言だけで、今までやる気の起きなかったこの教科を頑張ろうって思うなんて…



やっぱり私、シカマルが好きなんだなぁ…



せっかくシカマルがノート貸してくれたんだから、赤点にならない程度に、なんてちゃっちい事言ってないで、平均点以上狙ってみよう。



生徒手帳にメモを挟んで胸ポケットにしまうと、ちょうどチャイムが鳴り響いた。



今度こそ眠らない様に、気合いを入れて教科書に向かう。



ちらっとシカマルを盗み見た時、あいつの口許が僅かに笑った気がした。



‡END‡



→Next オマケ

‡オマケ‡



「いの、ノートありがとな」

「どういたしまして。でも珍しいよねー。シカマルがノート貸してくれなんて」

「あ?別にいいだろ」

「そういえば、さっきなまえに写したノート貸してたよね」

「なっ!?」

「えっ!?チョウジ、それ本当?」

「うん。なまえ、珍しく授業中寝ちゃってたし」

「ふ〜ん…」

「…なんだよ」

「この前、なまえがこの教科が苦手って話した事、覚えてたんだー。そっかー、なまえのためか〜」

「そうみたい」

「でも、それ教えたのって前のテストの時じゃない。何で自分でノートとらなかったのよ?」

「うるせぇな…別にいいだろ…ったく、めんどくせー奴に借りちまったな…」

(授業中、あいつの視線がこっち向いてたら、集中出来るわけねーだろ…)



‡本当にEND‡


†後書き†


ついに手を出してしまった…

初NARUTO!

初シカマル夢!!

名前変換入れたのに、オマケでしか使ってないし!(爆)

初NARUTOなのに、学パロだし!!

なんてこった!!(笑)

それでも愛は込めました!!

実はこの話、『mon amour,nara』の管理人、mims様とお話させていただいているときに思い付きました(笑)

mims様の書かれる素敵なシカマルには遠く及びませんが、初シカマル夢、いつもお世話になっている御礼にmims様に(勝手に)捧げさせていただきますっ!!(迷惑?/汗)

最後になりましたが、ここまで読んで下さったなまえ様、ありがとうございました!!

†櫻輝 舞嘉†



[悠久の夢路]の櫻輝 舞嘉さまよりいただいた素敵夢でした〜〜!!

きゃーー、舞嘉さんの初シカ夢!!
ホントに頂いちゃっていいんでしょうか?!
頂いて行きますね〜〜ホント、素敵なシカマルをありがとーーー!!
これからも宜しくお願いします。
20080721 mims
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