背中 - 彩り
* 背中 - 彩り 〜Kakashi Hatake
「ただーいま」
「お帰りー・・・」
私の前を通り過ぎたとき。
ふわり、と微かに感じた。
・・・甘い、香り。
―――また、だ。
帰ってきたカカシの体から、ほんのりと甘い香りがするのは、何も今日が初めてではない。
任務だと言う彼の言葉を信じて待つことしかできない自分。
"色"と言われる男女のそういった任務もある、と聞いていたから、仕方ないことなんだと言い聞かせてはみても。
・・・でも、やはり好きな人をそういう風に疑うのは嫌だし、何より・・・惨めだ。
ふわりと香る甘い匂いに、自然と視界が歪むのが分かった。
忍服を脱いでいくカカシの背中は、言いようも無い程、綺麗だ。
女の私からみても、悔しいくらいの色気。
―――そういう任務がくるのも、頷ける、ってね・・・
その美しい背中の向こうにちらつく華やかな色に、ぐ、と心臓が苦しくなった。
「―――なまえ」
名前を呼ばれて、ハッとした。
いけない、私、泣いたりしてないよね・・・?
見ると、カカシが何故か少し眉尻を下げて私を見ていた。
「カカ・・・」
「なまえ」
名前を呼ばれて、同時に体を荒々しく抱き寄せられた。
「・・・カ」
「なまえ、俺は・・・」
私の言葉をさえぎって、ぎゅ、と力が入る腕。
「ごめん・・・なまえ・・・」
何に対してなのか。理解してしまい、視界がぼやけた。
「嫌かもしれないけど・・・もう少しこのまま・・・」
私の肩口に顔を埋めて、更に力を入れて抱きしめてくるカカシ。
「・・・カカシ、大好きよ」
彼も、私と同じ気持ちなんだと。
先程とは、少し違った涙が頬を伝った。
滑らかな背中に腕を回して、私もきつく、彼を抱きしめた。