背中 - 涙

 * 背中 - 涙 〜Shikaku Nara

 

「なまえ、傷は痛まねぇか」
「だ、大丈夫です」

憧れの人とのツーマンセルで就いた任務。
仕事は無事終えたものの、怪我を負ってしまった。

馬鹿な私。

大丈夫だと言っているのに、いいんだ、こんな時くらい甘えとけ、と笑って私を負ぶってくれたシカクさん。

 

・・・温かいなぁ・・・

頬を背中に預けると、シカクさんの匂いが分かる。

 

「・・・すまなかったな」
「え・・・?」

突然、彼が謝りだして、体を起こす。

 
「俺がついていながら、怪我をさせちまうなんて、よ」
「そ、そんな・・・」

怪我をしたのは自分の不注意のせいであって。
シカクさんには何の責任も無い。

 
「私が悪いんですから、そんな風におっしゃらないで下さい」
「でもよ・・・なまえの綺麗な脚、傷つけちまって・・・」
「大丈夫ですよ。酷くても痕が残る位ですから」

あはは、と笑うと、シカクさんも少し安心したような声になった。

「痕が残って嫁の貰い手がつかなかったら大変だからな」
「・・・」
「俺が薬調合してやるから、な」

綺麗さっぱり治してやるよ、と微笑まれて。

 

責任とって下さい、とか、あなたに貰って欲しいのに、とか。
困らせることが言えてしまえたら、少しはすっきりするのだろうか。

 

「・・・お願いしますよっ」

笑って返して、再び彼の背中に頬を寄せた。

 

無邪気に甘えるには大人になり過ぎていて、したたかに誘うには若すぎて。

 
どうにもならない、中途半端な自分と持て余した思いに、涙が滲んだ。
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