背中 - 雫

 * 背中 - 雫 〜Kiba Inuzuka

 

「くぁーっ」
「うわっ、大丈夫?」

急なにわか雨に降られてびしょ濡れになったキバ。
私の家に近かったらしく、駆け込んできた。

玄関先でふるふると頭を振って雫を飛ばす。
「はい、タオル」
「おう!サンキュー」

振り向いて微笑むその姿は、まるで子犬のよう。
くすりと笑って、私は赤丸を拭いてあげる。

 
「はい、赤丸終了ー。部屋入っておいでー。キバは・・・」

ふと視線を彼の方へ向けると。

 

ぐしょぐしょになった忍服を脱いで、タオルを肩にかけたキバの背中。

先程の子犬のような顔とは全く正反対の、逞しい背中。
まだ少し濡れているのか、つやつやと光っていて。

すごく、色っぽい。

 
―――って、やだ!私ったら。

「・・・まだ濡れてるよ」
小さく呟いて、きゅ、と背中を拭くと、おー、と気の抜けた返事を返してくる。

どきどきしてる私が変みたいじゃない・・・!

 

何故か悔しくて、ぱちん、と背中を叩いて部屋へと駆け込んだ。

 

「んだよー、なまえ!」
「別に、・・・って、きゃ!」

 
捕らえられた腕の中は―――

やっぱり、男性のそれ、で。

 

「・・・ふぇっくし!」
ドキドキしていたのも束の間、抱きついたまま派手にくしゃみをするキバに、思わず笑いが漏れてしまった。

「もう・・・お風呂沸かすから」
「うー」
くすりと笑いながら言っても、キバは私から離れようとしない。

 
「・・・・・・んな」
「え?何?」

肩口で呟く声が聞こえずに聞き返すと。

 
「だから・・・なまえも一緒に入るんだからな・・・!」
「っ・・・」

 
耳元で囁かれたその言葉は、内容も、声音も、普段の彼からは想像できないほどに甘く。

頬が熱くなるのを感じながらキバを伺い見ると。
間近にあったのは、きっと私と同じ位真っ赤な、キバの照れたような笑顔。

 

背中に少しだけ水っぽさを感じながら、

二人で顔を合わせて、笑った
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