背中 - 凛

 * 背中 - 凛 〜Zabuza Momochi

 

ふと、毛布の中に冷たい空気が入り込んできて、ゆっくりと覚醒した。

薄暗い部屋の中、ベッド脇にすっと立っている再不斬。

 
・・・ああ、いけない。もう、そんな時間。

 
まだ夜が明けきらない、薄暗い時間。
部屋の中はもちろん、外からも一切の音は無く、ただ静けさの中に再不斬が発する衣擦れの音だけが響く。

そんな静寂の中に浮かぶ彼の背中は、とても美しく。
暗闇の中でも、その浅黒い肌は同化することなく、はっきりとそこに在る。

―――意思の強さが、こんな所にまで出ているのかしら

そんな、取り留めの無い事を考えながら、彼の綺麗な背中を見つめるのが密かな楽しみだなんて。
きっと彼は知らないだろうな。

 

「再不斬・・・」
「・・・起こしたか?」
悪ぃ、とぽつりと謝る。

 
およそ人を気遣うとは思えない強面の彼が、私にはちゃんと心を砕いてくれること。
人の気配に敏感な彼が、背後の人間の気配に気づかない訳が無いのに、私に関しては例外であること。

そういったちょっとした事に、彼の私に対しての想いが感じられて、ひどく嬉しくなる。

 
「ううん、大丈夫」

そう言って微笑めば、ゆるりと目元を細めて笑う再不斬。
また、背を向けて身支度を始める。

 
―――綺麗な、背中だな・・・

ぼんやりと見つめていると、思わず手を伸ばして触れたくなる。
でも、容易くは触れることを拒絶するような、潔い、そんな体。

そんな綺麗な背中に、うっすらと自分の付けた痕を見て、嬉しいような恥ずかしいような、勿体無いような。
そんなこそばゆい気持ちに、ふと襲われた。

 

私もゆっくりと起き上がると、気づいた再不斬が私を制した。

「なまえ。お前はまだ寝てろ」
「いいの。・・・見送らせて?」

勝手にしろ、と呟く彼に微笑んだ。

 

あなたを見送る前に、もう一度だけ。

その体に包まれたいの。

 

そう言って背中に頬を寄せた。

ゆるりと、彼が笑ったような、そんな気がした。

 

 

++++++++++++++++++++
ザブ誕、終幕。

2008.08.30
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