愛の詰め合わせ

高音の時計が鳴り出す前には、目が覚めた。

まだ完全には覚めない頭、窓の隙間から入る光に目がチカチカする。

上半身をベッドから起こすと、柔らかい掛け布団に顔だけ伏せた。

まだ寝たい、そんな気持ちだからかウトウトする。

もう少しで寝そうなその時、低いかすれた声が静かに耳の奥まで聞こえた。


「なまえ‥‥朝飯作らねぇの?」

「‥おはよ。今から作るから待ってて」


(作らねぇの?)これは催促に違いない‥早く作れと?


大きく背伸びをした同時に大きな欠伸。

どうしてかな、今日は凄く眠たい。



台所まで歩いて、冷蔵庫を覗いた。

朝ご飯を作る材料は揃っているけど、どうしても作る気にはなれない。

ごめんシカマル、今日だけゆで卵にする。

かたゆでにはしない、半熟にするから。

卵を鍋に入れて、水を入れておしまい。

後は時間だけを気にしてれば問題は無し。


「シカマルー、もう起きてよ」



少し大きめの声で呼ぶと「へいへい」と、小さく聞こえた。











テーブルに座って、飲みかけで置いてあったブラックコーヒーを一口飲むと、苦味が口内で広がった。


そう言えば、今日は久しぶりに夢を見たなぁ。


あまり嬉しくない内容の夢、不快感で心が覆われて行くのが分かってしまう夢。


誰も通らない道に並んで歩いている二人。


後ろ姿しか見えなかったけど、確信が持てるくらい誰か分かった。

テマリとシカマルが肩をぴったりくっつけて歩いている。


ただそれを遠くから眺めることしか出来なくて。

足は鉛のように重く、近寄ることすら出来なくて。


何であんな夢を見たんだろう

たぶんこの恋に不安が芽生え始めているから?

本気で私のこと、愛しているのか疑ってしまったり、もう少し愛情欲しいとか欲が出て来ちゃって。


慣れてしまうと欲が出る。


優しさも愛情も充分ぐらい貰ってるのにね。



「おい、沸騰してんぞ。」

「あ!本当だ!」



鍋を見ると沸騰してお湯が溢れかけている。


急いで火を止めて、バクバクした胸を撫で下ろした。

今日の私、なんか変。



「今日はゆで卵かよ‥」

「なんかめんどくさくって。ごめんね。」


「半熟なら別にいいけどよ。体調悪いのか?」


少し心配したような顔で見つめるシカマルに、体がピクリと動いた、微かに。


「寝不足だと思う」


そう簡潔に言うと、お湯を捨ててまだ熱い卵を手の平で転がしながら剥く。


「大丈夫か?」

「大丈夫!」


くるっとシカマルに体を向けて歯が見える笑顔を見せて。

剥けた卵も差し出して。


「かたゆでになってる」

「あー‥ごめん。作り直す?」

「食えねーわけじゃねぇからいい。」


一口食べると苦い顔


「やっぱり無理なら作り直すよ?」

「いや‥大丈夫なんだけどよ」


シカマルは何かを言いかけて軽く俯いた。


「なに?」




「愛情がまったく入ってねぇ」



それを聞いて私は顔は薄い笑い、心は大爆笑。

言ってくれた言葉が可愛くて、ぎゅうっと抱き締めたくなる。


「ごめん、愛情入れるの忘れた」

「今度からはしっかり入れろよ」

「わかったわかった」


お互いに顔をほんのりピンクにして笑った。


「夢見たんだけど」

シカマルがテマリと並ぶ夢を見たの。


そう言うとあっさり返ってきた返事は私が求めていた返事そのもので。


「ありえねぇな」

「よかった」

「ま、愛してるのはなまえだけだからよ」


口に出して言われたのは久しぶりで、かああっと顔や耳の体温が上がってくのが分かる。


恥ずかしくて、瞬きをするのを忘れた。


「顔が真っ赤だぜ?」

「‥うっさい。」


芽生えていた不安など、枯れちゃったわよ。
私ってゲンキンなのかもしれない。


「こっち来い」


傍に寄ったらキスをされるのは分かっていた。

だからゆっくり足を進め、愛を貰いに近付いて。


唇が重なるまであと、3歩 ―――――‥


私はとっくの昔に夢のことは忘れていた。



fin.





→あとがき









みむちゃん、サイト一歳おめでとう!!
と言うことで、捧げ夢です。

小さな幸せをテーマに書いたつもりが、意味が分からない夢に(苦笑)

みむちゃんのみ、お持ち帰りOKです。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

11/5 up



[waltz]のRukaさまより頂いた、一周年祝い夢です!!

愛情が入ってない…うふふ。
何だかあの会話を思い出しちゃった。

テマリさんにどうしても本気で嫉妬しちゃうのは、やっぱり「愛」なんだろうなぁ。

胸がきゅっとする素敵な夢を、本当にありがとね☆
大事に飾らせて頂きます!!
2008.11.05 mims
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