ごめんね。いいよ。
まいったな。
怒ってるかな・・
夜、凍えるような寒さを堪えて道を歩く。
隊長不在だから、僕が三番隊をしっかりまとめないといけない。
それに、執務もこなさないと。
(まぁそれは、市丸隊長が居た時となんら変わらないけれど)
精神的に、ちょっとね。
「はぁ・・」
でも今日、いつもより気が重いのはなまえとの約束が果たせなかったからだろうな。
『今日は会えるよ。』
昼にそう伝えた時、阿散井君や檜佐木さんに冷かされながらもうれしそうに笑ってたなまえがまだ頭から離れない。
そしてそんな素直に喜んでくれるなまえに、元気を分けてもらったのにな・・。
僕は、ダメなヤツだ。
隊士たちの揉め事処理にこんなに時間を食うなんて。
副隊長失格。
それに・・なまえの彼氏としても、失格。
見上げた月はいつもより輝いて、まるで「俺はお前より優れてる」と言われたような気分になった。
書類を九番隊の夜勤隊員に預け、ご苦労様。と声をかける。
大変なのは、ここも同じだ。
僕が不幸を全て背負った様な顔してるから、隊士たちも争いごとを起すのかもしれない。
檜佐木さんを見てみろよ。
僕の何倍も、隊士たちに尊敬されてる。
頼りになる副隊長 檜佐木修兵
頼りない副隊長 吉良イヅル
霊術院に一発で主席合格したからって檜佐木さんより優れてるって訳じゃないんだ。
(彼は何回か入学試験に落ちてるからな。)
自己嫌悪はぐるぐると
渦を巻いて
大きくなる
もう、なまえとの約束から4時間も過ぎてるし。
絶対怒ってる。
どうしようか・・もう要らないなんて言われたら。
もう、彼氏失格だなんて言われたら・・・。
夜道を歩く僕に合う擬音はきっと
とぼとぼ だろうな。
立ち止まって、もう一度月を見ると雲がかかっていて、
「お前なんて見てられない」と言われてる気分になった。
とぼとぼ、とぼとぼ。
十番隊舎の敷地内
なまえの部屋はすぐそこだ。
その部屋から漏れている灯り。
まだ、なまえ起きてるのかな・・
謝らないと、その一心で扉の前に立った。
「なまえ・・?」
なんて陰気な声を出すんだ僕は。
そんな事を考えて、また自己嫌悪の渦に引き込まれそうになる。
俯いた視線の先、扉がゆっくりと開いた。
「イヅ・・ル」
「ご、ごめん。」
約束守れなくて
「イヅル・・」
「ごめん・・・」
頼りない副隊長で
「ねぇ・・」
「本当にごめん。」
こんな僕で・・
3回目の「ごめん」の後、なまえが話すのを止めて僕の不安は最高潮になった。
おそるおそる、顔を上げてみるとなまえの顔。
部屋の薄暗い灯りが照らすその顔は、やっぱり僕には必要なもの。
別れるなんて、言わないで・・。
「なまえ・・ごめ」
「おかえりなさい。お仕事、お疲れ様。」
降って来たのは想像もしなかった柔らかくて、優しい言葉。
そしてなまえの笑顔。
「え・・」
「さ、入って?暖かいから・・ね?」
僕のうしろに回り込んで、背中を押してくれる手が・・暖かくて、ぐるぐるしてた自己嫌悪の渦が
小さくなった。
「なまえ、ごめんね。」
「うん・・いいよ。」
こうして来てくれたから。
背中の向こうで聞えるその声に、視界がちょっと霞んだ。
霞んで、目から溢れる水が心の中も掃除する。
ごめんね。
そしてありがとう。
やっぱり君の存在が、
僕の心を落ち着かせる
唯一の光なんだ。
END
(なまえ、本当にごめんね。)
(4回、キスしてくれたら許すよ。)
(な・・なんで4回?)
(遅刻、4時間だからね・・ほら、はやく・・)
(・・・)
(クスクス・・イヅルの顔、真っ赤だよ?)
その君の笑顔で、この世界も捨てたものじゃないと感じる僕は、やっぱり単純で
頼りなく流されるダメなヤツだ。
[
愛だらけ]メグミさまに頂いたイヅル夢でした〜!!
イヅル…ヘタレなあなたが好き。メグミンいつもありがとね☆有難く頂きました
2008.12.15 mims