おろかなひめごと

今日は(遅くても)22時に退社しようと計画していたのに仕事は山ほどあって、腕時計はいつの間にか0時をまわっていた。



暖房が効いてる筈のフロアがふと寒く感じるのは、心が冷えてしまっているからだろうか。
(まぁそろそろ暖房も切れちゃう時間だけど)



どれだけ忙しくても家に帰ってシンジとまったりすれば心がじんわりと温まる。なのに今週の殺人的スケジュールは、そんな癒しの時間をもあたしから取り上げる程の物だった。
(だった。と言っても明日も仕事。)



残っている集中力を総動員してどうしても仕上げたかった書類を完成させ、ラップトップの電源を落とし、カバンに持ち帰ってチェックする書類を詰め込んだ。




もう一人残っている同僚に投げかけた“お先に”の言葉、彼には聞こえただろうか…







そんな仕事モードもエレベーターから降り夜間通用口を出ると、自然と薄れて。




頭に浮かんだのはシンジの顔。
(もう寝てるかなぁ。)



自然と緩む顔と早まる足、心はもうシンジのすぐ隣に居る気分になっている。


早く帰ろ…


カツカツと自分の歩く音がいつもより大きく聞こえるのは、時間のせいだろうか。



ふと目をやったオフィスの近くにある24時間営業ファーストフード店の中。



明るすぎる電気を道路に漏らすガラスの壁をコツコツと叩く、




「シン…ジ?」




あたしが家路を急いでいる理由と目が合った。




「ちょ、何してるの?」



「何してる…ってお前待ってたんや。」



「え、家で待っててくれればよかったのに。」




「せっかく迎えに来てやってんから喜べよ・・・それとも、イヤやったか?」




「う、嬉しいけど。」

シンジも疲れてるでしょ?




彼が差し出してくれたコーヒーを受け取る時にふわっと手が触れ合って、それだけで心が温まりだす。



「嬉しかったんやったら素直にありがとうって言うといたらエエねん。」



あたしを見下ろすシンジの目、髪をくしゃっとする手も優しくて



「ありがと。」


「おう。」



こんな事する恋人に素直になれない女の子、居ないと思う。
(ツンデレじゃない限りは。)



「ほな、帰ろか。」


「うん。」





なんだか照れくさくなって、ニヤケた顔を隠す様に差し出された腕に飛びついた。



「今日、また仕事持って帰って来たんか?」


「少しだけね。」


「んじゃ俺が飯、なんか作ったるわ。」



「いいの?」



「その方がはかどるやろ。」

家出る前に風呂も沸かしといたし、すぐ入れるで。



至れり尽くせりやろ?
そう言って笑うシンジにつられてあたしも笑顔になる。

(あったかい人だなぁ。)


「ありがとう。」




「はぁー・・・そんな顔すんのやめてくれるかー・・・」




「え?」





「お前が悪いわ、こんな冷たい手しとったら身体も冷えてるんちゃうかーとか…」

どうせやったら壊したろかな・・とか思てまう…




「シンジ?」





「我慢しよと思とったんやけどな・・・」





ぼそぼそと紡がれた答えが聞き取れずに首を傾げると、軽いため息の後でシンジの顔が近づいて。













「早く切り上げれる様に協力して、その後イチャイチャしたいってゆう願望が抑えられへん様になってしもた。ってゆうてんねん。」





「シン…」



視界が真っ暗になり、軽く唇が触れ合った。







「よっしゃ、はよ帰ろ!!!」





END.


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ひっそり…みむちゃんお仕事お疲れ様捧げ。


2009.02.28 megumi

Title*クロエ(Thanks)

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愛だらけのメグミンに頂いた平子。仕事でへろへろの最中に読んで、めちゃめちゃ癒されたよ
妄想も吐き出せず、夢を読む余裕もないここ数日の疲れが、一気に吹っ飛んだ〜!!
メグミン愛!
お読み下さったご感想は、ぜひメグミさまへ直接!!
2009.02.28 mims
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