01.褐色の水面に火傷
住居を共に寝室も共にするようになってから数ヶ月。
全ての事を知り尽くしたとまでは言わないけど、ある程度お互いの人格を理解していると……少なくとも私はそう思ってる。
だけどまだ見ぬ"彼"というパズルピースはいくつも散らばっていて、小さな新しい発見を見つけてはまたピースを嵌めて。
きっと完全なる完成なんてありえないそのパズルを少しずつ埋めて行く事が、なんて事ない幸せって言うんじゃないかな……って。
そんな風に思えた貴方と過ごす日々と空間が、愛おしくてしょうがないのよ。
褐色の水面に火傷ふあぁ…、まだ寝ていたいと主張する欠伸を噛み殺して、隣で眠る彼を起こさぬように気をつけながらも、おぼつかない足どりでバスルームに向かう。
少し熱めのシャワーを頭から浴びれば、靄がかかった脳内もいくらかクリアになって。
年中睡眠不足の私は毎朝こうして体と脳を強制的に覚醒させてやらなければ、きっとお昼頃まで泥のように眠ってしまうんだろう。
(無理すんなって、何度言えばわかんだよ……)
毎日少し呆れ混じりで、でも不機嫌さを表す眉間の皺を深くさせるシカマルには申し訳ないな…とは思うのだけど。
ハードで因果な職に魅力とやり甲斐を見出だしてしまった私の負けとでも言うのか。
結局仕事漬けの毎日を送る私に最終的にはシカマルも「辛かったらすぐ言えよ」と苦笑いを浮かべていたっけ。
けれどキュッと渇いた音を響かせ蛇口を閉めて、少し湯気で曇った鏡にもしっかり写る目の下の隈には流石に脳裏に浮かぶ彼と同じように苦笑いするしかなかった。
ふわふわのバスタイムで濡れた髪を包んで、ちらりと時計を見ればそろそろシカマルも起こさなきゃいけない時間なのだけど…、
物音に敏感な彼は黙っていてもそろそろ起きてくると思う。
バスルームから僅かに聞こえる水音が目覚まし時計代わりだと、一緒に住み始めて暫くした頃に笑って話していたから。
彼が起きてくるまでの僅かなロスタイムの間に、「同棲記念よ」と同僚がプレゼントしてくれたコーヒーメーカーをセット。
朝一は少し薄めで。
本当は濃いめにドリップしたいけど、知らず知らずのうちに彼の好み合わせてしまう自分が少し可笑しくて、くすりと穏やかな笑みが込み上げて来るのを抑えていると
キィと寝室のドアが開き、まだ縛り上げていない黒髪をゆるく揺らして、少しだけ眠そうなシカマルがリビングに入って来た。
「おはよう、シカマル」
「……はよ」
寝起きは少し幼く見えると知ったのも、つい最近。
いつもは年下とは思えない程に凛とした彼のこんな顔を間近で見れるのは私だけなんだと思うと自然と頬が緩んでしまう。
「―――、なに?」
「ううん、寝起きのシカマルはなんだか可愛いなっ…てね」
私の視線に気付いたシカマルの問い掛けにありのままの本音で答えれば、眉間には僅かに皺が刻まれて微かに聞こえるのは小さなため息の音。
はいはい、どうせ男に可愛いは褒め言葉じゃねえよって言いたいんでしょう?と眉を下げれば
「わかってんなら言うなって…」
そう言って少しふて腐れる仕種がまた可愛いだなんて思ったけれど、きっと益々眉間の皺が深くなるだけだから言えないけどね。
起きたばかりだというのにさらりと新聞に目を通す彼の横顔は相変わらず端正で、思わず見惚れたまま時間が過ぎてしまえばいいとさえ思ってしまうほど。
だけどその時間が割けるほどシカマルと私は余裕がある仕事じゃないわけで…。
「はい、シカマルもコーヒー飲むでしょう?」
「ああ、サンキュ…」
名残惜しさを隠してドリップしたてのコーヒーを差し出したのに、微かに触れ合う指先が愛しくて。
もっと触れたいと疼く本音をごまかすのは楽じゃないけど、そろそろ支度をしないと本気で遅刻してしまう。
少し淋しさを感じながら自分用のコーヒーをカップに注ぎながら、もう一度だけ……と。
ちらり、と視界にシカマルを捕らえた私は―――――
思わず、
吹き出してしまった。
視界を捕らえた、彼の端正に整った横顔はなんの変哲もない見慣れた朝の光景なのだけど。
マグカップに少しだけ涙目で吐息を吹き掛けるその姿は。
ほら…、また一つ
君といういくつも散らばるピースが、カチリと温かい音色で幸せな日常というパズルを仕上げていく。
褐色の水面に火傷ふっ……あはは
シカマル、猫舌だったのね
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*親愛なるmims様へ捧げる相互記念シカマルSS。
猫舌なシカマルがリビングにいたら…………悶え死ぬかもしれないっていう妄想より。
ものすごくくだらない話で申し訳ありませんっ(_ _;)
でもでもみむちゃんならきっと猫舌のシカマルに悶えてくれると……(つまり押し付け 笑)
このような作品しか生み出せなくてごめんねっ!!
こんな私ですがこれからも末永くよろしくお願い致します。
20090307
宰華
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Carla]の宰華さまよりいただいた、お祝い夢でした。
宰ちゃん(>_<。)深夜に読んでしまったからか、シカが愛おしくて仕方無かったよ〜
リアルさ加減が堪らないっっ!!
ホントに素敵なお祝いをありがとね〜vv
感想は是非、宰華さまへ直接どうぞ。
2009.03.10 mims