君だけの僕になる
潮風に揺れる絹のような金髪と紫煙。
それから黒いスーツと革靴にひと癖ある眉毛。
料理に込める熱意とは逆に冷静な判断力。
女性に目がないところも、真っ直ぐに決して曲げられる事のない騎士道。
それが全てではないけれど、私はサンジくんのそんなトコロに惹かれている。
「サンジ、くん……」
下らなくて醜い嫉妬だと解っていてもやっぱり私に構ってほしくて。
朝から料理、おやつ、ケンカ、料理……忙しいというよりも、自分のやりたい事だと思っているからあんなに楽しそうなんだ(だから余計に声をかけづらい)。
始めは、そんなサンジくんの楽しそうな顔を眺めてるだけで、私も幸せな気持ちになってた。
でも足を怪我して動けない私は、キッチンのイスに座ってるしかなくて(じゃないとチョッパーに怒られる)。
サンジくんがキッチンを離れると、当然一人になるからとてつもないくらい淋しい。
たまに声をかけてくれるけど、なんだか今日はご機嫌が良くないらしく無口だ。
淋しい、を通り越して悲しくなる程に(目も合わせてくれないんだもん)。
私なにかしたかな、怒らせるような事したかなって、ずっと頭を抱えてる。
もう夕日が沈みかけだ。
誰もいないキッチンで名前を読んでみても、返事がかえってくるはずもなく。
ただただ虚しい気持ちが募るだけ。
はぁ……
雫した嘆きは、思ったよりも深かった。
***
指通りのいい焦茶色の髪、薄いピンク色した唇。
本を捲る指と、白い肌がはえる茶色の眼鏡。
おれを見つめる時の優しい笑みから傷付いた仲間を思う悲し気な顔も。
全部ぜんぶ、それがなまえちゃんであり。
そんななまえちゃんに、終りがみえない程溢れる愛情(愛情の一言で済ませるのは不可能だけど)。
そんななまえちゃんに、怪我をさせてしまったのはおれの不注意だ。
彼女はもともと花屋さんだったから、戦う術を持っていない。
だからおれが守らないといけなかったのに。
女の子だから怪我の痕が残ってしまうのは嫌だろう。
守れなかった自分の間抜けさと、怪我をさせてしまった申し訳なさで、今日はまともになまえちゃんの顔をみれていない(話しかけさえしてないんじゃないか)。
はぁ………
ガラにもなく考え過ぎだな、多分。
***
夕食も食べ終わり、皆それぞれ好きな事をする為にキッチンを出て行って、私とサンジくんの2人きり。
思いが通じ合っている仲なだけに、今の沈黙と緊張感は肌にじんじんと伝わってきて痛い程だ。
「あの、さ……」
サンジくんの小さな吐息に似た声は、微かに震えているよう。
「な、に…?」
自分も声が震えている。
こういう何とも言えない空気が漂っている時、話し掛けられると嫌な事を言われる気がしてどきどきしてしまう。
やっぱり怒らせたのかも、って思って気持ちが沈んでしまう。
「なまえちゃんの事、避けたみたいになっちまって悪かったな」
「私こそ、なんか怒らせたみたいで……ゴメン」
「っ……なまえちゃんは悪くねぇさ。ただ、」
怪我させちまって……
気にすることないのに。私が強くならなくちゃいけないのに。
花屋だった私は、当たり前だけど戦う術を知らなくて。
それでも良いと、皆は言ってくれた。その言葉に甘えて何も努力をしようとしなかった私のせいなのに。
だけど…そうやって気にしてくれるだけで、私は十分うれしいよ。
「痕、残るかも知れないんだろ?」
「ん。でも気にしないから……大丈夫だよ?」
だからそんなに悲しそうな目をしないで。
優しすぎだよ…(そこも愛しくなるけれど)。
「じゃあ……痕が残った時は、おれに責任をとらせてくれねぇか?」
どういう、意味だろう…。サンジくんの言いたい事がよく分からなくて、詳しく聞きかえそうと見上げると、少し笑った顔。
少し、何かを企んだ様な。
それから耳元で一言。
君だけの僕になる
(我が儘、いっぱい聞かせてくれよ)
(恥ずかしさなんて忘れる程、幸せだ)
400踏んで下さったみむ姐に捧げます!!
萌えかどうかは分かりませんが、貰って下さい。
というか押し付けます←
こんなsky.ですが、これからもどうぞよろしくお願いしますm(__)m
[
if you]のsky.ちゃんより頂いた、キリリクサンジ夢でした!!
えへへ、怪我ネタとか大好物だったりするmimsです。しかも思い合っているのに微妙にすれ違うふたりなんて、もうこのむず痒いまでの切なさが堪らないっ!!
sky.ちゃん、ありがとww
感想は是非、sky.さまへ直接どうぞ☆
2009.03.18 mims