Make me say,too

Make me say,too






大体なんで俺がアイツの代わりなんかしてやらなきゃならねぇんだ。

惚れた弱味っつうか、にっこり言われて頷いた俺が悪ぃんだけど。


「だからね、ゲンマ代わりに行ってきて」
イルカ先生には話し通してあるから。

だと?

さすがに頬がヒクリとなったのが自分でもわかったが、あいつの方が上手だったのか、

「今夜はゲンマんち行くからね」

と、間を置かずに継がれた言葉につい受けちまった。




§




「・・・で、わざわざ俺に行かせるような“大事な用事”って何だったのか教えてもらおうか?シカマル」


書庫に入る姿を追って、こちらに気付いたシカマルが口を開くより先に問えば、薄く眉間に皺がよった。


「あ・・・すんませんでした」

「終わっちまった事だから謝んな。俺は理由を知りたいだけ」


ゆらゆらと動く千本を見ていたシカマルは小さなため息を落とし、巻物に手を伸ばす。


「・・・里外でないからいいって言ったんすけどね」
ましてアカデミーでの講義なら、内勤より早く上がれるじゃないっすか。

「急な任務でも入らない限りな」


内勤の書類をライドウとアオバに押し付けてアカデミーに行った日は、定時で上がることが出来た。

でも、あいつはそれすらも駄目だと判断したから俺を代わりに行かせて、シカマルに非番を与えたのだ。明確な理由がなきゃ納得できねぇだろ。


「こっちもイルカには頼まれてたから、早ぇか遅ぇかの違いだっただけどな」
でも、暗号解析の講義はお前がやれよ。

「わかってます」


そう応えたシカマルに、まだ話は終わってねぇよ、と先を促す。


「・・・忍やってりゃ、何かの日に一緒にいられるなんて無理じゃないっすか」


確かに、任務が絡めば何かの記念日はおろか正月だってすっ飛んで行く。長期任務の間に恋人の心変わりも珍しい話じゃない。忍である以上、そういうモノだと諦めにも似た思いがあるのは仕方がない。


「偶々、あいつが非番だったんっすよ」

「なまえちゃんが?」


シカマルは敢えて返事をしない。返答がないのが肯定なのだろう。



シカマルがここまで言葉を濁すには、何か理由があるだろうとは思っていた。

照れたように顔を逸らすシカマルの横顔の向こうに、柔らかく笑うシカマルの彼女の顔が浮かぶ。


見かけによらず頑固で真っ直ぐな性質は、融通が利かないと言う奴らもいるだろう。でも、それはあくまでも彼女の一面で、任務を離れれば結構な天然振り。そのギャップが可愛いのよ、とあいつが言っていたのを思い出す。里一の頭脳と言われ、五代目からも目を掛けられている目の前のこいつもきっとそうなんだろうが。



書棚に預けていた体を起こせば、シカマルがゆっくりと頭を下げる。

「ほんと、すんませんでした」

「構わねぇって」
もう済んだことだし。

幸い今のシカマルの様子だと、俺があいつに嵌められた、とは気付いていなさそうだ。




そんだけ大事な日だった、ってことか。




書庫の扉に手をかけて振り返る。普段やる気がなさそうで、めんどくせぇが口癖の男とは別人の“男”の顔がそこにあった。


こいつも彼女が絡めばこんな顔しやがるんだ、と思わず笑みが浮かぶ。


軽く頭を下げた姿を最後に見て、静かに扉を閉めた。




§




書類を抱えて早足で歩く後姿を見つけ態と気配と経って近づく。


「なまえちゃん」


予想以上に大きく肩が揺れ、見開かれた瞳がゆるく孤を描く。


「ゲンマさん」
どうかされたんですか?気配経って近づくなんて。

忍として気配に気付かないなんて恥ずかしいという言い方はしない彼女。こういう所は天然なのか、それとも自分に対しては気を許している表れなのか。自惚れでなく、後者なのは彼女の微笑でわかること。


「大した事じゃねぇけど」


言葉を切れば、小さく小首を傾げその動きに併せてさらりと髪が流れ落ちる。視線を動かし彼女の視線がそれを追うように動いた瞬間を見過ごさず、距離を縮める。


「なまえちゃん、誕生日おめでとう」
遅くなったけどな。


耳元で甘く囁けば、見る見る内に紅く染まって行く顔。




こんな顔、シカマル以外に見せたらあいつ怒るんじゃねぇの?




耳まで紅く染めた彼女の背を押すように歩みを促せば、眉を顰めたシカマルの顔が浮かんで自然と口元が上がった。



「誕生日おめでとう」



些細な言葉だけど、俺にも言わせろよ。そんくらいはいいだろ?








06.JUN.2009
あわわ、3日も遅くなってしまいました。ごめん、ごめんなさい。
しかもシカマルでは書けなくて、ゲンマになってしまいました。
許して〜(涙
お誕生日おめでとう!これからもらびゅー♪


カイさんに頂いたお誕生日プレゼント。ぎゃはあああぁぁ、ゲンマさんにちゃん付けで呼ばれちゃったらヤバいんです。でもシカマルの彼女ってのがもっとヤバイ!!!!!というか、ゲンマさんの口から語られるシカマルの姿がヤバいのか!?
カイさんのお話しに流れるやわらかくて、なのに背筋が伸びてしまうような独特の空気感が大好きです。シカマルはもっと好きです(バカ)
今年も1年間シカマル愛を貫きたいと思いますので、どうぞよろしく
2009.06.09 mims
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