HAPPY HAPPY BIRTHDAY!

なんだか、心地の良い夜だった。
月は丸くて、雲もない。風は肌を優しくなでるだけだったし、ささやかな波の音だけが、俺の鼓膜を占領している。

クルー達が食い荒らした片付けを終えた俺は、いつものように甲板で一服してから寝るつもりだった。
しかし煙草はもう三本目が終わろうとしているのに、寝る体勢にはなかなかなれない。いろいろと考え込めば、いつの間にか日付が変わっていたのにも気が付かなかった。

ふと、キッチンの隅に洗い忘れて置きっぱなしになっているかわいい彼女のコーヒーカップのことを思い出し、それを洗うために月夜に別れを告げてキッチンへと戻った。


甲板に出る前に、キッチンの明かりは消したつもりでいた。
いや、確かに消したはずだった。しかし、そこには実際明かりがある。誰かが起きでもしたのだろうか。疑問と一緒に、キッチンの奥へ脚を進めた。

「サンジくん」

本人お気に入りのコーヒーカップを持った彼女の姿があった。カップの中にはまだコーヒーは無く、手元には、今から注がれるであろうコーヒーが握られている。

明日(日付が変わったから今日なんだけれども)は彼女の誕生日。
彼女は最近忙しそうにしているから、きっと自分の誕生日なんてすっかり忘れているに違いない。

日付が変わり、夜に会った俺は、一番最初に「誕生日おめでとう」を言える権利を持ったわけだ。(密かに彼女に思いを寄せているゾロには悪いが、先手必勝だ)

ルフィが宴をやると張り切っていたのは、まだルフィが酔う前の話。

「こんな遅くにどうしましたか、プリンセス」

彼女に近づきカップとコーヒーをさらりと取ると、申し訳なさそうに彼女はありがとうと囁いた。
ふわりと香る、彼女の甘い匂いに本能を擽られる。

椅子に優雅に腰掛けた彼女に、慣れた手つきでコーヒーの入ったカップを差し出す。

両手で冷ましながら飲む様が、抱きしめたいくらいかわいい。

「サンジくん」

「なんでしょうか?プリンセス」

「そんなに、見られると恥ずかしい」

顔を赤らめているのは、コーヒーが熱めなせいなのだろうか。俺のせいなのだろうか。困ったような顔もかわいい。

いつものみんなを見守るような優しい笑顔も大好きだが、ふわりと俺だけに微笑むこの瞬間が、この雰囲気がたまらない。

「これは失礼。あまりにも美しいので」

「ふふっ素敵なお世辞」

時に笑顔を壊したくなるほど愛しさが溢れてしまうけれど、それ以上に、その完璧なほどの笑顔を守りたい気持ちが大きくて。

「欲しいもの、ある?」

プレゼントは、一応用意はしていたが、自信がないのを確信に近づけたいために問う。

「いきなりどうしたの?」

サンジくんが欲しい、てのは期待しすぎか。しすぎだ。

この反応を見る限りでは、確実に誕生日というのを忘れている。確かに、海に時間はないが、時には必要になることだってある。

「とりあえず、何が欲しい?」

「今?」

「そう」

悩む時には、決まって眉間に微かなシワを寄せる。
そんな仕草ひとつでも優雅なんて。彼女はきっと、人じゃなく、天使か何かなんだろうと時々思う(女性はみんな天使だろうけど、彼女は特別。女神かも知れない)。

「あまーいものかな?でも太っちゃうね、こんな遅くに」

ケーキはもちろん、用意が整ってる。それは明日のお楽しみだ。

コーヒーは、彼女好みの甘さにしておいたから、申し分ないはず(自分で言うのも何だが)。

「では、軽めのカプチーノでもいかがですか」

「カプチーノいただきます」

空になったカップを受け取ると、手早く、かつ充分なタイミングをもってして、カプチーノを差し出した。

生クリームには文字を入れた。もちろん、I LOVE YOU。

「俺の、本気の気持ちだから」

コトリとテーブルに置いたカプチーノのカップ。
正直、これは賭けでもあった。ちょっと他人から心の察しずらい、いわゆる不思議な雰囲気の彼女。
彼女の俺に対する気持ちが分からないままのこのささやかな告白は、失敗か成功かの緊張の瞬間だ。

「うれしい」

彼女の優しい瞳が、半月形に曲がり、俺を映した。

「サンジくんのこと、前からずっと好きなの」

まさか、いや確かに嬉しいが、誰にでも分け隔てなく接する彼女が、特定の誰かに恋愛感情を持つなんて思わなかった。(あわよくば俺に、なんて願ってはいたが)

「うそ、だろ」

大見得を切ったのは自分のくせに、いざ望んだ言葉が返ってくると、驚きと戸惑いと嬉しさが交差して言葉が喉に詰まる。

「ホント」

あまりの驚きに、立ち尽くす俺。立ち上がり、それに歩み寄る彼女。

「すき」

到底丈の足りない、彼女の身長。襟を掴まれ、寄せられる、何度も欲しくなった唇。

一瞬だけ触れた唇は、ほろ苦いコーヒーの香りがした。

唇が離れてから、自分を取り戻しかけた俺が言った言葉は、彼女が一年ぶりに迎えた誕生日の祝いの言葉。

「誕生日、おめで、とう」

「ありがとう」

壊してしまいそうで怖かったダムは、ごく自然に決壊して、溢れんばかりの愛が零れ落ちた。

彼女の笑顔が眩しい。愛しい。




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mims様!
お誕生日おめでとうございます!

駄文すみません…もしよければ
もらってやってください…
このわけのわからない
サンジくんを(ノ_-)

これからも頑張ってください(^^)

雅綺より


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雅綺さまより頂いたお誕生日祝いでした!!!
雅綺さんんん!!サンジくんにこんな風にスマートにお祝いされたら、他にはなにもいらないデス!本気でww
素敵なお祝いをありがとうございました★
2009.06.17 mims
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