親父とオレ

ヨシノ「シカマル、お父さん呼んできてくれない?今、酒酒屋で飲んでるハズだから!!」

シカ「ほっときゃ、その内帰ってくんだろ?それにオレ、明日任務…」

ヨシノ「つべこべ言わず、さっさと呼んできなさい!!」

何でオレが行かなきゃなんねーんだよ…。
しかも命令形。
だからって、かーちゃんに逆らうとおっかねぇからなぁ…。





ガラガラっと音を立てて店の扉を開くと、イノの親父さん、チョウジの親父さん、そして親父と親父の手に顔を鷲掴みされている女がいた。


シカ「親父…、ナニやってんだ?それ?」

親父に顔全体を掴まれ、身動きできない女を指差し、思いっきり眉間に皺を寄せる。

シカク「これか?酔っ払いに襲われそうになったからな、身を守ってんだ」

は?
意味分かんねぇし…。

なまえ「シカクさ〜ん、ひどいです…」

シカク「なまえ、そうゆうのはな、オレじゃないヤツにしろよ…」

そう言って、手を離すと、頬を赤く染め、目をトロンとさせた女の顔が見えた。


シカク「シカマルよぉ、オマエも飲みに来たのか?」

自分の息子の歳ぐれぇ知ってんよな?
オレは未成年だ!!

シカ「かーちゃんが呼んでこいってよ。めんどくせー事させんなよ、親父…」

なまえ「フエッ?」

ポケーと座ってたなまえと呼ばれてた女が、オレを見て変な声を上げた。

つうか、この人、飲み過ぎなんじゃねぇ?
目がヤバイだろ…。

なまえ「この子、シカクさんの子供?」

なまえさんがオレに指差して聞くと、親父は頭をボリボリ掻き、オレの腕を掴んでその女の前に突き出した。

シカク「まぁな、明日はよろしくよ」

明日ってナンダ?
それにオレの事をジロジロ見るこの女も何だかムカツク。
“この子”とか“子供”とか言われたし。


なまえ「いや〜ん、ステキ!!この子、大きくなったら、シカクさんみたいになりますね」

立ち上がって一歩オレに近付いたなまえさんは、更に食い入るようにオレを見てくる。

感じわりぃな…。
酔っ払ってんだろ?
だから女ってヤツは、めんどくせー…。

あんま、関わり合いたくねぇタイプ…。

そう思って目線を逸らすと、なまえさんの両手がオレの頬を包み、視線が合うと、なまえさんの顔が近付いて……、オレの唇に柔らかいなまえさんの唇が触れていた…?




親父とオレ






シカ「ア、アンタ、ナニしてんだ…////」

肩を押して離れようとした瞬間、なまえさんの身体がグラリと傾き、慌てて支える。

……寝てんのか?
コイツ…ι

重力に身を任せるなまえさんからは、小さく規則正しい呼吸音。


イノイチ「やるなぁ、シカマル」

チョウザ「顔なんか真っ赤だ。オマエの息子とは思えねぇな。ハッハッハッ」

シカク「情けねぇヤツだ。テメーの身ぐれぇテメーで守れって…」

シカ「//////」

情けねぇって…、こんな事になるって、誰が考える!!

シカク「なまえも落ち着いたし、これでやっとゆっくり酒が飲めるっつうもんだ」

イノイチ「いいじゃねーか。若い女に好かれるっていうのも」

シカク「こんだけ歳が離れてたら、女じゃなくってガキなんだよ。オーイ、酒追加」

思考回路停止中だった頭が、酒を再び飲みだした親父達を見て動き始めた。

シカ「オ、オイッ、親父!!かーちゃんが怒ってんだぞっ!!」

シカク「あー?じゃあ、オマエ、なまえを家まで運んどけ。オマエが家に着くまでにオレも帰るからよ…」

シカ「はぁ?」

シカク「家はここだ。遠くないだろ?」

走り書きしたメモを渡され、見ると地図…ι

シカク「シカマルが一緒で話が盛り上がったって言ったら、かーちゃんも怒らねぇしな」

シカ「オレをダシに使う気か?」

シカク「おっと、それからなまえは独り暮らしだからな。ちゃんとベットまで運んでやるのが、男ってもんだ。カギはポケットに入ってる。オマエが遅くなると、かーちゃんの機嫌がどんどん悪くなるぞぉ?」

シッ、シッと手でオレをはらうと、飲み始める親父。


オレがナニか言ったところで、もうこのクソ親父は動かねぇ。

嫌味を込め、大きくため息を吐くと、なまえさんを担いで、店を出た。





いつもなら人を運ぶのは、めんどくせーとしか思わない。

でも今日は…、支えた足に触れてる指先が熱い…。

これはさっき触れた唇のせい…。


オレだってそーゆー事はしたいって思ってたけど、こーゆーのは男のオレから好きなヤツにって思ってた訳で、こーゆー風に女からされるなんて、思ってもなかった。

バカか、オレ?
ナニ考えてんだ。
つうか、ヤッパ情けねぇな…ι


再びため息を吐き、あまり考えないように歩くと、すぐに目的の家らしき所に着いた。





なまえさんを玄関の前にそっと降ろす。

カギは……ポケットか?

ポケットって…ι
ズボンにしか、なさそうな気がするぞ……ι
手ぇ突っ込むのか?

あのクソ親父…。
これも計算の内に入ってたな。
時間稼ぎになるって…。


こんな所で、グズグズしてる訳にはいかねぇ。

なまえさんの身体を倒し、なるべく手が入りやすいようにする。


……あった。


カギを掴んで取り出そうとしたら、「ん…、ダメ…」となまえさんから、吐息混じりの声が聞こえ、思わず支えてた身体を離してた…。

なまえ「イッターイ…」

床に打った頭を擦り、目を擦ったなまえさんと、視線が合う。

始めっからこうすれば良かったんだ。
ったく、変に疲れたぜ…ι


シカ「アンタ、酔い潰れたから、ここまで運んできた。オレ、帰んなくちゃなんねーから、早く家ん中に入ってくんねぇ?」

なまえ「……シカクさん…じゃないよね?」

覚えてねーのかよ。
めんどくせー女だなぁ…。

シカ「息子だよ。オレ、明日任務だから、早く家ん中に――」
なまえ「シカクさんの息子だったんだ。どおりで似てるハズだわ。明日の任務は私と一緒だから、ヨロシクね。シカクJr.」

シカ「はぁ?」

明日の任務、この人と一緒なのか?
つうか、シカクJr.ってナニ?

なまえ「少し寝たからスッキリしたわ。運んでくれてありがと。明日は9時に火影室。シカクさんによろしく言っておいてね。じゃあ、おやすみ」

打った頭をまた擦り、ポケットからカギを出すと、なまえさんは家の中に入って行った。



……明日の任務、あの人と一緒じゃ、めんどくせーなぁ。


とりあえずは、家に運んだから、オレもさっさと帰るとすっか。
かーちゃん、おっかねぇし。


小さく息を零すと、帰路に着いた。





家まであと数10メートルの所で、親父の声。

シカク「よぉ、シカマル。随分早かったなぁ」

シカ「そんな所で待ってねーで、サッサと家に入りゃいいだろ?」

シカク「オマエを置いてきたなんて言ったら、それこそかーちゃんに怒られちまう」

オレの心配じゃなく、あくまで自分の身を守る為かよ…。


シカ「あのなまえって人、親父のナニ?」

なまえさんの言動からして、ただの知り合いって訳じゃねぇよな。

シカク「ナンダ?気になるのか?アイツはいい女だ。オマエが頑張ってくれりゃ、オレも救われるってもんよ」

シカ「…よろしくだと」

シカク「アイツ、オレに惚れてっからなぁ。モテる男はつれぇなぁ…」

シカ「バカか、親父…」

シカク「にしても、キスされたぐれぇで惚れちまうなんて、オマエは安い男だなぁ」

シカ「////惚れてねーよっ!!」

シカク「嫉妬じゃねーのか?顔あけぇぞ?」

シカ「ウルセー////」

変な事思い出させんなよ////




玄関の前に着くと、オレに顎でドアを開けろと言ってくる。

オレを盾にする気かよ…。


後ろに立ってる親父にため息を吐くと、玄関を開けた。



シカ「ただいま…」

ヨシノ「シカマルッ!!呼びに行くのに何でこんなに時間が掛かってんだい!!」

ヤッパ、オレが怒られんじゃんか…ι

シカク「あぁ、オレが悪かったんだ。シカマルに好きなヤツが出来たって話を聞いちまったら、男親っつうもんは飲まずにいられねーんだよ。だからな、ついつい…」

シカ「親父っ!!ナニ言ってんだよっ!!」

ヨシノ「まあ。そうだったの。シカマルに好きな子なんてねvVどんな子なの?」

さっきまであんなに機嫌の悪かったかーちゃんの態度が、コロッと変わった。

シカク「それがなぁ、なかなかいい女で――」
シカ「親父っ!!余計な事、言うなっ!!」

シカク「そーゆー事でな、男同士の秘密みてぇだ」

オイ…ι
話をややこしくすんなよ…ι

ヨシノ「なんだい、二人だけの秘密なんて。ねぇ?シカマル、教えてくれない?内緒にするからさぁ」

教えるもナニも、親父が勝手に作った話なんだよ!!

だからって、親父の場合、平気でさっきの事を話しそうだし…ι

つうか、このかーちゃんの変わり様が一番こえー…ι


シカ「そんなのいねーよ。オレ、明日任務だし、もう寝るから…」

ヨシノ「つれない子だねぇ…」

シカク「まあ、柄にもなく照れてんだろ?上手くいきゃあ、教える気になるさ」

だから、話を盛り上げてんな!!

ヨシノ「苦労して育てても、こうゆう時は母親ってつまらないものね…」

シカク「そんな事言うな。かーちゃんの苦労はオレが一番知ってるからな」

あぁそうかよっ!!
オレをダシにして、うまくかーちゃんから逃れられて良かったなっ!!

ったく、今日は厄日だ!!



部屋に入ると、疲れからか、やってきた睡魔に逆らわず眠りに就いていた…。





次の日、朝からかーちゃんが機嫌がいいっつうのが、不気味で気持ち悪かったが、ナニか言うとおっかねぇから、気にしねぇようにメシを食う。


で、これまた気持ちわりぃぐれーに見送られ、今日の任務を聞く為に、火影室に向かった。



何人のチームでやる任務かは知らねぇが、なまえさんがいるって事だけは知ってる。

昨日あんな事があった次の日なだけに、一緒の任務なんて憂鬱だ。




そして火影室で待つ事10分…。

目の前の五代目火影は、指で机を叩き、苛立ちを露にしている。

嫌な空気だなぁ…。
雑用でも何でもいいから、この場から逃げてぇ…。



トントントン!!

なまえ「綱手様〜、なまえです!!入りまーす!!」

五代目から“ブチッ!!”と血管の切れる音が聞こえたような気がした…ι


綱「なまえっ!!オマエは何度言ったら分かるんだ!!毎回遅刻して!!」

なまえ「すみません!!わっ、シカクJr.もう来てたんだvV」

大袈裟に頭を下げ、オレに気付くとニッコリ笑って隣に並んだ。


あの五代目の顔…。
オレに矛先が向かねぇよう、祈るだけだ。


綱「なまえ!!今日言い渡す任務は、先方に絶対に失礼があってならない。オマエはもっと気を引き締めろ!!シカマル、オマエのそのやる気の無さそうな顔は、相手に不快感を与える。オマエはもっと顔を引き締めろ!!」

なまえさんの遅刻のせいで、オレの顔が怒られたよ…ι
不快感を与えるって…、ひでぇな…。

隣のなまえさんは、元気に返事をしてるし…。

オレの顔…、この人と一緒で、引き締まるか?



五代目はオレとなまえさんを交互に見ると、感じ悪くため息を吐き、今度は真剣な面持ちを見せた。


綱「今日の任務はオマエ達二人で短冊街まで行ってもらう。あそこはギャンブルも栄え、良い街だ」

シズ「コホン…」

綱「あ、あぁ、それでだな、最近パチンコ屋の換金所を狙った強盗事件が発生してる。店主達の話では人がいなくなった隙をついてらしいんだが、黒い影を見た者もいるという。周りに人の気配もなく、瞬時に盗みを働く事から、忍の仕業じゃないかとウチに依頼が来た。オマエ達はその盗賊を捕まえる。それまで帰ってくるなよ」

ツーマンセルか…。
任務自体は別に普通だ。
だけど、五代目の様子が引っ掛かる…。
なんか隠してんのか?



なまえ「…ランクは何ですか?」

なまえさんも何か気になってるみてぇで、腕を組み、五代目を見据えてる。

綱「……Dランクだ」

シカ「は?」
なまえ「エーッッ!!オカシイでしょう?忍同士の戦闘があるかもしれないんだったらBランクじゃないんですか?」

綱「しょうがないだろっ!!私の古い友人からの依頼なんだから。断れない大人の事情ってもんがあんだ!!出来れば無報酬にしたいくらいさ。Dランクにしたのを有り難く思え。分かったらオマエ達はさっさと支度をして30分以内に里を出ろ!!ただでさえなまえが遅刻してるんだ。待たす訳には行かないんだぞ!!」

言葉に詰まったなまえさんを横目で見て、ため息を吐くと、火影室を後にした。





支度をして、木の葉の門でなまえさんを待つ。


なまえ「お待たせー!!」

駆け寄って来たなまえさんは、オレの手を取ると、そのまま門の外へと出た。


なまえ「おぉ…。30分、ギリギリセーフ…。気を引き締めて良かったvV」

1分前…。

シカ「なまえさんは、いつもこんななんすか?」

なまえ「ん?これから長い付き合いになるんだし、小さい事は気にしないの。ね?シカクJr.」

……シカクJr.
さっきも、昨日送った時もそう言われた。

シカ「オレの名前、シカ――」
なまえ「いいの。小さい事は気にしない!!さっ、行きましょ!!」

ナニ?
すっげー、めんどくせー女。
オレ、この人と任務やる自信ねぇ…ι

前を歩きだしたなまえさんに、大きくため息を吐き、後ろを歩いた。



なまえ「ねー、シカクJr.?そんな距離を取って歩く事ないでしょ?なんかシカクさんに避けられてるみたいで感じ悪い…」

あ…、親父が“オレに惚れてる”とか言ってたな。
だから、オレに親父を重ねようとして“シカクJr.”か?

…感じ悪いのはどっちだよ!!
名前で呼ばないで、変な呼び名で呼びやがって!!


足を止めて待ってるなまえさんに追い付くと、並んで歩きだした。


なまえ「ねぇ、シカクJr.は何歳?」

シカ「16っすケド…」

なまえ「うわっ!!見えな〜い!!変に大人の魅力があるわvVヤッパリ、シカクさんの息子だから?フフフ…」

また親父…。
この人…いちいち勘に触る…。

シカ「なまえさんは?」

なまえ「大人の女、20歳よvV」

シカ「…ガキっぽい(ボソッ)」

なまえ「アハッ!!そういうとこもシカクさんっぽいんだvV」

カチーン!!


シカ「なまえさんが、親父をどう思おうと勝手だが、オレを親父の代わりにすんのはやめろよっ!!」

別に怒鳴る程の事じゃねぇ。
だけど、なんだかムカツク。


なまえ「エーン、ゴメーン。そんなつもりじゃなかったのよ?」

オレの腕を掴んで縋るような目で謝るなまえさんに、昨日の事を思い出しちまい、しなやかに動く唇を見た途端、急に体が熱くなり、触れられた所に全神経が集中していくみたいな感覚に、慌てて手を振りほどく。


シカ「もう、いいっすよ…」

なまえ「代わりにしようって思ってる訳じゃないんだよ。ただ、なんか嬉しくなっちゃって…。ねぇ、私の事“なまえ”って呼んでみて?」

シカ「はぁ?」

なまえ「早く、早くvV」

ナンデこの人は、急に楽しそうな顔になってんだ?

シカ「…なんでだよ?」

おもいっきり嫌そうな顔をして隣を見ると、それじゃあ何も見えねぇんじゃねーの?と思うくらい、目を細めてオレを見てる。

で?
言えばいいのか?
めんどくせーなぁ…ι

シカ「なまえ…」

言って、オレの胸の辺りがキュッと締まった気がした。

なまえ「キャーッ!!シカクさんに見えたよ!!シカクさんに名前呼ばれてるみたいvV」

あぁ?
その為に、目ぇ細めてんのか?

つうか、さっき代わりにしようって思ってる訳じゃないって言ったよな?
思いっきり親父の代わりにしようとしてんじゃねーかっ!!

なまえ「ねぇ、シカクJr.は私の前を歩いてくれない?」

そう言うと、オレの背中を押し、前を歩かせる。

今度はナニする気だよ…?


なまえ「ウフフ…。シカクさんが前を歩いてる。今日は一緒の任務なんだぁ…」

ヘイヘイ…ι
アンタの頭にゃ、ついてけねーよι
オレ一人でカッカして、バカみてぇ…。





行く途中途中にある茶屋に、その都度その都度寄らされ、団子とお茶を旨そうに口に運ぶ。

いつも、イノやチョウジが食ってるのを見てるから、別に不思議な光景でもない。

なのに、その唇に勝手に目線が行ってて、思い出したように何もない空間に目線を移す。


たまに呼ばれる“シカクJr.”にカチンとしながら、話し掛けられた事に擽ったさを感じる。


なまえさんは、昨日の事を覚えてるのか?
あの後すぐ寝ちまってる…。

ったく…、横に居ると目の毒だ。



なまえ「シカクーーーJr.!!日が暮れる前に野宿する場所、探した方がいいよねぇー?」

区切って呼ぶな!!

ったく、めんどくせー女だぜι



とりあえず、場所を確保して、火をおこす。

なまえ「シカクJr.…、ご飯どうする?」

シカ「食うっすよ?」

なまえ「前に任務でシカクさんと一緒になった時ね“特別にオレの作った飯を食わせてやる”って、作ってくれたんだぁ」

あっそ…ι
で、オレに作れと?

この人に頼むのもめんどくせー…ι

シカ「味の保障はねーぞ?」

なまえ「そうそう!!そう言って作ってくれたんだよね。流石、シカクJr.。シカクさんになりきってるよvV」

ムッ!!
なりきってなんか、いねーっ!!

ナンデ女っつう生き物は、自分中心に世界が回るんだ?

ただ…、命令口調じゃねーだけ、なまえさんはマシだ…。

つうか、親父はナニやってんだι




簡単にメシを作り、それをなまえさんは旨そうに食う。

なまえ「シカクさんには負けるけどね」

あー、そうかよっ!!
一言一言がムカツク…。
すっげー、めんどくせー女…ι



なまえ「ご馳走様。シカクJr.は先に寝ていいよ。私が見張ってるから。それに“寝る子は育つ”っていうでしょ?明日になったらよーく育って、シカクさんになってるかもしれないしvV」

なんねーよっ!!


さっさと木の上に登り、見張りをするなまえさんに、めんどくせーからオレは火の傍に寝っ転がる。


なまえ「シカクJr.…、付き合ってる人いる?」

シカ「……いないっすよ」

ってナニ、急に聞くんだよ。
オレも正直に答えてんし…ι

なまえ「じゃあ、大きくなったら、私と結婚する?」

シカ「ブッ!!」

なまえ「そしたら、シカクさんとも一緒に居れるでしょ?シカクJr.もその頃には、シカクさんみたいにワイルドでシブい男になってるかもしれないしvV」

シカ「なんだよ、それ…。ふざけんなっ!!」

いちいちムキになる事もねぇ。
今日ずっと一緒に居て、分かったんだ。
この人は、考える事がオカシイって。

オレと結婚して、親父と一緒に居るだぁ?
じゃあ、オレの立場ってナニ?
結局は親父じゃねーか…。


なまえ「そっかぁ…。私は奈良家男二人に振られちゃったよ…。早く寝なね、シカクJr.…」

早く寝たいのに、アンタが話し掛けてくるから、寝れねーんだよ!!




…フーン。
親父に振られたんだ。

つうか、振られなかったら問題だろ!!




なまえさんのくだらねぇお喋りもなくなり、静寂した夜に、オレは眠りに就いていた…。




カタッ…。
パチ…。

小さく物音がして、目を覚ます。

そこには、焚き火の中に木を放ったなまえさんが居て、泣いているように見えた。


シカ「交代しますよ…」

急に声がしたからか、一瞬ビクッと肩を震わせ、目の辺りを腕で擦ると、笑顔を見せた。

…ヤッパリ、泣いてた?

なまえ「起こしちゃった?まだ大きくなってないなぁ…」

再び視線を火に向けたなまえさんは、さっきまでの勢いがない。

シカ「そんなすぐに大きくなる訳ねーだろ?」

言わなくてもいいのに、ナニか喋ってやりたいと思っちまったのは、昼間と違うなまえさんの雰囲気のせい。

なまえ「そうだね…。じゃあ交代してもらおっかな?」

明るい声を出し、横になったなまえさんに、使ってた毛布を掛けてやる。
別に…、やる必要なんかねーのに…。

なまえ「…何でシカクJr.はシカクさんと同じ様な事をするんだろう…」

さっきまでだったら、きっとまた腹が立ってた。

でも、雰囲気が違うから…。
ついつい余計な気を遣っちまう。


シカ「なまえ、さっきまでの元気はどうした?」

我ながら、バカな真似をしたと思う。
親父の声色なんかして。


パッと顔を上げたなまえさんは、オレを見ると淋しそうな顔をして、また横になる。

なまえ「タチが悪いぞ?シカクJr.…」

原因は親父か…?

シカ「親父になんて振られた?」

親父に振られるなんて、当たり前の事。
それに対して、質問する事自体がオカシイ…。


なまえ「シカクさんにナニか聞いたんでしょう?しつこいから嫌だって言ってた?私が誘うといつも迷惑そうな顔してるもんなぁ。…でもね、それでも笑ってくれるの、シカクさん…。近づかせてもくれないケド、突き放しもしない。優しいんだよね…。」

シカ「親父は…、別にそんな事、言ってないぜ?それに昨日だって、一緒に飲んでただろ?嫌だったら一緒に居ねーし…」

自分が言った言葉なのに、耳を塞ぎたくなる。

なまえ「昨日のは…、綱手様にシカクさんと一緒の任務はもうさせないって言われてね…、シカクさんに無理を言って一緒に飲みに連れて行ってもらっただけ…」

シカ「じゃあ、親父に振られれたんじゃねーだろ?」

バカだ。
聞かなきゃいいのに…。

でも、ほっとけない…。

なまえ「シカクさんが私との任務はさせないでくれって言ったって…」

それを聞き、少しホッとしていた。

シカ「親父のどこがいいか分かんねーけど、親父と一緒になれる訳じゃねーんだから、他探した方がいいんじゃねぇ?」

なまえ「そう。それでシカクJr.にさっき振られた…」

今度はオレかよ…ι

シカ「つうか、動機がオカシイだろ?オレと一緒になって親父と居るのか?」

なまえ「でもね、一目惚れだもん…」

シカ「…惚れたとかじゃねーよ。オレが親父に似てて、重なっただけ」

自分でこーゆー事言うのって、情けねぇ。


黙っちまったなまえさんの頭を軽く撫で、「もう寝ろよ…」と優しく声を掛ける。
何だか、そうしてやりたかった。

なまえ「シカクさんの真似で言って」

ムッ!!
オレに一目惚れとかって、ゼッテーあり得ない!!

でも拗ねた子供みたいに言うなまえさんが可笑しく、バカなオレは「なまえ、少し寝とけ…」と親父の真似をしてた。

それに笑ったなまえさんを見て、木の上に上がった。





空が白んできた頃、下からなまえさんの動く気配がして、視線を落とすと、伸びをしながらオレの方を見てるなまえさんと目が合った。

なまえ「ゴメン、シカクJr.!!寝すぎちゃった!!」

シカ「じゃ、出発すっか」

下に降りて火を消すと、準備をする。

なまえ「起こしてくれれば良かったのに…」

シカ「起こそうと思ったんだけど、随分気持ち良さそうに寝てたからな」


起こそうと思って声を掛けたら、「ウン…」と返事が返って、起きなかった。

あまりに気持ち良さそうに、笑みを浮かべて寝てるなまえさんの…、唇に指が勝手に行ってて、触れた指先が熱かったから、もう起こせなくなってた。



なまえ「朝ご飯は?」

シカ「途中に茶屋があんじゃねー?それともなまえさんが作る?」

なまえ「ヨシ、出発しよっ!!」

前を歩きだしたなまえさんに苦笑する。

全然年上に見えねーし…。
それに、なまえさんと居ると、楽しい…。



なまえ「シカクーーー!!……Jr.(ボソッ)あそこに寄るよ〜」

オレの前を歩いていたなまえさんは、茶屋を見つけると、デカイ声を出して走って行った。


オレの事を“シカクJr.”って呼ぶのも腹が立つが、区切って付け加えたように“Jr.”って呼ばれると、もっと腹が立つな。

ヤッパ、めんどくせー女だ…ι



でも、隣で旨そうに団子を口に運ぶなまえさんは、ヤッパリ嫌じゃねぇ…。

変だな、オレ…。





短冊街に着くと、まず宿屋に行く。

自分達の事を話すと、部屋に案内された。




……一緒の部屋。

なまえさんは、サッサと入って荷物を置くと、テーブルの上にこの街の地図を広げる。

なまえ「シカクJr.?ナニしてるの?今日の打ち合せしよっ」

シカ「なまえさんは…、気になんねぇの?」

なまえ「ナニが?」

シカ「…部屋」

なまえ「キャーッ!!やめて!!言わないで!!」

そう言ったかと思えば、物凄い勢いでオレに抱き付いてきた。

シカ「な、なんだよ?////」

なまえ「シカクJr.ってお化けとか見える人なの??」

お化けって…。

シカ「プッ…。何歳児だよ、お化けって…」

なまえ「じゃあ、ナニ?ナニが見えるの?」

オレにしがみ付き、既に涙目になってるなまえさんが可笑しくって…、可愛いとか思っちまった…。

その身体に腕を回してみると、意外に華奢で力を入れたら壊れそう。
でも、柔らかい…。

シカ「クッ…。オレがそんなもん、見える訳ねーだろ?」

なまえ「じゃあ、ナンデ入り口で立ち止まってたの?一点を見つめてたみたいだし…」

オレが見てたのっていったら?
なまえさん…?

シカ「一緒の部屋でいいのかって事。普通、男女別に部屋を借りるだろ?でも今日は一部屋だ。なまえさんは嫌じゃねーのかって…」

なまえ「別に…?シカクさんと一緒みたいで、嬉しいかもvV」

あっそ…ι

ったく、いい加減、親父の代わりにされるのもムカツクな。


オレから離れると、またテーブルの前に座る。

それにため息を吐き、向かい合って座った。



なまえ「人の気配がなくなった時に現われるんでしょ?敵の人数もナニも分からないから、一緒に行動しましょ。一番被害の多いこの店を中心に、様子を見ましょう」

地図に丸をした所を頭に入れる。


そして無線を付け、すぐに移動をした。





店が見える位置につき、「シカクJr.はここら辺からお願いね」と向きを変えたなまえさんの手首を握る。

シカ「ひとつ確認。なまえさんはオレの名前、知ってんの?」

なまえ「ホエッ?……も、勿論!!」

怪しい…。

シカ「昨日、オレに一目惚れしたとか言ってたよな?」

なまえ「そ、そうだよ。そのシカクJr.の顔にズキューン…とね…」

シカ「じゃあ、名前で呼べよな。“シカクJr.”つうのも、そろそろムカついてきた」

なまえ「あ…、ゴメン…。気を付けるね。じゃ、また後で」

細いなまえさんの手首を離すと、オレに背中を向け歩きだした。

その時にボソッと言った「大丈夫カナ…」の言葉に不安を覚えたが、さっきまで掴んでいた右手がやけに熱く、宿屋でなまえさんをこの腕に包み込んだ事、更には……触れた唇さえ、思い出していて…、そんななまえさんの様子なんか、忘れていた…。





無線を付けてても、ナニを話す訳でもなく、時間だけが過ぎてゆく。

なまえさんは大丈夫なんだよな?

ナニかあれば、分からない距離でもないハズ。



朱色に染まった空をカラスがカァカァ飛んで行く。

それがオレに「アホ」って言ってる親父みてぇで、気分がワリィ…。


分かってんだよ。
ナンデこんなになまえさんが気になってるのかぐれぇ…。

親父の言ってた通りになるのはシャクだけどな。

親父が掴んでた顔を離した瞬間、見えたなまえさんに…、多分…オレの方が一目惚れ…。

めんどくせーと思いながらも、真面目に火影室に5分前には着いていた。

めんどくせーと思いながらも、なまえさんの事を目が追っていた。

めんどくせーと思いながらも、嬉しくも思っていた。

愛しいって言葉が、今は分かる。

親父に嫉妬とか、可笑しいよな…。




ジ、ジジジ…。

なまえ「えーっと、なまえです。聞こえますか?」

少し緊張した声に、身が引き締まる。

シカ「聞こえてる。なんかあったか?」

なまえ「えっとぉ、今から名前を呼んでみます。間違ってたらゴメンね」

名前を呼ばれるって聞いただけで、心臓が激しく鼓動を打ち始め、顔が急に熱を持つ。

それと同時に、なまえさんはオレの名前を呼ぶのに、緊張してたのか?と思うと、嬉しかった。

シカ「どうぞ?」

なまえ「鹿!!大変!!至急こっちに来て!!」

ブチッ!!
鹿ってなんだっ!!



シカ「誰が鹿だよっ!!ふざけてんのかっ!!」

なまえ「だから、間違ってたらゴメンねって言ったでしょ!!名前はまた後でにして!!シカクJr.ー、早く来て!!」

知らなかったんじゃねーかよっ!!
しかもまた“シカクJr.”になってるし…ι


とりあえず今は、なまえさんの所に急がねーと。
名前ぐれぇで落ち込んで、取り返しのつかねぇ事にでもなったら…。

そう思うと、その場を離れ、急いだ。




シカ「なまえさん…」

なまえ「見て!!アレ!!」

グイッと腕を絡めて、オレに身体を密着させてきたなまえさんに、オレの身体は一気に脈打ちだし、全身が熱くなってきた。

それを悟られないよう、なまえさんの指差す方に視線を移す。

シカ「カラス?」

なまえ「そう、カラス。あの二羽、さっきからあそこを動かないの。それに換金所に人が居ないでしょ?怪しいなぁと思って…」

見てると、カラスは中の様子を伺ってるようにも見える。

カラス…か?


なまえ「シカクJr.!!見て!!見て!!」

更に強く腕を引かれ、なまえさんの柔らかい胸にオレの腕が当たった。

マジ、勘弁…////


興奮気味のなまえさんに比べ、カラスは冷静に換金所の小さな窓口から中に入った。

なまえ「お金盗った!!」

そうオレの腕を何度も引っ張らねぇでくれっかなぁ…ι
その度に当たるんだよ…ι

なまえ「逃げられちゃう!!行くよっ、シカクJr.!!」

シカ「ヘイヘイ…」

やっと解放された腕に、柔らかい感覚を残されたまま、なまえさんのあとを追う。



なまえ「アレ、見て!!凄いねぇ〜、あのカラス。私よりもお金持ちだよ…」

札だけくわえていったカラスは、それを丁寧に巣に敷き詰めている。

シカ「ありゃあ、豪邸だな…」

それに笑いだしたなまえさんに、オレも一緒になって笑ってた。


なまえ「どうしようか?」

さっきの二羽のカラスが、寄り添って巣の中に居るのを見て、“いいよなぁ…”とか思うオレってバカ?

シカ「今日はもう、あのカラス達は動かねぇハズだから、オレ達も宿に戻るか。また明日の朝になりゃあ、カラスも活動を始める。その時に金は回収だな」

なまえ「そうだね。お腹も空いたし、帰ろっか」

ニコッと微笑むと、オレの手を引いて歩く。

手を繋ぐのは嬉しいけどよ…、手を引かれて歩くっつうのは、ガキ扱いされてるみてぇで嫌だな。



なまえさんの手を一度離し、オレが握る。

これで主導権はオレのモノ。

なまえ「ナンデ、手を繋いで歩いてるの?」

先にアンタが繋いできたんだろっ!!

シカ「なまえさん、さっき、オレの名前、なんつった?」

なまえ「アハ、アハハ…ι」

シカ「オレの名前、知ってんじゃなかったのか?」

なまえ「だって、2回しか聞いてないんだよ?1回目が綱手様がシカクJr.の名前を呼んでたでしょ?2回目がいけないんのよね。オレの名前は鹿!!とか言ったじゃない?シカクJr.が。そんな印象強い事を言われちゃったら、綱手様が呼んでた名前なんて忘れちゃうって!!」

ナニ?逆ギレ?

それにオレの名前は鹿!!とか言う訳ねーだろっ!!

……待てよ?
昨日の朝、出発した時、“シカクJr.”って呼ぶなまえさんに、オレの名前を教えようとして……?

シカ「それはなまえさんが、オレの名前を最後まで聞かないで、小さい事は気にすんなとか言って、話を中断したんだろーがっ!!」

なまえ「アハ、やっぱり?なんかそんな気もしたんだ。だからね、私なりに考えたんだよ?シカクさんが四角ってマークだったら、その息子は丸か三角かバツのマークだってね。で、組み合わせたらね、シカマル、シカサン、シカバツになるじゃない?シカクさんの角繋がりで選んだのがシカサン。サンをとって、鹿」

オレの名前、あるじゃんかよ…。
つうか、オレの名前って、そうやって決められたのか?
深く考えた事はねぇけど、すげーショック…ι

なまえ「じゃあ、正解を教えて。シカホシとか?」

なんか、名前教えたくなくなってきたι
だからって“シカクJr.”も、もううんざりだ。

シカ「シカマル…。もう親父の代わりみてぇな呼び方すんなよっ!!」

最後を強調して、言葉を発したが、なまえさんはクスクス笑いだした。

なまえ「私の考え、合ってたんだね。ウフフ…、私、シカクさんの考える事が、なんとなく分かるもん。まさに以心伝心だわvV」

ブチッ!!

頭の上の方で聞こえた音と共に、オレはなまえさんを引き寄せると、強く唇を重ねた。


急な事に驚いたのか、それとも嫌だったのか、なまえさんは必死にオレの胸を押して、離れようとする。

この華奢な身体をこれ以上の力を加えれば、壊れちまう。
なまえさんが動くだけでも、壊れそうだ。

少し力を抜くと、スルリとオレの腕から抜け出して、荒くなった呼吸を整えて、オレを見てる。

なまえ「シカクJr.…ナンデ…?」

ムッ!!



シカ「オレは親父じゃねーっ!!シカマルって呼べよっ!!親父とは以心伝心出来て、オレはキスしたって、気持ちを伝える事は出来ねーのかよっ!!」

なまえ「エッ!?シカマル!?それって…////」

やっと呼んでもらえた名前。
それだけの事なのに、すげー嬉しくなって、今までの行動に急に恥ずかしくなった。

ヤッパ、ガキくせぇ…////


なまえ「シカクJr.…」

ムッ!!

シカ「なんでまた――」
なまえ「嫉妬やき?」

シカ「//////」

クスッと笑ったなまえさんは、多分オレの反応を見て、笑ったんだと思う。

でも、腕を絡めてきたっつう事は、少し期待してもいいんだよな?





宿に着き、部屋に入るとすぐになまえさんが、茶を煎れてくれる。


かーちゃん以外の女が、オレの為に茶を煎れるのって、なんだかいいなぁ…。

そんな事をぼんやり思いながら茶を啜ってると、

なまえ「シカクJr.、私お風呂に入ってくるカラ、お茶飲み終わったら早く入った方がいいわよ。食事の時間になっちゃうからね」

と、さっさと浴衣を持って部屋を出る。

アンタはオレの気分を悪くする天才だ!!

出て言った扉を見て、大きくため息を吐くと、一気に茶を飲み干し、浴衣を持って部屋を出た。





風呂から出て、部屋に戻ると、まだなまえさんは戻ってきてない。

その内、食事も運ばれてきて、いよいよ時間を弄ぶ。


あぁ…、なまえさんってこうゆう人だった…。

火影室での遅刻の事や、待ち合わせ場所にギリギリに現われたなまえさんの事を思い出し、少し顔を弛ます。



なまえ「ただいま〜。わっ、食事もう来てたの?食べないで待っててくれたんだ。ありがとっ、シカクJr.vV」

そう言うと、席に着き、「食べよっvV」と、首は45度。

風呂上がりで少し顔の赤らんだ、浴衣姿のなまえさんに見とれてて、更に首を傾げる可愛さに、忘れるところだったけど、また“シカクJr.”って言ったよな?

シカ「ちょっと待て!!オレの事を“シカクJr.”って呼ぶなって言ったよな?からかってんのか?なら……影真似の術!!」

そう言って、テーブルの下からなまえさんの影を捕らえる。

なまえ「ナニ?これ?」

シカ「影真似の術。奈良家秘伝忍術だ」

なまえ「凄いねぇ。これ、シカクさんも使うの?」

ムカッ!!



シカ「親父から教えてもらってんだから、使えるに決まってるだろ。でも、親父はこーゆー使い方はしねぇだろうな。つうか、オレも初めてだけどよ…」

オレが立ち上がると、なまえさんも立ち上がる。

なまえ「おぉ…、術者と同じ動きをするんだ…」

シカ「そっ」

楽しそうにしてっけど、いつまでそうしてられっかな。

帯紐に手を掛けると、なまえさんも同じように手を掛ける。

なまえ「チ、チョット!!ナニするの!!??」

シカ「ん?こう…」

そして、帯紐をほどく。

なまえ「シカマル、待って!!」

シカ「今更、名前呼んでも遅いっつうの…」

そのまま、浴衣を肩から床に落とす。

なまえ「キャーッ!!////」

シカ「バ、バカッ!!////オマエ、ナンデ、ブラ付けてねーんだよっ!!」

床に落ちた浴衣を慌てて着ると、なまえさんも着る。
そして影真似を解いて、その場にしゃがみ顔を隠した。

なまえ「アハッ…ιありがと…////」

オレも折角脱がせたのに、ナンデまた着せちまってんだよ…ι

あんな…、モロ出てくるなんて…、考えてもいなかった…////

でも……、

シカ「それって…、オレの事、誘ってんのか?////」

なまえ「ヤダーッ!!////違うわよ!!////寝る時はいつも付けてないの!!////ホラッ、付けて寝るとね、大きくならないカラ…////それに、シカマルに脱がされるなんて思ってなかったもん…////」

バカ…////
オレだって、男だっつうの…。
年上だったら、もう少し考えてくれよ…ι


なまえ「じゃあ、気を取り直して…、いただきますvV」

そんなに早く元に戻んなよ…ι
オレの事…、大して気にしてないんだな…ι


なまえさんが食べ始めた為、オレも食べるが、頭からはさっきの映像が離れない。

ちょっと脅かそうと思っただけだったのに、あんな風に…(////)出てきちまうなんて…////

分かってたら、布団とかで術を掛けてたよ…ι

そしたら……。
……今更だけどι

なまえさん、フツーにメシ食ってんし…。

はぁ…ι
メシの前に早まっちまった。


なまえ「シカマル?その…箸止まってるよ?」

シカ「あ?あぁ…」

食っても味なんか分かんねぇ…。
ナンデ…浴衣着ちまったんだろう…。
驚くとかって…、ダッセー…ι


なまえ「あの…さ、あまりの貧乳に 食欲なくなったとか?」

シカ「ブーッッ!!////」

貧乳とかって…////
よく見てねーっつうの!!////



なまえ「私だって、見られたくなかったんだから…」

シカ「ワ、ワリィ…」

????オレが謝るんだっけ?
元はと言えば、なまえさんがオレを“シカクJr.”って言ったのが、いけねぇんだよな?

でも、あんなだと思わねぇで、やったオレが…ワリィんだよな?


なまえ「私、シカクJr.が好きだよ。でも、あーゆう事すると思わなかった…」

マジ?
って、今“シカクJr.”ってまた呼んだよな?

あーっっ!!
今は気にするとこが違う!!

シカ「その…マジでワリィと思ってる。親父じゃなく、オレをちゃんと見て欲しくてよ…」

なまえ「ウン…」

シカ「オレじゃ…、ダメか?」

祈るような気持ちで、返事を待ってると、なまえさんから、クスクス笑い声が聞こえ、伺うように顔を見る。

なまえ「シカマルはシカクさんとは違うって、ちゃんと分かってるよ。一目惚れだって言ったでしょ?シカマル、好きだよ」

頬を赤く染め、ニッコリ笑ったなまえさんを見て、ホッと肩を撫で下ろす。

シカ「それって、オレと付き合ってもいいって事?」

なまえ「昨日からずっと、そうなったらいいなぁって思ってたんだよ?振られてるけどね。私諦めが悪いカラ、頑張る気でいたし」

ホントか?
全然分かんなかったぞ?

シカ「別に、振った訳じゃねーよ。なまえさんがオレに親父を重ねてると思ったカラ…」

なまえ「だって、告白しました。ハイ、振られました。だったでしょ?だから、少しでも近くにいたくって…////」

俯いて、また顔を赤く染めたなまえさんが、愛しい。

シカ「じゃ、これからは、あんまり親父の事言うなよな?」

なまえ「ウフフ…、嫉妬やきだもんね」

バカにされてるみてぇで、カチンときたけど、気持ちが伝わったんだと思うと、嬉しかった。





メシを食い終わると、食事が片付けられ、明日の打ち合せになる。

甘い雰囲気は…ない…。

真剣な面持ちのなまえさんに、そんなのを求めるオレは、ガキくせぇ。

なまえ「考えたんだけど、あのカラス、お金が欲しいんじゃなくて、紙が欲しいんじゃない?で、あの大きさが丁度いいとかで?だったら、窓口にお札の大きさに新聞を切って置いといたらどうかな?カラスを捕獲するって、可哀想じゃない?」

シカ「それでいんじゃねーの。どうせなら、中にかかしでも置いとくか?」

なまえ「ウン、いいね。じゃあ、材料になる物、貰ってくる」



立ち上がったなまえさんに、「一緒に行く」と言い、宿屋の主人の所に行った。



事情を話し、材料を揃えて部屋に戻る。



オレが新聞紙を切っている間、なまえさんは器用にかかしを作る。

なまえ「出来た〜!!」

と言われ、得意気にかかしを見せてきたなまえさんに、顔が歪む。

かかしに描かれたこの顔…ι
よく知った顔…ι

シカ「この顔って…はたけカカシさんか?」

なまえ「ウン。よく分かったね」

片目隠して、マスクしてるっていったら、それしか思い出さねぇしι

シカ「そーゆーのは、やめた方がいいんじゃねーの?カカシさんだって、この街に来るかもしんねーんだし…」

なまえ「いいの!!だってひどいから、この前おでこにチュッてしてきたんだよ?」

ムッ!!

なまえ「しかも、シカクさんの前で!!」

ムッ!!
さっき、オレの前で親父の事言うなって言ったよな?


突然なまえさんはクナイを出すと、カカシさんの顔をしたかかしに投げ付け、胴体に3本のクナイが刺さった。

なまえ「ウン、すっきりしたvV」

おっかねぇ…ι

なまえ「ヨシ、寝ましょ」

そう言うと、隣の部屋に敷かれた布団に潜る。


オレはどうすればいいんだ?

さっき、貧乳(か、どうかは分かんねぇけど////)見られたくなかったとか言ってたよな?

じゃあ、胸がデカくなるまで、見ちゃいけねぇ…つうか、待つのか?


フゥ…とため息を吐くと、隣に敷かれた布団に入る。


オレが隣に来た途端、クルッと反対を向いたなまえさん。

これじゃ、…ダメだよな。

だけど、付き合う事になったんだし、隣に好きな女が寝てて、なんにもナシって…アリ?

そんな事を考えてるうちに、なまえさんからは、気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

終わったな…。
チーン…ι

でも、少しぐらい……。

なまえさんの布団に潜り、後ろから抱き締める。

耳元に「寝ちまったか?」と確認してみるが、応答ナシ。

少し触れてもいいよな?と自分に確認すると、腹にクナイの刺さったかかしがオレを見てる。

……二の舞になるってか?

そういえば、オレがまだなまえさんを知らなかった時とはいえ、額にキスしたとかって、マジ、ムカツク。

枕元に置いてあったポーチから、手裏剣を一枚出すと、かかしに投げる。

手裏剣を額に刺したかかしが倒れ、それに満足してそのままなまえさんを抱き締めて寝た。





次の朝、なまえさんの起きる気配にオレも目を覚ました。

ちょっとビックリした顔を見せたなまえさんだったが、オレの方に向き合うと、「おはよ、シカマル」と微笑み、オレはその口を塞ぐ。

オレの首に腕を回し、目を閉じたなまえさんに、長く、長く唇を合わせてた。

これだけでも、十分気持ちいい…。
でもこれ以上は、ヤベェ…。


名残惜しかったが、唇を離すと、頬を赤く染め、目をトロンとさせたなまえさんと目が合う。

あぁ…、オレ、この顔にやられたんだよな…。

もう一度、今度は軽く唇を合わせると、なまえさんが柔らかく微笑んだ。





朝食を食べ、かかしに刺さった手裏剣になまえさんが笑い、クナイと手裏剣を抜く。



支度をすると、昨日用意したダミーの札とかかしを持って、宿を出た。



まず、カラスの巣に向かい、居ない事を確認すると、巣から金を回収する。

そして、ダミーの札を敷き詰めて、ここでの作業はおしまい。



次にパチンコ屋の店主に、事の内容を話し、回収した金を渡すと、快くはたけカカシさんの顔の描かれたかかしを換金所に置き、ダミーの札を窓口に設置してくれた。


なまえ「任務完了。結局Dランクだったね」

そう言い、手を引いてきたなまえさんの手を一度離し、オレが手を引く。

それにニッコリ笑ったのを見て、「帰るぞ」と、歩きだした。





来た時と変わらない景色の中、行きと違うオレ達。

イヤ、大して変わってねーケド、もう“シカクJr.”とは呼ばない。


でも、ひとつ引っ掛かる事がある。

なまえさんが、「なまえって呼んで」と言い、嬉しかったオレはすぐに名前を呼んだ。

その後、顔をニヤつかせたなまえさんは、「早く大きくなってね」と。

それって、やっぱり親父と重ねてんじゃねーのかっ!!

そう怒鳴りたかったのに、不意に触れた唇に、ナニも言えなくなっちまって…、女ってめんどくせー生き物…とか思いながらも、オレからもキスしてた…。





オワリ☆


――オマケ――


家に帰った日、親父にしつこくなまえの事を聞かれて、だらしなく顔が弛んじまったオレは、かーちゃんになまえを家に連れてくるよう命令され、それが今日…。




待ち合わせ場所に行くと、いつも時間ギリギリのなまえがもう居る。

シカ「今日は、はえーな」

なまえ「だって、シカマルのお父様とお母様に会うんだもの。遅れる訳に行かないでしょ?」

シカ「…親父に会いてぇとかじゃねーよな?」

なまえ「違うって!!シカマルだけだよ」

そんな言葉に気を良くして、少し不安もあったが、家に連れて行った。




シカク「よぉ、なまえ。シカマルとくっついたんだってなぁ。コイツはオレを越える男になるから安心しろよ」

なまえ「ウフッ…今でも十分いい男です」

珍しく親父がそんな事を言い、なまえに言われた言葉に、この弛んだ顔を見られねぇよう、手で顔を隠す。


シカク「ホラ、入れ…」

と促されたなまえは、「お邪魔します」と、親父の後をついて行く。

そういえば、家に来てからなまえは、オレの顔を一度も見てねぇ…。

急いで後を追うと、なまえの頭を撫でている親父と、気持ち良さそうに目を閉じてるなまえが居た。

あんな表情、見た事ねぇ…。

シカ「かーちゃん、いねーのかよ?」

なまえの腕を引き、親父から離すと“触るな”の意を込めて、なまえを腕の中に閉じ込める。

シカク「買い物だ。もうすぐ帰ってくんじゃねぇ?」

シカ「じゃ、部屋に行ってっから…」

そう言って、なまえの手を引き、部屋に連れて行った。





部屋の扉を閉め、すぐになまえを抱き締める。

なまえ「シカマル――」
ナニか言おうとした唇を塞ぎ、そのままベットに押し倒した。

シカ「親父にそんな顔を見せてんじゃねぇ…」

抑えられない感情のままに、なまえの服を剥ぎ取る。

そしてブラに手を掛け、「胸を大きくするには、男に揉まれるのが一番いいんだとよ」とホックを外した。

シカ「……ι」

なまえ「…胸どこだ?とか思ったんじゃないでしょうねぇ?」

シカ「イヤ…ι」

なまえ「見なさいよっ!!重力に逆らわなければ、ちゃんとあるの!!」

そう言ったと思ったら、オレが下に組み敷かれてて、オレの上にはなまえが乗っかって…、立場逆転。
そして、目の前にある胸に息を呑んだ。

なまえ「どうよ!!」

得意気な顔をするなまえが可笑しく、可愛い…。



つうか、この胸は重力に頼らねーと、現われねーのかよ…。

シカ「悪くねぇ…。ちゃんと胸がある…。じゃ、なまえは上で動けよ。オレが下から揉んでやるから」

なまえ「へ?」

服を脱ぎ始めると、慌てて布団の中に潜るなまえ。

シカ「ナニ、今更隠れてんだよ。自分からオレを煽ったクセに…。それに一番最初にキスしてきたのもなまえだしな」

なまえ「エッ?私からキス?チョット、待って!!それに煽ってなんかいない…」

ヤッパ、覚えてねーんだ…ι
別にいいけど…。


ゴニョゴニョ布団の中で言うなまえの傍に行こうとしたその時、部屋のドアがノックされ、すぐに開いた扉…。


素っ裸で今まさに布団に入ろうとしてるオレと、散らかった服、布団からちょこんと顔を出してるなまえを見ると、ニヤっと妖しく笑った親父。

シカク「これからっつう時にわりぃんだけどよ、かーちゃんが帰ってきてなまえに会いたいんだと。早く下に行かねーと、かーちゃんが来ちまうぞ?」

そうニヤつきながら言うと、扉が閉まった…。


なまえ「シカマル!!時と場所を考えてよっ!!////」

シカ「ワリィ…ι」

布団から出て、服を着始めたなまえを見て、オレも服を着る。

この表情は…、怒ってるんだよな…ι


オレだって、親父に全裸を見られてんだ!!

オレだって、ショックなんだよ!!



服装を整えたなまえは、2回大きく深呼吸をし、「先に下に行ってるから!!」と、オレの方を見ないで、部屋から出て行った…。


こりゃあ、ちゃんと気を引き締めねーと、なまえに嫌われちまう…。


そう思ったら、このやる気の無さそうだって言われる顔と、なまえと付き合う事で弛んでた顔が、少し引き締まったような気がした…。





下で、かーちゃんと楽しそうに話すなまえは、オレにも笑顔を向けてくれる。

だから、焦ってばっかりのガキじゃなく、なまえがオレの傍でいつも笑ってられるようにしたいと、思った…。





ホントにオワリ☆☆


キリ番33333GETキリリク夢小説。
mims様に捧げます。

キリ番にリクエストをして頂き、ありがとうございました。

狙ってキリ番GETして頂いたみたいで、報告を頂いた時は、私も凄く嬉しかったです。


リク内容は『甘くてギャグありのシカマル夢。年上ヒロインでシカパパ登場。すれ違いまたはちょっと嫉妬の絡む大人のお話』という事でした。
最後に『好きに書いて頂いてもOKです』との言葉に甘え、好き放題やってしまいました(滝汗)

素敵なmims様に、数多くの無礼に頭は下がりっぱなしです。
皆様に勘違いされないよう訂正します。
貧乳は…私です(泣)
遅刻常習犯も私です(泣)
mims様はこのヒロインと全く正反対で、とても丁寧で落ち着きのある素敵な方です。

リクの『甘く』はあったかしら?
『ギャグ』ですべて流れてるような気がします(汗)
『シカパパ』の登場も少なかったですし…ι
『シカマル』の名前も少なかった…ι

mims様に限り、苦情承ります。
少しの訂正は出来ますが、大きな訂正は難しいので、その時は心機一転新しく書き直させて頂きます。
お持ち帰りはmims様のみとなっております。

…お持ち帰りに抵抗ありますよね?
私も、mims様のサイトにこんな見苦しいモノは、似つかわしくないと思っております。
厳しいご指摘、お待ちしてます。


なまえ様。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
相変わらず長い文章と見苦しい表現に、大変お疲れになった事と思います。
mims様は、とても素敵な小説を書かれます。
お口直しにmims様のサイトへどうぞ。

これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。



管理人ナツ。



敬愛するサイト、『シカマル忍伝』の七里ナツさまから頂いたキリリク夢でした。

ナツさまのサイトのキリバンを狙って狙って…やっと33333hitsを踏ませたときには、嬉しくて感涙。実は22222のキリバンをはじめられた20000hitsの頃から、ずっと狙わせて頂いていたのですよ!無駄にカウンター回してすみません
そして!
本当に素敵な超大作夢を書いてくださって、嬉しくて鼻血と涎と涙が止まらないんだけどどうしてくれるんですかナツさん!パーフェクト!笑

20071217
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