子犬のような君

きっかけは単純だった

あの日は久々にカカシ班、アスマ班、紅班で任務だった


打ち上げ前に出会った彼女は動物に例えれば犬っころだった

『ナールート!!久しぶり!!』

そう言って抱きついた彼女はなまえ


ナルトが言うにはガキの頃同じ施設で育った幼なじみらしい


打ち上げにもついてきて、ナルトにずいぶんべったりだった


帰り道


『なー、シカマル
あれってどうなの???』


俺とキバは並んで河川敷を歩いていた


キバが視線を向けている先


そこには楽しそうに幼なじみのなまえを肩車して歩いているナルトがいた


『どうって…何が』


『ヒナタはナルトが好きなんだぜ??
見てみろよ、ヒナタの辛そうなあの顔…
仲間のあんな顔、見てらんねーぜ…』


俺らの後ろから少し離れてシノとヒナタが歩いている


かなり落ち込んでいてシノに励まされながら歩いていた


確かに…いのがあんな顔してたら、俺だってあまりいい顔はしないのかもしれない


『そこでだ…
シカマル、何とかしろよ』


『は??何で俺??んなめんどくせーことしねーし』


『これ、なーんだ』


ポケットから白い封筒をだし、中に入っていた写真をひらひらさせる


『おまえ、キバ!!きたねーぞ!!』


その写真には去年の忘年会の罰ゲームで俺が女装させられたときの写真だった


『ネガ、渡してほしいだろ??』




『キバ、お前な…』


『交渉成立な??
ネガは成功したら返してやるよ』


『はぁ…
マジ信じらんねー』


キバに流れを持っていかれてなんだか調子が狂い頭をガシガシかく


『で??ヒナタとナルトをくっつければいいわけだ…』


『ちげーよ』


『違うって…じゃあどうすればいいんだよ』


『シカマルがなまえを好きにさせればいいんだよ』


『俺はああいう子犬っぽいのはパス!!大体、犬はキバの専門分野だろ??』


『専門家から言わせれば、1番お前が適任なんだよ
大体シカマル、女に興味ねーんだろ??
それとも、自信がないとか??』

『は??』


『惚れちゃいそうで怖いんだ??』


『ちげーよ!!』


『いーや、絶対そうだ…
じゃあ賭けよーぜ??
俺からの任務も成功させて、尚且つシカマルがなまえに惚れなかったら、このネガにプラスして、一日何でも言うこと聞いてやるよ』


『言ったからな??』


そんな話をしながら俺達は家路の分かれ道に来た


『なまえ、あっちだろ??そろそろ降りろってばよ』


『えぇ??お家まで肩車してくんないのー??』


肩から降ろされ、しゅんとマフラーに顔を埋める


キバが俺に目配せで合図を送る

はー…やるしかねーのか…


『家、そっちなんだろ??じゃあ俺が送ってくよ』


なまえの手首を掴んでナルト達にじゃあなと別れを告げて俺となまえは歩き出した




しばらく歩きながら掴んだままのなまえの手をどうすればいいのか考えていた


『もういいから』


そういうとなまえは俺の手を振りほどいた


意味が分からずぼーっと彼女を見ていると


『ナルト達、もう見えなくなったし、自分で帰れますから』


と吠えたかと思うとスタスタ歩いていく


『おいっ!!ちょっとまてよ』


追い掛けて腕を掴んだら、振り向いてさらに吠えた


『私もあなたみたいな人、パス』


落ち着いた声は冷たかった
俺を強気に見る目には涙が滲んでいた


『私、昔から耳だけはよくてね、5メートル先の話し声も聞こえるの…
それが原因で親にも気味悪がられた、捨て犬よ…』


『安心して??もうナルトには関わらないから…
賭には負けたことになるだろーけど』


掴んでいた腕を剥がされ、再びスタスタ夜道を歩くなまえを追い掛けることができなかった


安い挑発に乗って


彼女を傷付けたのは俺なのに…

最低だ…





目が覚めると見慣れない天井

頭もぼーっとして、よくわかんねーけど
今日は任務だったはず…
無事任務終了して帰っていたことまでは覚えている


この前なまえを傷つけてしまってから、任務中以外はずっと上の空だった


どう謝ろうか、謝ったら余計賭けのために近づいてきたと思われるだろうか…


そんなことを悩んでいたあと、俺、どうした??


『あっ!!アスマ先生、シカマルが目を覚ましたわよー
ったく、シカマルってば上の空で歩いてるから足踏み外して階段から落ちたのよ??』


甲高いいのの声ではっきり目が覚めた


『あー、そうだったっけ??』


すると、1番会いたくない声が聞こえてきた


『38.5度か…
熱をさげないとねー』


『なまえ!!?何でここに…』

『あれ??シカマル、知らなかった??
木の葉病院の看護婦さんなんだよねー??』


『ねー!!』


チョウジと顔を見合わせて笑い合っているなまえ
俺には一度もまだ見せてくれない笑顔だ


『じゃあ、ちょっと二人は外に出てて??
アスマさんは手伝ってくださいね』





二人が外に出るとなまえは俺のベルトをカチャカチャと外し始めた


『おいっ!!』


『はーい??』


『何してんだよ』


『何って、解熱剤の座薬打つんです』


座薬…やっそれはマジで勘弁!!

『きつくていいから、座薬は勘弁してくれ!!』


『アスマさん、ズボン脱がすの手伝ってください』


『人の話を聞けよ!!』


『いいじゃねーか、かわいい女の子に座薬打ってもらえんだぜ??』


アスマは気味悪くニヤニヤ笑って俺がズボンを脱がされているのを眺めている


両手がギブスで固定されて動かせない…


『これでこの間のこと、チャラにしてあげるわよ』


『この間のこと??』


『なんでもないですよ
ほら、アスマさん、シカマルの脚あげてくださーい』


『はーい(笑)』


『じゃ、座薬入りまーす』




両腕右足骨折…
完治までしばらく入院。

間抜けな上に、座薬を打たれ、排泄、着替え、食事…


身の回りの全ては俺の担当看護婦になったなまえに世話されていた


座薬を打たれて、年頃の俺には精神的にズタズタだったけど


あの日以来、少しずつなまえの中で警戒心とか、閉ざしていた心が解けているような気がして、嬉しかった


あの日俺が傷つけたことを、本当にチャラにしてくれようとしているんだな…


だけど、やはりその日はやってきた


『シカマルさん、もう少しで退院できそうなんで、リハビリ始めましょうか…』


その言葉にふと淋しさみたいなものを感じた


繋がっていたものがなくなってしまう


『あー…あのさ…』


『はーい??』


『退院したらさ、また会ってくんねーか??』


『…』


『別に、誘ってるわけじゃねーんだ
お詫びしたいって言うか…』


『それはこの前の座薬で…』


『まーそうなんだけど…
でもあんなんでチャラは男としてちょっと…』


『ぷっ』


口元を手で押さえてなまえは初めて俺に笑ってくれた



人懐っこい子犬のように…




『いーよ!!
かわいそうだし会ってあげる』


『あのなー』


『けど…
好きにはなってあげないからねー』


『あー!!!まじ、悪かったって』





ずっと隣で笑っててくんねーかな


あの日のように傷つけたりなんかしない



君が笑って見えない尻尾をパタパタ振る相手が


俺ならいいのに…



あー…
キバとの賭けは負けだな…


完全に


『ギブアップ…』


『は??』


『何でもねーよ』



『変なのー』


あっ、また笑った





END


『あとがき』


すみません!


座薬を投与する


ありなんでしょうか…


mims様に捧げるのに座薬投与…
心広く優しいmims様に感謝です


どうぞmims様、お持ち帰りください。

こんなんでよければ…




■あとがきby mims■

[antumn leaves]のkajyugonさまより頂いた、1000hitsのキリリク夢でした。

座薬投与、まったくもってOK笑
kajyugonさんにお任せして正解でした。
にんまり笑えてちょっと切なくて、でもほわりと甘い、素敵なお話ありがとうございました!
2008.01.22
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -